Seminar Paper 2006

Yurika Ikeda

First Created on January 30, 2007
Last revised on January 30, 2007

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The Great Gatsbyの女性たち
「“女である”というDaisyの武器」

    Daisyは尊敬すべき女の鏡であると思う。女という性そのものを武器にし、それを最大限に生かしながら人生を謳歌している。このStoryの中では、DaisyはGatsbyの再出現によって彼女の人生最大のSomethingを冒してしまうが、本来のDaisyは『女であることは人生の勝利である』というくらい、素晴らしい人生の歩み方をしていると思う。

    現代ではgenderはあまりはっきりと区別されなくなった。女系天皇や専業主夫という言葉ができて、女という性が認められつつある。社会に出ても、妊娠や出産によっての選択肢は、仕事を諦めることだけには限られなくなってきた。その上で女として生きることにおいて、どうしようもなく逆らいがたい損なことは減ったと思う。しかしこのStoryの時代では、女が社会に出るということはあまりなく、女は我慢を強いられることが多かった。それなのにDaisyは女を武器にして自由に生きている。現代でやっと女性としての地位が確立されて、平等とはまだ言い難いがある程度の条件が揃ったというのに、Daisyは本当に自由に生きている。それは彼女の性格や人格、そして生まれ持った才能だと思う。

“‘I’m p-paralyzed with happiness.’ She laughed again, as if she said something very witty, and held my hand for a moment, looking up into my face, promising that there was no one in the world she so much wanted to see. That was a way she had. ” (p.15)
Daisyの初登場シーンはまさに強烈であると思う。けだるそうな、でも艶かしい感じのする女性2人がソファで寛いでいて、そこでNickに気がついたDaisyは、すぐさま「あなたに会えた幸せで痺れてしまいそう」という言葉を口にする。既婚の女性が、初対面の男性に対して発する言葉にしては、刺激が強すぎると思うが、これも彼女特有の愛想であり、男に対しての礼儀なのだと思う。この特性は昨日今日身につけられるものではない。Daisyのこういう癖はまさに天性のもので、よほど自分に自信のある人でなければ使うことができないし、そして使っていい人とそうでない人とがこの世の中にはいて、そのことも十分わきまえての行動であると思う。それくらいの分別がある位、foolに見せているが、彼女はしたたかであると思う。
“It'll show you how I've gotten to feel-about things. Well, she was less than an hour old and Tom was God knows where. I woke up out of the ether with an utterly abandoned feeling, and asked the nurse right away if it was a boy or a girl. She told me it was a girl, and so I turned my head away and wept. ‘All right ,’I said, ‘I’m glad it’s a girl. And I hope she’ll be a fool-that’7s the best thing a girl can be in this world, a beautiful little fool.’”(p.23)
ここでのDaisyの「女はかわいくて少しばかがいい」というのは、まさに至言であると思う。女性にとって出産というのは、自分の存在価値を一番強くアピールできる行為であるのに、それなのに肝心の夫はどこで何をしているかわからない。それはまさに屈辱的なことである。しかし女の子が産まれたということがDaisyにとっての救いであった。現代においても、学歴があり、能力があり、そしてさらにそれらを生かすためのチャンスに恵まれた女性は、必ずといっていいほど、男性からの差別を受ける。「女のくせに生意気だ」なんて言葉に対して、それは差別ではという思いはあるけれど、いざ自分よりもデキる女を目の前にすると、男の人は攻撃的になる傾向が強いように思う。だからDaisyの言う「かわいくてばかな女」ほど、男にとって都合のいい女はいない。Daisyに言わせたら、もう女に生まれたこと自体が人生の勝利で、かわいらしく、そして男を立てるように少し馬鹿に振舞うことで、もうその子の人生は約束されたようなものである。それを知っているDaisyは、うまくいかないこともたまにはあるけれど、それに目をつぶったり気がつかないふりが苦にならない程度におばかさんで、そして自分の容姿には自信があるに違いない。Daisyは自分のことが1番好きだと思う。だから自分を好きになってくれる男が必要で、幸せにしてくれるお金が必要で、そしてそれらを手に入れる手段を知っている。Gatsbyと出会って本当に大恋愛はしたけれど、結局は待ちきれずに手頃なTomを選ぶ。私はその選択は正しかったと思う。そして子どもも生まれて、本当に女性として最高の人生を歩んでいるように思える。
“But she didn’t say another word. We gave her spirits of ammonia and put ice on her forehead and hooked her into her dress, and half an hour later, when we walked out of the room, the pearls were around her neck and the incident was over. Next day at five o’clock she married Tom Buchanan without so much as a shiver, and started off on a three months trip to South Seas. ”(p.83)
  しかしそんなDaisyにも辛いエピソードがあった。Gatsbyを忘れるために夜遊びを繰り返し、そしてやっと忘れかけて手に入れた幸せであるTomとの結婚式当日、Gatsbyから届いた手紙は彼女をどん底に落としてしまう。その内容ははっきりとは書かれていないが、おそらくGatsbyを選ばなかったことを酷く後悔するような内容であったのだろう。しかしたった1時間半で彼女は過去との見切りをつける。後々Gatsbyと再会して恋に落ちるが、このときは潔くTomを選ぶ。DaisyはGatsbyに対しての恋愛感情は十分にあったと思うけれど、それに溺れず、現実を見つめてTomと一緒になるという決断を下したDaisyは、本当に強くて潔い。 

