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画像で話そう:失語症リハビリ教材サイト

myasui@dokkyo.ac.jp

医療が進んだために、脳卒中や交通事故にあっても生き延びる確立が増えたことは大変喜ばしいことですが、 外目には回復したように見えても失語症などの高次脳機能障害を負い、助かった命を生き抜くのに困難を抱えている方も多いようです。 失語症はリハビリを続ければ機能回復が長期間可能であることが実証されています。手足などの運動能力も、08年2月のNHK特集(長島元巨人軍監督 などが出た)を見ると、同様に長期間のリハビリで機能回復が期待できるようです。長期間のリハビリは、自宅で、家族の助けを借りて、本人の意志で、出来れば コストをかけずにということになり、具体的にはe-ラーニングというのが1つの選択肢になるかと思います。

私の専門分野は言語学(生成文法)ですが、英語スキル科目も担当し、e-ラーニングに力をいれています。失語症のリハビリ に関する本を読んで、大学レベルの英語教育と共通する問題を多く抱えていることを知り、英語教育の知見を是非失語症リハビリ 教材作成に生かしたいと考えるようになりました。

具体的にはホットポテトという外国語教育で有名なフリーの教材作成ソフトで教材をつくり、やはりフリーのmoodleというCMSを使った 外部サイト pictoreole.netで08年4月以降公開しています。適当なログイン名を指定して、メールベースで自由に登録し学習することができます。

また、画像辞書を使って失語症の方がつくる発話の文法判断に関しても、言語学の知識などを生かし取り組んで行きたいと考えます。

私の試み以前に、失語症リハビリ用の教材が世界中で作られ、ウェブ上に数多く公開されています。 これだけでも失語症の方やSTの方に大変有益であると思いますが、いくつか改善点があります。

具体的には、まず、教材用の画像の多くが名詞であり、動詞、形容詞、前置詞などが少ない点です。冠詞、時制、助動詞など機能語と 言われるものに対応する画像もほとんど見られません。ただし、絵文字/ピクトグラム (pictogram)という、細部を省いたシンプルなデザインを使った画像がフリーで公開されており、動詞や形容詞も備えています。有料で アニメーションジフ (animation GIF)も使えます。さらに、あまり実用的ではないかもしれませんが、 トンパという実存する表意文字を使うのも面白いもしれません。

もう1つは、教材の多くがPDFで、プリントアウトして使われることを想定していると思われますが、 解答のフィードバックがないため、失語症の方が1人で取り組むのは難しいということです。ホットポテトではフィードバック付きの、自律学習 可能な教材が作れます。

さらに重要なのは、日本語などの自然言語の語彙に匹敵するような画像辞書ができても、それを使って自由に「発話」練習をしよう とした場合、作った文が正しいかどうか判断してくれる文法機能がなければなりませんが、文法性判断をしてくれるシステムは公開されて いないようです。そもそも、ターゲットとする発話レベルが機能語がない、いわゆる「電報文」で、意志を伝えることには有効ですが、 失語症発症以前の言語の回復を目指すリハビリには不十分だと思われます。

以上の観点から、かなり完成度の高い5つの既存システムの比較を先ず行い、 具体的な提案をします。


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