Seminar Paper 2004

Natsuko Saito

First Created on January 27, 2005
Last revised on March 2, 2005

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A New Lifeの女性たち
光り彷徨う女性たち

 ニュ−ライフを読み終えて、この本のにもっともかかせないいわば核となるものはまさに本に登場する女性たちであると私は確信した。もちろん、学部長選挙や、レヴィンとギリ−の男同士の関係ももちろんこの小説において重要だはあるが、それら全てに影響を与え、男達を操っているのは、登場する女性たちである。この女性たちの存在なくしてニュ−ライフは完成しないのである。そしてこの小説の中心となる女性、主人公レヴィンに最も影響を与え続けるのが、ポ−リ−ン・ギリ−である。ニュ−ライフを読んでいて、ポ−リ−ンの言動や行動が私の中で特に疑問を抱く、もしくは、なるほどと思わされることが多かった。主要人物であるレヴィンとギリ−二人の男が翻弄されるだけでなく、女性である私でさえ、彼女が二人の男から惹かれる魅力をなんとなくではあるが、感じ取った。

 彼女の独特な魅力の発揮ぶりはレヴィンとギリ−、ポ−リ−ン、三人が初めて顔を合わせた時から始まっていた.“Levin had opened the rear door but Pauline said there was room for all in front. He shyly got in and she sat between them.”(p. 4)という場面。レヴィンが照れくさそうに車にのるかたわら、ポ−リ−ンはどうどうと真ん中に座ってしまう。普通に考えた場合、自分の夫とこれから新しく部下になろうかという若者三人で車に座るというシチュエーションになったとき、妻の立場であるならば、夫を立てるという意味でも、部下と直接話しやすい位置に夫を座らせるものではないだろうか。たかがわずかな移動時間とはいっても、車内は外の世界から切り離された、いわば独特な一つの空間である。有人と車に乗るよき、家族またはお世話になった人、初対面の男性と乗車するときなど、そのときの状況により知らず知らずのうちに、ひとは自分がどこに座るべきか判断しているはずである。そして、ポ−リ−ンはレヴィンと肩を触れ合わせ座り、レヴィンはきっとぎこちのない乗り心地だったであろうと私は感じた。おそらく、ギリ−の側からすれば、大げさな言い方かもしれないが、自分でさえ初対面の若者と我が妻が真横で顔を真近にして話をする姿は驚く反面、やきもちさえやいてしまうのではないだろうか。どの程度でやきもちえおやくかというのは性格にもよるは思うが、少なくともこの小説を読んでいてギリ−ならこの場面であまり良い気はしなかったはずだと私は思った。かたや照れくさがる若者と、かたや何歳になろうとも妻にやいてしまう敏感な男たちをポ−リ−ンは翻弄し始めて行くのである。すでにこのときから三人の三角関係は始まっていたのだろう。

 ドジなロマンチストという、一見恋愛において幸の薄そうな印象を受けるレヴィンではあるが、物語の途中、ナダリ−という女子学生から好意を持たれるという場面もあった。

    ‘ Then when during Christmas will we meet? I could find an excuse to stay on at the dorm and maybe we could go to your room sometime, or something like that if it could be arranged.’
    ‘ That would be so nice but I may be going to San Francisco during Christmas,’ Levin said.
    ‘ Oh, swell! Wouldn’t it be nice If we could go together? I’d pay my own way, of course.’
    He said it would be except he had promised a colleague he might go along with him, in the other’s car.
    ‘ Oh,’ said Nadalee.
    Though they talked longer, she seemed, when she left, to have grown cool to him. He observed this with regret. He was treating her badly.
ナダリ−が積極的にレヴィンに冬休みの予定を聞いている場面である。ナダリ−は、まだ若いというせいもあるかもしれないが、ポ−リ−ンに比べると、自ら自分の考えや、過去についてレヴィンに語る女性だと私は感じた。ナダリ−の気分を害してしまい、少し罪の意識を感じているレヴィンにとって、押しの強い積極的な女性はあまり合わないように思える。車内で真ん中に座るのも一見積極的とはとれるが、その場合のポ−リ−ンの行動と、ナダリ−のような好きな人には何でも教えたがる女の子の行動は全く別である。しかしながら、レヴィンの脳裏には何度かナダリ−が浮び、全裸で泉を泳ぐということまで想像することもあった。

