Seminar Paper 2001

Yoko Komagata

First Created on January 8, 2002
Last revised on January 8, 2002

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「ホールデンと赤いハンチング帽」
ホールデンにとってのハンチングハットの役目

    この「The Catcher in the Rye」を学び、"red hunting hat"にはさまざまな意味があるとおもうが、Holden にとってこれは、phonyと戦いpureを追求する自分自身なのではないだろうか。ホールデンが大人にならずに子供でいようとする葛藤の中で、その"red hunting hat"はそのようなホールデン自身であったように思う。そして、一回り大きくなっていくホールデンを手助けするような役目を果たしているのではないか。私はこのred hunting hatがどのような役割をしていったか、なんのための"red hunting hat"だったかを追及していこうと思う。 "This is people shooting hat, I shoot people in this hat." (P19) とあるが、これが意味することは、ホールデンがphony狩りをする、ということである。ホールデンは大人の世界に不満を持っており、大人の世界はphonyだといっている。そういう世界からpureなものを守りたくてphony狩りを決意した。"red hunting hat"とはそういうホールデンのphonyなやつらをやっつけてやるという象徴である。これはホールデンの社会に対する、大人に対する、phonyに対する反抗なのだろう。

    この本の中でホールデンはさまざまな帽子のかぶり方をする。

"What I did was, I pulled the old peak of my hunting hat around to the front, then pulled it way down over my eyes. That way, I couldn't see a goddam thing. 'I think I'm going blind,' I said in this very hoarse voice. 'Mother daring, everything's getting so dark in here.'" (P18)
"I pulled the peak of my hunting hat around to the front all of a sudden, for a change. I was getting sort of nervous, all of sudden." (P29)
このようにホールデンは帽子のつばを前にしてかぶるところがあるが、これはblindになりたいという表れであるように思う。学校を追い出されたり、ストラドレーターがジェーンとデートしていることでジェーンのpureが失われるのではないかと落ち込んだりしているときにホールデンが考えるphonyな世界や社会を見たくない、この社会から逃げたい、という表れである。 そして、phony狩りへと出かける。
"I swung the old peak way around to the back - very corny, I'll admit, but I like it that way." (P15)
"I couldn't find my hunting hat anywhere. Finally I found it. It was under the bed. I put it on, and turned the old peak around to the back. "(P40)
このようにホールデンがつばを後ろにしてかぶるのは、野球のキャッチャーのようになりたいからである。つまり、自分がゲームの中心にいたい、社会の中心にいたいということである。また、社会の中からはみ出されたホールデンがphonyへの戦いを挑んでいる様子なのではないか。

    "I put my red hunting hat on, and turned the peak around to the back, the way I like it," (P46)そして、ホールデンは帽子をかぶって学校を飛び出した。ホールデンは何かの節目や決意したときにかぶるのではないか。私はこの帽子がホールデンの分身であると同時にblindやcatcherになりたいときにそうさせてくれるもの、ホールデンをサポートしてくれるものである。こうして、ホールデンはphony狩りへと旅立つと同時に、pureへの追求が始まった。

    しかし、ホールデンのphony狩りがうまくいかない中で、"I showed her my goddam red hunting hat, and she liked it. She made me put it on before I went out, because my hair was still pretty wet. She was all right." (P138)とあるが、ホールデンは自分と同じような人を捜し、気に入った人に帽子を見せること、つまり自分の分身を見せることで、助けを求めているようにも思う。 こうしてホールデンはフィービーに助けを求める。そしてホールデンは、フィービーに

"I keep picturing all these little kids playing some game in this big field of rye and all. Thousands of little kids, and nobody's around - nobody big, I mean - except me. And I'm standing on the edge of some crazy cliff. What I have to do, I have to catch everybody if they start to go over the cliff - I mean if they're running and they don't look where they're going I have to co me out from somewhere and catch them. That's all I'd do all day. I'd just be the catcher in the rye and all." (P156)
という。ライ麦畑とは、pureの象徴で、その中にいる子供が大人の世界へ落っこちてしまうのをキャッチしたい、ということである。つまり、ホールデンは、ジェーンやフィービーが変わってしまうのがいやなように、pureの象徴である子供が変わってしまうのを恐れている。子供はいつまでも純粋でいてほしいと願っている。だから自分はキャッチャーになりたいといったのだろう。自分は子供がphonyな世界の大人になってしまうのをくいとめる役をしたいといった。つまり、ホールデンの気に入っているハンチング帽はphony狩りの象徴であり、また、ホールデンが子供たちの守護神であることを意味しているのではないか。そして、ホールデンは家を出るとき、
"Then I took my hunting hat out of my coat pocket and gave it to her. She likes those kind of crazy hats. She didn't want to take it, but I made her. I'll bet she slept with it on. She really likes those kind of hats. Then I told her again I'd give her a buzz if I got a chance, and then I left." (P162)
このように、帽子をフィービーに渡しているが、これはホールデンがもうphony狩りをやめるという象徴である。また、赤いハンチング帽を渡すということは、キャッチャーもやめるということであり、今までのホールデンの価値がなくなるということである。また、ホールデンは、"I didn't give much of a damn any more if they caught me."といっており、これはつまり、おそらく戦いに疲れたのだろう。

