DSH等の受験

「ドイツへ留学したい!」と思い立って、準備を進めてきた留学計画の最後の難関は各大学で行われるドイツ語テストや、ドイツ語コース受け入のためのテストだ。この試験は志望留学先大学まで出向いて受けなければならない。不合格→帰国、なんていう最悪のシナリオは何としても避けたい。DSHとはどんな試験か。

DSH
Deutsche Sprachprüfung für den Hochschulzugang

DSHとは「大学入学のためのドイツ語試験」のこと。ドイツの大学で行われる授業は基本的には全てドイツ語。ドイツ語の講義を聞いてノートをつけたり、授業中にドイツ語でディスカッションしたり、レポートを書いたり発表したり・・・ もちろん授業だけではなく、学籍登録や履修登録など諸々の手続きもすべてドイツ語だ。DSHではドイツの大学で学生としてやっていく上で支障をきたさないだけのドイツ語能力が試される。
出願書類で提出した語学証明はあくまでもDSHを受けるための証明書にしかならない(DSH免除となる証明書もある。→「DSHの免除」)。本当にそこで証明されているドイツ語能力で大学生活を送れるかは、各大学がDSHで審査することになる。
DSHに合格すれば、キミは晴れてドイツの大学の正規の学生になることができる。どこか1つの大学でDSHに合格すれば、それは全てのドイツの大学で一生有効なドイツ語能力証明となり、どこの大学で勉強する場合でも新たにドイツ語の試験を課せられることは原則としてない。

 2004年6月にDSHの新しい実施規定が施行された。旧規定との大きな違いは、従来「合格か不合格」としか判定されなかったものが以下のDSH-3〜DSH-1の3段階評定となり、更に合格最低ラインが引き下げられたこと。但し、最低合格評定値のDSH-1では原則として入学許可には不十分。

【DSHの3段階評定】
DSH-3ずば抜けて高いドイツ語能力を有している。
DSH-2大学の学部入学に十分なドイツ語能力を有している。
DSH-1大学の学部入学を条件付きで認められる場合があるが、不合格と判定される場合もある。

これまでは大学ごとにDSHの難易度に大きな差が生じ、受験生の間では「DSHに合格し易い大学はここ」と言った「噂」が流布したりしていたが、試験の出題基準なども厳格化され全国的な統一基準を設け、公平でより信頼度の高い試験になった。
この新基準はまだ全ての大学が採用するまでには至っていないが(2006.10現在)、新基準のDSHを採用した大学では旧来のDSHを認定しないところもあり、新基準への移行は迅速に行われる見通し。

2001年よりTOEFLのドイツ語版ともいえる世界基準のドイツ語統一試験(TestDaF)が実施され、TestDaFが普及するに従ってDSHに取って代わると思われていたが、TestDaFはLL施設を確保できなかったり機器のトラブルが起こるなど、世界規模ではまだ問題も多く、新基準のDSH導入により今後DSHはTestDaFと並んで、留学生にとっては重要なドイツ語試験として並存することになると見られている。以下は新規定についての概要。

形式と内容

DSHは各大学それぞれが独自に実施するが、すべての大学のDSHは全国統一の実施規定(DSH-Rahmenordnung)に基づいて出題される。試験は「筆記試験」と「口述試験」に分かれる。満点を100点とすると「筆記試験」が70点、「口述試験」が30点の配点となる。

 筆記試験

筆記試験では次の3つの分野の問題で構成される。学部の専門分野に関するようなテーマは取り上げられないが、大学生として当然知っているべき基礎的な学問知識はあることが前提として出題される。

1. テキストの聞き取り能力と聞き取ったテキストの応用力を審査する問題
大学の講義や講演を聞いて理解でき、ノートを作成でき、それを有効に活用できるかどうかが問われる。5500〜7000字程度のテキストが用いられ、読まれたテキストに関する質問への解答や、要約、コメントなど。配点は筆記試験70点満点中20点。

2. テキストの読解力と読み取ったテキストの応用力、並びに、学術的な構成力を審査する問題
書かれたテキストを理解し、有効に活用できるかどうかが問われる。4000〜5500字程度のテキストに、表やグラフも用いられる。テキストを読んで質問に答えたり、文を組み立てたり、テキストについての説明を行ったりする。配点は筆記試験70点満点中30点。