 そしてもう一人、レヴィンび近つ゛こうとする同僚のエイヴィスという女性も登場する。研究室で二人は体の関係を持とうとするが、ギリ−邪魔に入ったということもあり未遂に終わった。エイヴィスはギリ−夫妻にのことについてこう話している。

    ‘Really?’ said Levin. He asked her why she thought so.
    ‘ Well,’ she said, with a hesitant laugh, ‘ she strikes me as the sort of person who can’t always be dependent on to strengthen a man’s rear when he is on the march.’
    ‘ On the march? ‘
    ‘ Advancing careerwise. ‘
    ‘ His rear’
    ‘ Figuratively speaking, Please don’t misunderstand me, Seymour, I have nothing against Pauline. She’s been nice to me, especially when I first came to Easchester, kind with invitations to their house, though I suspect Gerald had had to ask her to ask me. What I have reference to is that she gives the impression of being dissatisfied in the midst of plenty, and I imagine some people wonder whose fault is and unjustly blame Gerald. She can also be absent-minded about her social responsibilities, which rather disturbs him.’
    ‘ What do you mean ‘in the midst of plenty?’ ‘
    ‘ What any woman consider herself lucky to have.’
    ‘ To me they look like people who generally get along. I could be wrong.’
    ‘ Oh, they do,’ Avis said. She seemed worried. ‘ Please don’t quote me.’

 この会話をした時に、今後レヴィンとポ−リ−ンが愛し合うことまでエイヴィスは予していないようだが、レヴィンがポ−リ−ンに惹かれていくことをあまり好ましくは思っていないことがわかる。後に、ポ−リ−ンの元愛人レオ・ダフィ−をエイヴィスが好きだったということが明らかになるが、その件も含めて、エイヴィスはポ−リ−ンに対して、自分が好意を持った人はいつも彼女にとられるという思いがあるのではないだろうか。だからこそギリ−夫婦の関係を良くは思っていないのではないだろうか。そして注目すべきは、ポ−リ−ンへの批判をあからさまにレヴィンに伝えてしまうところだ。まだこの場面のあたりでは。レヴィンもそれほどポ−リ−ンには惹かれていない頃だと思うが、このようなエイヴィスの批判の意見を聞けば、男としてはエイヴィスに少しひいてしまうところだと思う。おそらく、エイヴィスはダフィーにも同じようにポ−リ−ンへの批判を伝えていたのではないだろうか。考えすぎかもしれないが、彼女は以前に自分の胸を手術していてそのことを引け目に感じていて自分に自身が持てず、その心の傷が空回りして彼女の捻くれた面を相手に見せてしまうのではないかとわたしは感じた。外見や心に傷を持ち、それを乗り越えきれていない人はそのことがしがらみとなり、素直になれないということはエイヴィスにも当てはまるのではないだろうか。この小説の最後の方でわかることだが、彼女はレヴィンの研究室の様子を監視していたなどとストーカーららしき行動をしていたことが発覚するが、そいういった行動そのものもエイヴィスの人間として足りない部分があらわになっているように思える。  バロックの自宅でパーティをしたとき、酔ったポ−リ−ンとレヴィンとの興味深いやりとりがあった。レヴィンはポ−リ−ンの具合が悪くなったと思い、介抱する場面がある。

    Levin hurried down, found his coat, and return to the garden. George and Jannette were there with Paurine.
    “I’m awfully sorry,” she was saying.
    “some food she ate,” Levin said. He helped her to her feet.
    “Gerald asked me to drive you home.”
    She felt his beard and giggled. “For a minute I thought you were somebody else.”
    “Who for instance?” George said.
    “Nothing of your business,” said Jannette..