    すぐそのあとに、"I nearly broke my neck on about ten million garbage pails, but I got out all right." とあるが、これはホールデン自身がライ麦畑から落ちそうになっている象徴なのではないか。つまり大人へなりかけているということである。  

"Every time I came to the end of a block and stepped off the goddam curb, I had this feeling that I'd never get to the order side of the street. I thought I'd just go down, down, down, and nobody'd ever see me again." (P178)
これはP4にも似たような文があるが、ホールデンはまた、落ちていくようだといっている。つまり、振り出しに戻った、ホールデンは今までfallしていたものを食い止められるかもしれない、これから上り調子になるか、悪い夢から覚める境界なのであろう。そして、その後に、ホールデンは博物館に入り、ミイラを見に行くのだが、
"After I came out of the place where the mummies were, I had to go to the bathroom. I sort of had diarrhea, if you want to know the truth. I didn't mind the diarrhea part too much, but something else happened. When I was coming out of the can, right before I got to the door, I sort of passes out. I was lucky, though. I mean I could've killed myself when I hit the floor, but all I did was sort of land on my side. It was a funny thing, though. I felt better after I passed out. I really did. My arm sort of hurt, from where I fell, but I didn't feel so damn dizzy any more." (P184)
ここでホールデンは倒れた。つまり、ホールデンはpure(変わらないもの)の象徴であるミイラのお墓でいったん死んで、新しいホールデンに生き返ったのではないか。今までずっと落ち続けたfallは底なしではなかった。ホールデンは底に落ちた。ここがターニングポイントで、ホールデンはここから立ち直る。

    ホールデンは西部に行くことを決意し、フィービーにお別れを言おうと彼女に会うのだが、そこで彼女は、ホールデンが渡した赤いハンチング帽をかぶってくる。そして彼女は、私もついていくといった。これはつまり、Phoebeというのは狩人の女神様の象徴であり、彼女はホールデンにとっての守護神であることを意味する。彼女がホールデンについていくといったのは守護神として彼についていき、彼を守るという意味なのだろう。"She took off my red hunting hat - the one I gave her - and practically chucked it right in my face." (P186) とあるが、これは、フィービーはまだホールデンにphony狩りをする資格があるといっているのだろう。その後2人はメリーゴーランドへ向かうが、

"All the kids kept trying to grab for the gold ring, and so was old Phoebe and I was sort of afraid she'd fall off the goddam horse, but I didn't say anything or do anything. The thing with kids is, if they want to grab for the gold ring, you have to let them do it, and not say anything. If they fall off, they fall off, but if you say anything to them." (P190)
とある。ホールデンは子供が落ちるときはとめてはいけないと気づいた。落ちたら落ちたときでそこで悟れるものがある。つまり、ライ麦畑から落ちるのをとめてはいけないということであり、catcherの仕事はなくなるということである。しかし、ライ麦畑からたとえ子供が落ちてしまっても、また子供はやってくるものであり、ライ麦畑から子供がいなくなることはないとわかったのである。ライ麦畑はメリーゴーランドのようにずっとぐるぐるまわりつづけるもので、永遠なのである。ホールデンは、フィービーの小学校の"very nice"な先生に、"Good luck!!"(ホールデンにとってphonyだと考えられている言葉)といわれたことや、peacefulで神聖な場所だと思っていた小学校や博物館にでさえ、"Fuck you"とかかれていたことがショックだった。それは完全なピュアを求めていたホールデンにとってとても絶望的なことであったかもしれないが、本当にpureなものはなく、しかし、phonyと思われていた大人の世界にもpureなものはあるのだと気づいたのではないだろうか。だからホールデンは、ライ麦畑は永遠だと感じることができたのだろう。

     ホールデンにとって、red hunting hatとは、phony狩りの象徴であり、ホールデンを助けてくれるものであり、また、自分自身なのではないか。phony狩りをしていく上で、pureを追求していく中で、孤独な自分を勇気付けるもの、助けてくれたもののように思う。ホールデンは寒いときや学校を飛び出すとき、落ち込んだときに帽子をかぶるが、これはホールデンがred hunting hatに助けを求めたからではないだろうか。Phony狩りをしてpureへの追求をして、ホールデンは完全なpureはなくてもpureは永遠に大人の世界にもあると気づいた。つまりホールデンは大人になった。このように、ホールデンがもがき苦しみ、pureを追求し、大人へ成長する上で"red hunting hat"は必要不可欠のものだったであろう。


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