メディア論と文化翻訳——文字文化としての「アンティドシス」

 

柿田秀樹

獨協大学外国語学部英語学科

 

 この発表では、文化の翻訳をメディア論として考えてみます。古いメディアが新しいメディアに積み重なりながら移行するとき、そこには必ず翻訳と呼び得る現象があります。メディアがメディアとして成立するには、異なるメディアが接触し、古いメディアを新たなメディアに繰り込む作業が必要であり、その繰り込みによって内包したメディアを通して、新たなメディアが意味を持ち始めるのです。今回は、紀元前5世紀から4世紀の転換機に古代ギリシアで発生した口承文化から文字文化への移行という、約2500年前の知の地殻変動に着目します。古代ギリシアの哲学者(レトリシャン)イソクラテスの「アンティドシス」に焦点を合わせ、声と文字という異なるメディア間での翻訳と、メディアの翻訳が提示する文化批評とレトリック理論の可能性について探ってみます。

 

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