ポ−リ−ンは酔った勢いで、レヴィンを他の誰かと間違えたと発言し、ジョージとジャネットはそれがダフィだと悟る。しかし、ポーリーンは口を滑らしてしまったという素振りは見せず、酔った勢いで言ったのかレヴィンをからかってわざと口にしたのか定かではない。私個人としては少し驚かそうと遊び心に言ったように思えたが。いずれにせよ、ポーリーンが周囲の人々を振り回してしまうという彼女らしい場面だと感じた。そしてその後もポーリーンとレヴィンのやり取りは続く。

    “How doyou feel?” Levin asked.
    “Awful, but sexy. Do you think George wants to seduce me, Mr. Levin? He pours me such big drinks.”
    Levin laughed although he felt a headache coming on.
    “My one talent,” she said, rubbing her head against him, “only lately developed, is that I know people. I know you, Mr. Levin.”
    “What do you know?”
    “Who you really are. And you know me, don’t you?”
    “I’m not sure.”
    She sat up. “I’ve told you about my self but not about my children..”
    “Later,” said Levin.
    “At first I didn’t want them because I was ashamed a big girl like me couldn’t have her own. When we were first married I had some menstrual trouble and the doctor noticed I had a tipped womb. All along I thought that was the reason why, but years later we were both examined and it turned out Gerald had no seeds. He had had the numps and enflamed testicles when was twenty-two.”
    “I don’t want to hear sbout his personal troubles.”
    “I know I’m drunk, it makes me talkative.”

 この場面で私はポーリーンを可愛らしいと感じた。お酒に酔って自分の気の向くまま言いたい事を言うポーリーン。そんなポーリーンの発言に酔った人の言葉だと思いながらも聞いてしまうレヴィン。日常とは違い、自分のことを話し出す珍しい彼女にレヴィンは少し戸惑っているようにも思える。しかし、同時に、ポーリーンも自分の旦那や子供の話をすることもあるものかと興味深く彼女を可愛らしいと思っているのではないかと感じた。言葉だは「そんなことは聞きたくない」と言いながらも、お酒のせいで冗舌になったポーリーンの姿をみて少し嬉しい気分になっている面もあるのだろう。

 小説の最後の場面で、レヴィンとギリーの最後の熱い話し合いがある。ギリーはポーリーンの年齢に関して次のように述べている。

    “Wht I mean is that for years--this started in her twenties--she has been keeping track of her wrinkles and lamenting lamenting passing of her youth, which, I take it, eas from eighteen to twenty-five, and I can’t convince her otherwise. With me around she has the advantage of my forty-fivey yearsas a comparison to her thirty-two, but with you and your thirty or thirty-one, you can imagine what that might do to her morale. She’ll be older with you than she is with me, older at every age and, believe me, you won’t find any advantage to it. Living with Pauline though it can be pleasant is generally no bed of roses.”

まさにギリーの言うことはもっともである。しかし、ギリーという男性はもともと現実的な面を多く見せていたが、どこかいつももっともらしいことばかり言っていて本質的な何かがかけているという印象を受ける。その本質とは何か。小説を読む間ふと考えることがあったが、この会話のあたりで私は感じた。それはポーリーンを一人の女性として人間として見ることを怠っていたのではないかということだ。レヴィンに写るポーリーンという独特な魅力を持つ女性を正面から見つめることをギリーは忘れていたのだろう。何に対しても現実的に冷静に対処するギリーは妻を妻としてしか見ることができなくなってしまっていたのではないだろうか。レヴィンを自分の部下として利用しようと考えていたのと同じように。そしておそらく、ポーリーンとレヴィンの二人もこの彼の決定的な欠点に気付いていたからこそ最後の最後で完全に惹かれあい、結ばれたのではないかと思う。


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