Seminar Paper 2006

Komine Ken

First Created on January 30, 2007
Last revised on January 30, 2007

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The Great Gatsby におけるTimeの意義
夢と過去に生きたGatsby

   私は、今までの人生経験を通して、過去とは完全には繰り返すことはできないものだと思っていましたし、夢とは過去に対してではなく、未来に向けて抱かれると思っていましたし、誰もがそう思っていると考えていました。しかし、この作品の登場人物である、ギャッツビーは、まさにその逆の考えを、全く疑うこともなく心に抱き、死ぬまで過去や過去の中に見出していた夢のために生きていたと思います。この論文では、そのことをいくつかの引用を用いて述べていきたいと思います。

   まず、序論で述べた彼の過去と夢のことですが、それは簡単に言ってしまうと、デイジーと過ごした過去を全く同じようにまた繰り返したいという願いであることは、言うまでもないでしょう。そして、この夢やデイジーは、前半の部分ではギャッツビー家の対岸に住むデイジーの家から発せられている緑色の光といった形で表されていることが、次の引用文で読み取れます。

“ he stretched out his arms toward the dark water in a curious way, and, far as I was from him, I could have sworn he was trembling. I glanced seaward − and distinguished nothing expect a single green light, minute and far away, that might have been the end of a dock.” (p. 27)

  このギャッツビーの異様とも言える行動からも、ギャッツビーは夢=デイジー=緑の光、といった具合に、それらを求めるように手を伸ばしていたと考えられます。また、わざわざデイジーの家の対岸にある家を買ったということからもギャッツビーのデイジーへの想いの強さがわかります。

   次に、ギャッツビーは自分の夢の実現のために、その舞台や役者を作り出していたと考えられます。その1つが第3章の初めに出てくるように、彼が毎週のように開いていた盛大なホームパティーであると考えられます。彼は、このようなパーティーを毎週開くことで、その名がいつかデイジーの元に届き、またデイジーと再会できるかも知れないと考えたかもしれません。また、自分が貧乏だったからデイジーはトムと結婚してしまったのだという考えも持っていたことも次の文からわかります。

“‘She only married you because I was poor and she was tired of waiting for me. It was a terrible mistake, but in her heart she never loved any one except me!’” (p. 137)

   これは、この作品の後半でトムに言っていることなのですが、現在の夫にこのようなことが言えるのは、やはりギャッツビーは自分の夢のために生き、自分が今まで信じてきたことは正しいのだという確固たる思いがあったからに違いないと思います。そうでなければ、自分だったらいくら好きな人が目の前にいるからといって、ここまでのことは言えないと思います。

   そして、ギャッツビーは夢の実現のために、いろいろな人をパーティーに招くわけですが、ニックが第4章で時刻表の余白に書き付けた、今までギャッツビーのパーティーに招かれた人も含めて、ギャッツビーからすればただの夢の実現のための役者に過ぎなかったのかもしれません。また、ベイカーやニックも他の人たちよりかは多少の情を向けたかもしれませんが、やはりギャッツビーにとっては他の人と同様に、夢の現実のための役者であったと思います。それは、パーティーに出席したデイジーとつながりのあるベイカーを自分の部屋に招き、話をし、またニックとの信頼関係を結ぶために交流を深めていったことからも推測できます。たしかに、ニックを自分の夢のために利用しようという気はなかったかもしれませんが、結果的にはニックのおかげでデイジーと再会できたわけですし、そういった側面から見ればギャッツビーはニックを利用したと言えると思います。

  ギャッツビーはデイジーと過ごした過去を取り戻したい、また、ギャッツビーはデイジーとの関係は昔のまま止まったままなのだという思いが、情景に表れている場面もありまする。それが第5章で、ギャッツビーとデイジーがニックの家で再会を果たしたときに出てきた、 “a defunct mantelpiece clock” (p. 93) です。また、その直後にギャッツビーがこの時計を倒しそうになってしまう場面がありますが、これはある意味、ギャッツビーの、またデイジーとの2人の時間を共に歩みたいという潜在的欲求であると捉えることもできると思います。  また、ギャッツビーのデイジーとの関係を昔のままの形で保っておきたいというのが、潜在的に表されているものとして、ギャッツビーの庭の芝生が挙げられます。この芝生というのはこの作品の中で、何度もギャッツビーとセットで出てきていますし、常にきれいに保たれていることから、ギャッツビーの考えを反映したものと考えられます。そういった見地に立てば、ギャッツビーが死んでしまった後、わざわざ、伸びきっってしまった芝生という情景が出てきたことも納得ができます。