3. 文章の構成能力を審査する問題
与えられた課題(200ワード程度・図表やグラフ等が用いられる場合あり)について論述する。配点は筆記試験70点満点中20点。

 口述試験

口述試験では大学のゼミナール等の授業において、討論・発表・意見交換等がスムーズにできるかどうかを審査する。所要時間は最長で20分。出されたテキストに基づいて、5分程度の口頭発表を行い、続いて15分程度の試験官との問答が行われる。与えられたテキストについては30分を最長とした準備時間が与えられる。
口述試験では十分な理解に基づいて適切な内容の話しができるか、といった内容のほかに、話し方、言葉の正確さ、発音等も審査の対象となる。

※口述試験は場合によって免除されることがある。

合格ラインと評定

筆記試験、口述試験共に57%以上正答した場合が合格とされる。57%以上の合格者は、筆記+口述の正答率によって次の3段階評価が与えられる。
DSHの3段階評定はそれぞれ、TestDaFの3段階評定(TDN3〜TDN5)に対応している。TestDaFではTDN4を入学許可レベルとしていること、また旧来のDSH規定では3分の2以上の正答を合格レベルとしていたことから、DSH-2以上の評定を得られない場合は原則として学籍登録は認められない。つまり、DSHに合格したといってもDSH-1という評定では入学許可レベルとはみなしてもらえない。

正答率DSHの評定TestDaFでは
57%〜 66%DSH-1TDN3
67%〜 81%DSH-2TDN4
82%〜100%DSH-3TDN5

レベル

DSHのレベルは出題者に言わせれば「ゲーテのZOPのレベル」ということになる。つまり上級ドイツ語レベルということで、難易度は相当高いと思っておいた方がいい。
DSHは上に記したような共通のルールはあるが、各大学が独自に問題を作成するので、問題の傾向や内容は大学毎に異なる。DSHの受験準備をきちんとしたい場合は受験する大学の過去問を取り寄せて備えよう。

受験資格

DSHには内部者用と外部者用のものがある。内部者というのはその大学のドイツ語コース(DSHコース)の受講者のこと。内部者用DSHの受験資格は当然ながら、その大学のDSHコースの受講生であること。
外部者用DSHは通常の入学志願を行ったうえで"Zulassungsbescheid"をもらっている志願者が対象となる。つまり、DSH受験の指示付きのZulassungsbescheidをもらうことが受験資格となる。
DSHの受験が許可されるには通常出願時に800〜1000時間のドイツ語学習証明やMittelstufeのドイツ語能力証明が必要となる。

試験の実施時期

内部者用DSHはDSHコースの受講終了時に行われる。外部用DSHは、通常当該学期開始前の3〜4週間前に受ける。詳しい日程は送られてきた"Zulassungsbescheid"に記入されている。

受験回数の制限

従来、「DSHは生涯を通じて原則として2回しか受けることができない。」ということになっていたが、2004年に施行された新しいDSHの実施規定では、単に「DSHは繰り返し受験が可能である "Die DSH kann wiederholt werden"」と変更された。これをどう解釈するかは現状では各大学に委ねられているところがあり、過去の受験回数を問わない大学と、従来通り繰り返しは1回のみとしている大学が並存している。
再受験を1回しか認めていない大学で2回DSHが不合格となると、たとえ他のDSHの免除条件(TestDaFなど)をその後に満たした場合でも受入れを拒否されることもありえる。DSHを受ける際は受験回数について直接大学に確かめること。

DSHの免除

こうした厳しい試験はできれば受けたくないものだが、実はDSHを受けなくてもドイツ留学する方法はある。以下の条件のいずれかに該当する場合はDSHが免除される。

   ▼▼▼
以下の@〜Cのいずれかのドイツ語能力試験に合格している場合。若しくはDのTestDaFで4つの分野全てでTDN4以上を取得している場合

@ DSDU(Deutsches Sprachdiplom Stufe U)
A Kleines Deutsches Sprachdiplom
B Grosses deutsches Sprachdiplom
C Zentrale Oberstufenprüfung(ZOP)

D TestDaF

TestDaFは大学の学部によってはTDN5の評定を求められる場合がある。

TestDaFについて
上の@〜Cのドイツ語試験はいずれも上級レベルで、これに合格できる力があればDSHにも受かる、ということであまり現実的とはいえないが、DのTestDaFのTDN4のレベルは@〜Cの試験の合格レベルよりは多少低い。
更にTestDaFでは、4つの分野全てにTDN4を取得していない場合でも(例えばTDN4とTDN3が2つずつ)DSHを免除する大学や学部が相当数あるので、中級者であれば受けておくといい。TestDaFの詳細についてはこちらのページを参照のこと。本サイトの「ドイツ語能力証明」も参照されたい。

