Seminar Paper 2006

Megumi Uda

First Created on January 30, 2007
Last revised on January 30, 2007

Back to: Seminar Paper Home

The Great Gatsby におけるMoneyの意義
Moneyを求めたものたち



    The Great Gatsbyは1925年に出版された。時代背景としては、アメリカは第一次大戦後であり、誰もがアメリカンドリームを信じていた。この本の作者、フィツジェラルドは小説に出てくるそれぞれのキャラクターに自分自身の経験を反映させながら、この小説を通してアメリカンドリームの儚さ、富への憧れや嫌悪感、富に群がる人々の空虚さ、孤独さ、そして貧富の差による不公平な社会風潮への批判などを表している。 ここでは、The Great Gatsbyという本を理解するのに重要な部分であるMoneyという概念について考えていきたいと思う。各キャラクターにとってお金とはどのようなものだったのか、そしてそのお金によって引き起こされる問題、そしてそれがこの作品で象徴しているものは何か、ということをGatsby, Daisy, Myrtleの三者を通じて論じようと思う。

    まずは主人公であるGatsbyから論じる。彼は毎週、夜にお金持ちや有名人、見ず知らずの人を招いて豪華絢爛たるパーティを自分の大邸宅で催す、成り上がり者である。かれは貧しく若かった頃に失った恋人Daisyを取り戻すために、今はお金持ちのTomと結婚してしまったDaisyの家から見えるところに豪邸を構えた。毎週開くパーティはいつかDaisyがふとやって来ることを願ってのことだった。”’Can’t repeat the past?’ He cried incredulously. ‘Why of course you can.’“ (p. 117) ここからもわかるように、純粋な彼は、自分がお金持ちになれば再びDaisyを取り戻せる、そして過去をも取り戻せると、アメリカンドリームを信じていた。彼にとって、MoneyはDaisyを取り戻すための手段であった。彼は自分の人生をかけて築きあげた巨万の富をすべてはDaisyのために費やしたのだ。彼は愛情よりも物質的なものでしか彼女を手に入れられないということがわかっていたのだ。ここに虚しさを感じるが、彼はDaisyを手に入れるために考えることのできた唯一のことが、まず財をなし、金持ちになることだった。

    再開を果たした二人は再び結ばれたように思えたが、DaisyはGatsbyが上流階級ではなく、ただの成り上がり者であることがわかると彼の元を去ってしまう。そしてGatsbyはDaisyの罪を被りながら、卑劣な現実の前に殺されてしまうのだった。彼は東部のいびつな世界のゆがみ、そしてMoneyによって守られている上流階級の人々の不注意さ、非人間性、自分たちで作っためちゃくちゃな状態を他の人々に片付けさせる無責任さに殺されたと言える。また、GatsbyはMyrtleをひいて殺してしまったDaisyの罪を負ったために殺されたわけだが、結局はDaisyがGatsbyを殺したということになると思う。そして彼女は富つまり金を象徴する女であるから、彼は金によって殺されてしまったともいえるのではないか。ギャッツビーの理想主義がDaisyに表わされる1920年代の唯物主義に衝突し、崩壊してしまったのだ。

    Gatsbyは、アメリカにつきまとう金や野心を象徴している。アメリカの夢は自由を望む夢であった。そして作者フィツジェラルドにとってフロンティアとはアメリカの青春であった。よってアメリカの夢はフロンティアの青春の夢と、パイオニア精神を元に、理想主義の行く手において遂げられるべきものであった。しかし、急激な経済機構の変遷によってこのフロンティアは消されていった。フロンティアは消え去り、アメリカの夢もつぶれたかに見えた。めざましい現物主義、物質主義にぶつかって、つぶれ、破滅を余儀なくされたと読み取ることもできる。

    またGatsbyは作者であるフィツジェラルド自身をも象徴している。彼がまだ売れない作家だった頃、上流階級の恋人ゼルダは結婚を拒否した。しかしその後彼の著書が売れるようになると結婚を受け入れたという。その後、豪華な生活を維持しつづけるために彼は本を書きつづけなければならなかった。フィツジェラルドの女性観、お金への感覚、虚しさをギャツビーはそのまま表している。フィツジェラルドは裕福さや優雅さに心惹かれる一方で、代々の金持ちだけが生き残ることが出来、金持ちでないものは身分の違う金持ちの女とは結婚で出来ないというアメリカ社会の風潮を批判していた。

    次にGatsbyが人生の全てをかけて愛したDaisyについて見てみる。彼女は東部に住む良家のお嬢様で、美人で魅力的である。そして彼女の一番の魅力はなんといっても彼女の声である。りんりんと響くような、男心をくすぐるような声。その声をGatsbyは”Her voice is full of money. “ (p. 126) と称している。そしてNickも

”That was it. I’d never understood before. It was full of money ? that was the inexhaustible charm that rose and fell in it, jungle of it, the cymbals’ song of it. High in a white palace the king’s daughter, the golden girl….“
と認めている。つまり、富、MoneyこそがDaisyの魅力の源であることに彼は気付いていたのだ。そして、彼の追い求めていた富をもつ美しいDaisyに魅力的を感じていた。そして現実的な彼女の性格をわかりつつも、なおもMoneyの響きに魅了されつづけるのであった。つまりMoneyというのがDaisyの特徴そのものであり、またEast Eggを象徴していると言える。

