Seminar Paper 2006

Megumi Matsumoto

First Created on January 30, 2007
Last revised on January 30, 2007

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The Great Gatsby におけるTimeの意義
Time and tide wait for no man.

    時の流れは誰にも止めることができない。また時の流れとともに起こるあらゆるものの変化を私たちは止めることができないし、否定することもできない。誰もが当たり前に思うことだが、過去は繰り返せないのだ。

    私はこの物語の中で、とても印象に残っている場面がある。それは“‘You can’t repeat the past.’”と言ったNickに対して“‘Can’t repeat the past?’ he [Gatsby] cried incredulously. ‘Why of course you can!’” (p. 117) とGatsbyが言い返す場面だ。このように断言しているGatsbyは最後の最後まで過去にこだわり続ける男であった。しかし誰よりも時の流れを感じていたのは彼ではないだろうか。

    私はこう考えたのである。Gatsbyはあらゆる場面で時間の流れや、それに伴う変化を感じずにはいられなかったはずだ。それにもかかわらず過去に固執し続けた。それは彼が変化に対応できないお子様だったからではないだろうか。 物語の流れに沿って彼が遭遇した時の流れや変化に注目しながら、それでも過去にこだわり続ける、少しかわいそうなGatsbyの様子を論じたい。

    まず1つ目は、Nickの家にDaisyとGatsbyが来たときの出来事だ。Nickの家のリビングの壁には止まっている時計が置いてあった。Gatsbyはその時計を無意識に頭で押さえつけてしまっていたのである。“Luckily the clock took this moment to tilt dangerously at the pressure of his head, whereupon he turned and caught it with trembling fingers, and set it back in place.” (p. 93) ここにある止まってしまった時計はGatsbyの心を表しているのではないだろうか。Gatsbyの心は過去の状態で時が止まっているのだ。しかし無意識のうちに動かそうとしていることで、時の流れを認めてしまいそうになっているようにとれる。つまり、時を止められないことはGatsbyも知っているのである。しかし認めたくないのだ。この場面は、Gatsbyが意識をしていないと時の流れを止められないこと、つまり過去を過去として認めてしまうことを示唆しているのだ。

    2つ目は、Daisyとの再会の場面だ。“Gatsby, pale as death, with his hands plunged like weights in his coat pockets, was standing…” (p. 92) あれだけ楽しみにしていたGatsbyだが、Daisyが来たときには死人のように青ざめた顔をしていたし、せっかく二人きりになれたのに沈黙している時間があった。Gatsbyの思い通りにならなかったのだ。過去と同じようにはいられなかったのである。つまり変化を実感せざるを得なかったのだ。Gatsby は“mistake” (p. 94) と表現しているが、これは時の流れを認めたくなかったからと言えるのではないだろうか。

    3つ目はDaisyがGatsbyのpartyに来たときのことだ。5年間変わらず持ち続けていたDaisyへの気持ちが一瞬で消えてしまったようだった。“Perhaps some unbelievable guest, a person infinitely rare and to be marveled at, some authentically radiant young girl who with one fresh glance at Gatsby, one moment magical encounter, would blot out those five years of unwavering devotion.”(p. 116) GatsbyはDaisyに自分のpartyを楽しんでもらえると思っていたが、そうならなかったと感じたのだ。

‘She didn’t like it,’ he [Gatsby] said immediately.
‘Of course she did.’ (Nick said)
‘She didn’t like it,’ he insisted. ‘She didn’t have a good time.’
He was silent, and I guessed at his unutterable depression.
‘I feel far away from her,’ he said. ‘It’s hard to make her understand.’(p. 116)

ここはGatsbyがDaisyを自分の知っている彼女ではないと思い知らされた場面だと言えるだろう。過去と現在のDaisyは違っていたのである。

    4つ目は冒頭でも述べた場面だ。‘You can’t repeat the past.’ (Nick said) ‘Can’t repeat the past?’ he [Gatsby] cried incredulously. ‘Why of course you can!’(p.117)

ここにはcriedと書かれている。これまでの出来事でGatsby自身、自分でも現在と過去が違うことは感じているはずである。過去を繰り返したいと思っていても、それができないことも実感させられているだろう。しかしそれでもGatsbyは認めたくないのだ。過去にこだわりたいのである。だからcried=大声で叫んだのだ。それだけGatsbyが必死になっていると言える。次の場面でも同じことが言える。

‘Your wife doesn’t love you,’ said Gatsby. ‘She’s never loved you. She loves me.’
‘You must be crazy!’ exclaimed Tom automatically.
Gatsby sprang to his feet, vivid with excitement.
‘She never loved you, do you hear?’ he cried. ‘She only married you because I was poor and she was tired of waiting for me. It was a terrible mistake, but in her heart she never loved any one except me!’(p. 137)