    “And Daisy ought to have something in her life.”(p.86) これはBakerがNickに言った台詞である。Daisyは結婚式からよりいっそうTomを愛しているという姿を見せつけ、少し彼がいなくなっただけで、どうしようもなく心配して見せてみたりと、その姿は感動的でさえあった。そんなDaisyをBakerはどういう風に見ているのか。私だったら、もしDaisyのような女性がいたら、あまりにも神業を使うDaisyに嫉妬よりも尊敬の念を示してしまうと思う。そしてBakerも決してDaisyを嫌いではなく、むしろ好いていると思う。しかし、ちょっとしたいたずら心なのか、良家の娘として育ってきたDaisyに、1action起こさせようと、Bakerが引き金をひく。

    “‘Are you in love with me, ’she said low in my ear,‘or why did I have to come alone?’”(p.92) Daisyはここでもまた女っぷりを発揮している。Tomという夫の存在を知っているNickにさえこんな言い方を平気でする。やはりDaisyはタダモノではないと思う。誰でも「1人で来て」と言われたら、多少は何かあるのかなと推測はするものかもしれないが、Daisyのように、すぐに色恋ごとに結び付けて考え、それをストレートに口にしてしまうのは、よほど自分に自信がなければできない行為だし、少しfoolな気もするが、しかしこの後にはGatsbyとの再会が待っていて、結局、Daisyは大物なのだと思ってしまう。

    “‘You always look so cool,’she repeated. She had told that she loved him, and Tom Buchanan saw. He was astounded. ”(p.125) Daisyはなぜこういうことを口にするのか、とても理解に苦しむところである。こう言ったことでこの後Tomとどうなるかを考えられない位foolなのか、それとも自分のGatsbyへの感情が我慢できずに口走ってしまったのか、またはこう言ったことで、Tomに伝わるか、そしてGatsbyとの関係をさりげなくアピールして冒険をしてみたかったのか。Daisyこそ自由奔放という言葉が似合う女はいないと思う。

“‘Her voice is full of money, ’he said suddenly. That was it. I’d never understood before. It was full of money-that was the inexhaustible charm that rose and fell in it, the jingle of it, the cymbals’ song of it…High in a white palace the king’s daughter, the golden girl… ”(p.126)

    NickとGatsbyはお互いに同意しあうが、ここで1つだけ違っているのは、Daisyの金にあふれている声に、Gatsbyは強く魅かれて価値を見出しているというところである。普通の女性に対してこんなことを言うのは、かなりの失礼に当たるが、Daisyの場合は納得してしまう。金はいつでも表情を変え、分別を持たない。それはまさにDaisyの声として武器のひとつになっているのである。

“‘I never loved him,’she said, with perceptible reluctance. ‘Not at Kapiolani?’demanded Tom suddenly.‘No.’From the ballroom beneath, muffled and suffocating chords were drifting up on hot waves of air.‘Not that day I carried you down from the Punch Bowl to keep your shoes dry?’There was a husky tenderness in his tone…Daisy? ‘Please don’t. ’Her voice was cold, but the rancour was gone from it.”(p.139)]

    この修羅場でのDaisyは、まさにヒロインである。TomにGatsbyとの関係を責められ、どちらを選ぶか決めかねているが、彼女は2人の自分を心から愛する男との間で揺れ動くヒロインである。Tomには愛人がいるし、Gatsbyは少し偏った愛情を示しているが、Daisyにとっては十分である。しかし彼女はfoolな部分で、どちらかを選ぶことはできないのだと思う。それは一方を選べば、一方を傷つけてしまうからである。Daisyは確かに奔放で、自分が大好きで、自信があって、そして何より自由だけれど、他人を傷つけることが平気な女ではない。彼女の事実は2人とも愛していたということで、愛していた人を傷つけることに抵抗がある。当然のことかもしれないが、いい女だと思う。

    Daisyの人生は、『女の一生』としてひとつの物語が出来る位、面白いものだと思う。そして彼女は何より、自分のことを知り、自分自身を愛している。結局彼女はTomを選ぶけれど、それは正しい選択だったと私は思う。過去の清算をして、波乱がありながらも辿り着いたTomとの幸せ、しかしDaisyはそれに満足することなく、これからも、女を武器にして好きなように生きていくのだと思う。そしてfoolだから、自分が犯した事故も忘れることができるのかもしれない。女として、性を武器にしてDaisyのように生きていくことができれば、幸せになれるのかもしれない。


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