以下は更にもう少しハードルを下げて、DSH免除の条件を見てみよう。

   ▼▼▼
ドイツで学位取得を目的とせず、1〜2セメスター程度の短期間ドイツの大学に留学したい場合。

日本の大学に在籍しながらのドイツ留学だったら当然期間は1年程度になるので、この免除条件はありがたい。

しかし、この条件はドイツの全ての大学共通ではなく、こうした条件を提供している大学は限られている。その上、こうした条件については各大学の資料やホームページにも載っていない場合が多い。志願者の成績や志望学科などによって個別に判断され、一律に決められないためだ。「提出されたドイツ語証明が本学に定めた条件に合っていること」とか、「日本の大学に最低2年間在学している場合」といった付帯条件が付けられている場合が多い。

また「教授の受入れ推薦書があること」という条件が付く場合もある。これはもちろん留学先大学の教授の推薦書であるが、自分が今通っている日本の大学のゼミの教授などに、ドイツの大学の教授で知り合いがいないかどうか聞いてみると思わぬ可能性が開けるかも知れない。

「学位取得を目的としない1〜2セメスター程度の留学」の場合、DSH免除までは行かなくでもMündliche Prüfungが免除されたり、通常3分の2の正答が必要なSchriftliche Prüfungが40%や50%の正答で受け入れられる大学もある。

こうした留学目的の場合にどの大学がどんな条件でDSHを免除、或いは軽減しているかは自分で直接志望先大学に問い合わせなければならない。

   ▼▼▼
交換留学生などの身分で学位取得を目的としない1〜2セメスター程度の短期間留学する場合。

上にあげた、1〜2セメスターの留学が「交換留学生」など大学間や学部間の交流協定に基づいて行われる場合は、どこの大学でも原則として無条件でDSHは免除される。交換留学生になるには、大抵派遣元の日本の大学で選考試験が行われるが、これは殆どの場合DSHよりは易しい。1年次より選考試験合格目差して頑張れば、交換留学生でドイツの大学に留学できるチャンスは大きい。
日本の大学に在学している場合は、自分の大学がドイツの(或いはオーストリアやスイスの)どんな大学と協定を結んでいて、どうすれば派遣されるかを調べてみよう。

   ▼▼▼
日本の大学でドイツ語学科や独文科など、Germanistik関係の学科を卒業している場合。

これもドイツの全ての大学が共通で認めているわけではないが、これを認めている大学は上の「短期間の留学の場合」でDSHを免除してくれる大学より数はずっと多い。しかも、この場合は短期の留学だけでなく、学位を取得するための留学、つまりドイツで卒業を目標に留学する場合も適用される。卒業してから留学、という時間とお金の余裕があれば選択肢に入れる価値は大いにある。

ドイツ語コース受入れ試験


DSHを受験する前にドイツ語コースに行きたい、という計画でドイツへやってきた場合に受ける試験が、「ドイツ語コース受入れ試験」だ。EinstufungstestとかAufnahmeprüfungと呼ばれている。

形式と内容

問題の形式はDSHのような全国統一の規格はないが、DSHに順じた形式で出題される場合が多く、筆記試験のみが主流。量的にはDSHより短い場合が多く1時間程度が多い。過去のそこの大学で夏に行われている「夏季ドイツ語コース」のクラス分け試験がそのまま使われるという噂もある。

レベル

前述のようにドイツの大学で開設しているドイツ語コースは中級以上。初級者をカバーするコースは原則としてなく、クラスのレベルはなかなか高い。こうしたコースの試験に合格するには独検2級ぐらいのドイツ語力は必要。

合格ライン

DSHは3分の2の正答率で無条件に合格だが、ドイツ語コースの場合は志願者が何人いようとも定員まで絞らなければならないので、どの程度できれば合格か、ということは一概には言えない。競争率は3倍程度から28倍もの狭き門のドイツ語コースもある(ポツダム大学)。

試験の実施時期

外部者用DSHと同時期に行われ、当該学期開始の2〜3週間前。試験の期日はZulassungsbescheidに記される。

プレテスト


DSHやドイツ語コースの試験の前に「プレテスト」を行う大学がある。プレテストの結果で、DSHとドイツ語コース試験のどちらかを受けるように指定されることもある。マインツ大学などではプレテストの結果が悪いと、DSHは受けさせてもらえない。プレテストの有無や時期については送られてきた手紙に書いてあるはず。

留学開始時にやる事

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