2011校外巡検in清瀬 本文へジャンプ
活動報告

6月19日、経済地理学研究室のフィールドワークが行われました。梅雨の晴れ間にも恵まれ、40数名が参加者達は、犬井教授の解説をメモしながら、都市近郊農業の現状や課題について理解を深めました。武蔵野台地の北東部、埼玉県との境界に位置する清瀬市は、都市住民への新鮮な野菜や牛乳の供給地域としての役割を果たしてきました。また、都市近郊にありながら緑地が多く残存するという特性をいかして、サナトリュウムなどの医療の町として発展してきました。現在でも、総面積の約46%を緑地が占め、約20%を農地が占めています。しかしその一方で、首都近郊の住宅地としての需要の高まりを受けマンションや戸建て住宅などの建設が進められており、転用による農地の減少が認められる地域となっています。

都市近郊農業の現状
都市近郊畑作地域(生産緑地区域)ではにおいて、犬井教授から土地利用の特徴や住宅地の増加による営農環境の変化にについての説明がなされました。市域内農地の約9割が生産緑地となっている事実やその指定を受けるための条件などの説明をうけた学生たちは、教授の話をノートに取るとともに、日ごろあまり目にしたことなない農村の景観を写真に収めていました。

酪農家 山下さん
 清瀬市で酪農を営む山下さんのお宅では、30頭の経産牛を飼養するとともに、子牛を含む未経産牛を4〜6頭飼育ながら飼養頭数を維持している。山下さんのお宅では、早朝と夕方の一日2回の搾乳を行っている。「生き物相手の商売だから、1年365日ほぼ毎日この作業を行う」という山下さんの話に、学生たちは改めて、仕事の大変さを実感したようであった。
 宅地の増加といった環境の変化に対応するため、山下さん宅ではEM菌やおが屑等利用し、臭気を減らすといった工夫がなされていた。山下さんの話を聞いた学生たちは、日ごろ自分たちが新鮮な牛乳を飲めるのは、こうした酪農家の努力によるものであることを認識したようであった。また、近年のバイオエタノールによる飼料作物増加の深刻さについても、山下さんの具体的な説明を受けてより深く理解したしたようであった。山下さんのお宅では、生産コストを削減するために、牛の種付けやストレスの軽減、餌の配合による牛の体調管理などを行っているが、そうした努力だけでは、吸収しきれないほど飼料価格が高騰しているという現状を消費者がもっと理解することが重要であると感じた学生が多くみられた。

 日頃あまり触れることのない機会に学生達の関心も高く、山下さんへの質問も多く飛んだ。なかでも、生まれてきた子牛がオスの場合や廃牛となった場合は、食肉になるという答えを聞いて、自分たちが日頃命を食べているという実感がわいたと話す学生も見られるなどそれぞれ有意義な体験ができたようであった。





園芸農家 横山さん
 
園芸を営む横山さんのお宅では、花卉の栽培を中心に3世代にわたって農業を営んでいる。横山さんお宅で主に栽培している花卉は3種で、クリスマスローズとダイヤモンドリリーは横山さん夫妻が、原種シクラメンは息子の直樹さんがそれぞれ中心となって栽培している。お二方とも、それぞれの花の分野の第一人者で、著書やテレビなどでも活躍している。また、横山さんのご父母もご健勝で、庭先販売用の野菜栽培に従事している。

 横山さんのお宅で栽培している花卉は、どれも特殊なもので他の人がなかなか真似できないようなモノを作りながらも、あまり管理に手間がかからないものを峻別しているという特徴がある。横山さんによれば、これも都市の近郊地域で営農を続ける上で重要な要素の一つとのことであった。また、自分にあった花を探すことが大切で、出会うまでに花だけでも300種類以上栽培したとのことであった。

 今回、調査に協力していただいた息子の直樹さんも自分にあった花として原種のシクラメンの栽培・研究に取り組んでいる。新しい品種を見つけるために年に数回海外へ視察に出かけるという直樹さんのお話を伺った学生たちは、今まで自分が抱いていた農業のイメージを一新するとともに、自分の好きなことに真剣に取り組むことの大切さを学んだようであった。

直樹さんから頂いた「原種シクラメン」、花が一輪咲きました。
とてもいい香りがします。                      ⇒




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