    Money がDaisyの特徴であるというのは次の二つの場面からわかる。まず、DaisyがGatsbyの邸宅へ招待され彼が色とりどりのワイシャツを取り出す。すると、彼女は突然ワイシャツの中に顔をうずめて泣き出したのである。

”Suddenly, with a strained sound, Daisy bent her head into the shirts and began to cry stormily. They’re such beautiful shirts, she sobbed, her voice muffled in the thick folds. It makes me sad because I’ve never seen such ? such beautiful shirts before.” (p. 99)
これはGatsbyがアメリカ的な巨万の富を表す、何ダースもの絹のシャツを買えるだけの男になったことに感動し、心を動かされたためではないかと考える。Daisyは彼の見せる外的なものにだけにひきつけられていて、内にあるものは見えていない。 

    もう一つの場面はTom, Daisy, Nick, Gatsby, Bakerの五人でプラザホテルに入ったときである。GatsbyとDaisyの仲に気付いたTomはGatsbyに問いただす。そして彼は自分達の中を明かす。話しの中でGatsbyが裏の商売に従事して成り上がり者になったことが暴露される。するとDaisyはGatsbyが自分の本当に頼れる、依存できるような人物ではないということに気付き、Gatsbyへの傾きかけた心を捨てTomの元へと戻るのであった。

    次にMyrtleについて考える。彼女は下層階級で、自動車整備工場を経営するWilsonの妻である。彼女は美しいわけではなかったが、肉付きのなまめかしい、活力のある女性でTomの浮気相手である。MyrtleがTomと浮気する理由は、Tomのことを愛しているからというよりはTomといる時だけつかの間の上流階級の気分を味わえるからである。彼女は上流階級の生活にあこがれており、夫のWilsonをgentleman (p. 41) だと思っていた。” I thought he was a gentle man, she said finally. I thought he knew something breeding, but he wasn’t fit to lick my shoe. (p.41) 彼女にとってMoneyは上流階級へ入るための必需品であり、結婚相手に求めるものであった。しかし結婚式で夫が晴れ着を持っておらず、誰かから借りてきたことを知り、午後中ずっとめちゃくちゃに泣いた。ここからわかるのが、Myrtle にとって洋服は階級を示すものであるということである。Moneyイコール 洋服 ともいえる。そしてふがいない夫に嫌気が差しているとき、礼服を来て、エナメルの靴を履いたTomに出会い心惹かれたのであった。このようにしてGatsby同様、MyrtleもTomといることでつかの間の上流階級の仲間入りをするというアメリカンドリームをもってしまった。そしてTomの愛人として付き合い始めるのだった。Myrtleの心がよく表れているのが、TomとNickをマンションに招いた時の場面である。

“Mrs. Wilson had changed her costume some time before, and was now attired in an elaborate afternoon dress of cream-colored chiffon, which gave out a continual rustle as she swept about the room. With the influence of the dress her personality had also undergone change. The intense vitality that had been so remarkable in the garage was converted into impressive hauteur.” (p. 36 )
このように、彼女は衣装の力でなんとか上流階級の仲間入りをしようとしている。しかしTomにとってDaisyと別れて階級の違うMyrtle と結婚する気など全くない。また、
“I like your dress, remarked Mrs. McKee, ‘I think it’s adorable.’ Mrs. Wilson rejected the compliment by raising her eyebrow in disdain. ‘It’s just a crazy old thing,’ she said. I just slip it on sometimes when I don’t care what I look like.’ ‘But it looks wonderful on you, if you know what I mean,’ pursued Mrs. McKee.” (p.37 ) 
というようにやはり不釣合いなのである。

    そしてMyrtleはアメリカンドリームを持ちつづけた結果、Gatsby同様死に至るのである。ここではがむしゃらに富を求める心は結果的に、精神的にも肉体的にも災難となるというフィツジェラルドの自分自身の経験を通した考えが現れているのではないかと思う。

    結論に入るが、GatsbyにとってMoneyとは、憧れであり、実際に勝ち取ったものであり、またDaisyを手に入れるというアメリカンドリームを達成するための手段だった。そしてDaisyはMoneyそのものの象徴であった。そしてMyrtleにとってはMoneyに溢れた生活はアメリカンドリームだった。つまり、Moneyというのは当時誰もが夢見たアメリカンドリームの象徴であり、唯物主義の象徴でもあった。しかし上記したようにアメリカのこの時代、フロンティアはすでに消滅していた。そしてアメリカンドリームを実現することは不可能だった。このことをフィツジェラルドはGatsbyの出世、野望、Daisyを手に入れるというアメリカンドリームが、自分の全てをかけ愛したDaisyの唯物主義によって敗れ去り、死に至るという物語を描くことで伝えていたのだろう。


Back to: Seminar Paper Home