   そして、このギャッツビーの昔のままの形で保ちたいという想いは、情景や物だけではなく、当然デイジーに対してもその想いが注がれていることが、次の引用文からわかります。

“As I went over to say good-bye I saw that the expression of bewilderment had come back into Gatsby’s face, as though a faint doubt had occurred to him as to the quality of his present happiness. Almost five years! There must have been moments even that afternoon when Daisy tumbled short of his dream − not through her own fault, but because of the colossal vitality of his illusion. It had gone beyond her, beyond everything. He had thrown himself into it with a creative passion, adding to it all the time, decking it out with every bright feather that drifted his way. No amount of fire or freshness can challenge what a man can store up in his ghostly heart.” (p.102)

   この文は、デイジーとの再会を果たしたギャッツビーが、彼の中にある昔のデイジーと現在のデイジーが変わってしまった事に対して困惑しているという場面ですが、おそらくこれは実際にはデイジーはそこまで変わっていないのかもしれませんが、ギャッツビーの中に抱いているデイジーが現実のものよりかなり美化されてしまっているのだと思います。  そのことは、デイジーを自分の家のパーティーに招いたときの、次のようなギャッツビーのセリフからもわかると思います。

“’I feel far away from her,’ he said. ‘It’s hard to make her under stand.’” (p. 116)
“’She used to be able to understand. We’d sit for hours −’” (p.117)
“’She’ll see.’” (p. 117)

  このように、ギャッツビーは自分の中で作り上げた美化されたデイジーを現実のデイジーにも要求していることがわかります。また、デイジーと付き合い始めた5年前のデイジーを理想のものとし、今までずっとそれを胸に抱いていたこともわかるセリフであると思います。

  そして、ギャッツビーが過去にこだわることがよくわかるのが次のセリフです。

“’Can’t repeat the past?’ he cried incredulously. ‘Why of course you can!’ He looked around him wildly, as if the past were lurking here in the shadow of his house, just out of reach of his hand. ‘I’m going to fix everything just the way it was before,’” (p. 117)

  この考えは、おそらくギャッツビーを動かす原動力となっているものであると思います。今まで、ギャッツビーが今までしてきたことの全ては、これが原点であると言っても過言ではないでしょう。また、一般的に時が経てば、全ては変わってしまうのにもかかわらず、ギャッツビーは不変のものが絶対にあるのだと強く信じていることがよくわかります。

  ここで、少し見方を変えた考えをすれば、なぜこんなにもギャッツビーが過去のデイジーにこだわっているのかというと、ギャッツビーはデイジーと付き合い始めた5年前は純粋にデイジーのことが好きであったが、トムと結婚してしまったデイジーを再度自分に振り向かせるために、5年間様々な努力をしてお金持ちになったが、その過程でデイジーへの純愛も形を変えてしまい、今は何故デイジーが好きなのか見失っており、その気持ちを取り戻したいからではないかと考えられます。

  ギャッツビーが、デイジーは昔のまま自分を愛し変わらず、過去は繰り返せると考えているということが更にわかるのが、次の引用文です。

“’Your wife doesn’t love you,’ said Gatsby. ‘She’s never loved you. She loves me.’” (p.137)
“’Daisy, that’s all over now,’ he said earnestly. ‘It doesn’t matter any more. Just tell him the truth − that you never loved him − and it’s all wiped out forever.’” (p. 138)
“’You never loved him.’” (p. 138)

  これは、トムとの口論している場面ですが、自分だったらたとえ好きな人が目の前にいても今の夫にここまで言う事はできないと思います。このセリフはやはり、過去は繰り返せるという夢を抱き続けたギャッツビーだからこそ出てきたものだと思います。

   以上のように、過去や自分の夢の実現のために生きてきたギャッツビーについて述べてきましたが、彼は、最終的には自分が殺されてしまうかもしれないということを知りながらも、デイジーをかばう形で殺されてしまうわけですが、ここまで来ると、ただ単にデイジーを愛していたからというキレイなものではなく、異常なまでの過去や自分の夢への執着心のようなものを感じます。しかし、そこまで強い想いをもってしても自分の願いを叶えられず、死んでしまったギャッツビーに少し同情してしまいます。たしかに、過去の事を振り返り、「あの頃は良かった。」と感じることや、自分の中で失いたくない思い出というものはありますが、それに固執しすぎて、そこで歩みを止めてしまっては、人間的に成長はできないと思いますので、過去は過去として受け止め、それを未来に生かせるような生き方をしたいと思います。ただ、まだまだ未熟な自分は、一生を通して自分の想いや信念に忠実に生きたギャッツビーにロマンを感じるのは否めませんが…。


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