ここでもGatsbyの必死な様子が描かれている。もしかしたら、そろそろ現実を受け入れなければいけないと潜在意識の中で思い始めているのかもしれない。

    5つ目はニューヨークのホテルの部屋でGatsby、Daisy、Tomの3人が議論をする場面である。

‘I love you now ? isn’t it enough? I can’t help what’s past.’ She began to sob helplessly. ‘I did love him once ? but I love you too.’
Gatsby’s eyes opened and closed.
‘You loved me too?’ he repeated.
‘Even that’s a lie,’ said Tom savagely. ‘She didn’t know you were alive. Why ? there’s things between Daisy and me that you’ll never know, things that neither of us can ever forget.’
The words seemed to bite physically into Gatsby.
‘I want to speak to Daisy alone,’ he insisted. ‘She’s all excite now ?’
‘Even alone, I can’t say I never loved Tom,’ she admitted in a pitiful voice. ‘It wouldn’t true.’(p. 139)

TomとDaisyの言葉はGatsbyに何らかのダメージを与えたようだが、それでもGatsbyはめげていない。そこにDaisyがまるでGatsbyの側についているかのようにTomに対して ‘As if it mattered to you’ と言うので、ようやく現実をきちんと受け止めるべき時が訪れそうだったGatsbyにまた、夢を見続けさせてしまうのである。

    6つ目はニューヨークからの帰り道にMyrtleをひき殺してしまったあとの場面だ。Tomの車でTomの家まで帰ってきたNickは、彼の家に寄らずに帰ろうとする。そこでGatsbyを見つけるのだ。彼はただ立っていて、TomがDaisyを苦しめたりはしないか、見張っていたのだ。“‘I’m just going to wait here and see if he [Tom] tries to bother her about that unpleasantness this afternoon.”(p. 151) おそらくGatsbyはDaisyがTomから逃げて、自分に助けを求めてくることを期待していたに違いない。しかしその夜、何かが起こることはなかった。翌朝、帰宅したときにNickに会い、こう報告している。“‘Nothing happened,’ he said wanly. ‘I waited, and about four o’clock she came to the window and stood there for a minute and turned out the light.’”(p. 153) この場面でDaisyは自分を必要としておらず、彼女が必要としているのはTomであることをGatsbyは痛感しているはずだ。

    このようにGatsbyは多くの場面で時の流れと、それに伴う変化を感じずにはいられなかったことがわかる。

    もう1つここで彼の時間に対する抵抗ぶりをlawnに注目して見てみたい。NickがGatsbyとDaisyを家に招待する日について話しているときのことである。“‘I want to get the grass cut,’ he said. We both looked down at the grass ? there was a sharp line where my ragged lawn ended and the darker, well-kept expanse of his began.”(p. 89) Nickのlawnはみすぼらしい状態であった。それに比べてGatsbyの庭のlawnは常に短く手入れされていたのだ。これはlawnの成長を見ることによって、時の流れを感じてしまうからだと考えられる。放っておけば伸びてしまうlawnに常に注意を払い、それを短く保つことでGatsbyは時を止めたような気になれたのだ。そしてGatsbyの死後、彼の家を見たNick の語りには、こうある。“? the grass on his lawn had grown as long as mine.”(p. 186) 死んでしまっているので何もすることが出来なかった結果だが、ここでようやくGatsbyが時間の流れを認めたように思える。意識をして注意を払わなければ、時の流れとともに変化している様子が目に入るのだ。それが自然なことなのである。

    こんなにも時の流れを感じる状況にありながら、Gatsbyが過去にこだわり続けたのはなぜか。それは彼がお子様だったからである。 “…he invented just the sort of Jay Gatsby that a seventeen year-old boy would be likely to invent, and to this conception he was faithful to the end.”(p. 105) Gatsbyは17歳の少年、James Gatzが思い描いた理想の人物であり、その姿勢を変えることはなかったのだ。私は彼自身がout of dateだったために、現在を受け入れることができなかったのだと考えた。

    過去を繰り返したくて、Daisyを愛していて、彼女が愛しているのは自分だけだと思い込んでいて、Gatsbyは彼女がひき逃げ犯であることを隠し続けていた。それゆえ殺されてしまった。最後まで自分を貫き通す彼の姿はGreatかもしれないが、かわいそうな気もする。Gatsbyが時の流れを受け入れられていたら、この物語は違った終わりを迎えたと思う。 これまで述べてきたように、過去にこだわり続けるGatsbyは誰よりも時の流れを感じていたのである。しかし彼自身が17歳の少年によって作り上げられた人物であり、変化に対応できなかったので、時の流れに抵抗するために人一倍、注意を払わなければならなかったのだ。


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