Seminar Paper 2009

Motoki Chiba

First Created on January 29, 2010
Last revised on January 29, 2010

Back to: Seminar Paper Home

The Great Gatsby とMoney
金と見栄と権力と・・・

    第1次大戦後の1920年代のアメリカを舞台に、かって彼を愛してくれた豊かな家の娘Daisyとの仲を取り戻したいがために、全身全霊をかけた男Jay Gatsbyの人生を描き、そこにアメリカンドリームの姿を重ね合わせている作品である。The Great Gatsbyにおいて重要点としてあげられるのが、先生も挙げられているようにお金、女、時間の三つだ。まるでどこぞの演歌歌手の歌みたいな揃い方だが、この三つのポイントが存在しなければThe Great Gatsbyのストーリーは成り立っていくことができないと言っても過言ではないはずだ。今回選んだトピックは一つ目のお金だが、登場人物が全体的にお金持ち気質であるこのストーリーの中で、群を抜いて湯水の如くお金を使って豪遊しているGatsbyは元はと言えば一人の百姓の息子James Gats、ただの一人の男として生きていた。子供の頃は自分の日々の計画とその決意を記しており、彼の夢を叶えるためにかなりの努力家であったことがうかがえる。だが今では毎晩の如くパーティーを開き、贅の限りを尽くしている彼だったが、彼にも少なからず悩みがあるのだ。元恋人Daisyの事が頭から消し去ることができないということ。昔のように彼女との仲を取り戻したい、再び愛し合いたいというアメリカンドリームを彼は思い描き、わざわざ彼女の家の対岸に家を買って、彼は彼女がそのうち自分の催すパーティーにフラッと立ち寄ってくれるのではないかと期待しながら毎晩待ち、過ごしているのだ。
    結論からいえば彼のその夢は半ばで潰え、彼自身も息絶えてしまうのだが、まさに成功、夢の象徴ともいえるアメリカンドリームをテーマとしているこの作品では、Moneyこそがその大きな夢を叶えるのに必要不可欠なものだったのではないかと思われる。なのでこのレポートでは数多くの登場人物達の中でも特にGatsby、Tom、そしてDaisyとMoneyとの関係性の意義を他の登場人物達も織り交ぜながら考えていきたいと思う。

    まずはGatsbyとの関係性についてだ。Gatsbyはお金をDaisyの愛を取り戻すための手段であると考えている。またGatsbyにとってDaisyは、ただの一人の男James Gatsであった頃には決して知りうることのなかったであろう良家の娘であり、ただの一つも釣り合う点が見つからない。Daisyと出会うまではただただアメリカンドリームを成功させて莫大なMoneyを手に入れることを目標としてきたGatsbyだったが、彼女との出会いによって考え方が変わってしまう。

'I found out what your “drug-stores” were.' He turned to us and spoke rapidly.
'He and this Wolfshiem bought up a lot of side-street drug-stores here and in Chicago and sold grain alcohol over the counter. That's one of his little stunts. I picked him for a bootlegger the first time I saw him, and I wasn't far wrong.' (p. 140)
    と書かれているように金を手に入れるため、Daisyを惹き付けるためであれば違法な仕事であろうと手をつけている。五年前に彼女と出会い愛し合っていた彼らだったが、彼が戦争に行き、再会する今までに五年もの歳月が流れ、待ち切れなかったDaisyは大金持ちのTom Buchanansと結婚してしまう。無論お金を得る方法は他にも色々あった。そして現在、大金を得たGatsbyは「自分は今となってはDaisyと釣り合う男性になった。Tomと張り合える男になったのだ」。と勝手に思い込み、今こそ愛しいDaisyをTomから奪い取れる、五年来の恋愛を再び成就させることが出来るのだと考えたのだ。
    Gatsbyが何故これほどまでにDaisyのような女性のことを強く思い惹かれることが出来るのかは正直僕は理解しがたい。欲しいものは全て与えられ、精神的成長が作品中でまったく見られない女性。裕福さの中で、人から与えてもらう期待して自分の中での成長がまったく見られない女性にしか僕は見ることができなかった。当時の女性たちが皆そういう傾向、立場にあったということも考えられるが、Gatsbyが求めたものは彼女が象徴する自由さと奔放さ、そして豊かさを自分の人生の夢、アメリカンドリームとして追い続けていたのではないかと思った。だが実際、Daisyと再会を果たした彼だったが、moneyを持って入ればDaisyは自然と自分のもとに戻ってきてくれるはずという考えの間違えに気づいた彼は自分の思い通りに事を運ばせることが出来ず、Nickのことを巻き込むことが多かった。これは彼のアメリカンドリーム (Daisy) の崩壊を思わせる。またパーティーには彼自身が招待したというのもあるが、多くの客人が訪ねてきたにも関わらず
We straggled down quickly through the rain to the cars. Owl-eyes spoke to me by the gate.
'I couldn't get to the house,' he remarked.
'Neither could anybody else.'
'Go on!' He started. 'Why, my God! They used to go there by the hundreds.'
He took off his glasses and wiped them again, out-side and in.
'The poor son-of-a-bitch,' he said. (p. 182)
    と書かれているように最終的に彼が亡くなった時の葬式にはほとんどと言っていいほど参列者がいなかった。警官やマスコミ、野次馬しか彼の家を訪れ取り囲む者はおらず、使い方が少し違うかもしれないが、「金の切れ目が縁の切れ目」とはまさにこのことを指しているのだと思う。moneyを通してしか人との関係が持てず、彼の短い一生はまさにmoneyに縛られていたというのが当てはまるのではないだろうか。  

    次にTomとの関係性について述べていこう。物語の語り役であるNickが作品冒頭で

Her husband, among various physical accomplishments, had been one of the most powerful ends that ever played football at New Haven−a national figure in a way, one of those men who reach such an acute limited excellence at twenty-one that everything afterward savours of anti-climax. His family were enormously wealthy−even in college his freedom with money was a matter for reproach−but now he’d left Chicago and come East in a fashion that rather took your breath away: for instance, he’d brought down a string of polo ponies from Lake Forest. It was hard to realize that a man in my own generation was wealthy enough to do that. (p. 12)
    と述べているように、彼自身がスポーツの部門で名を知られていただけでなく、彼の生家は資産家で大学時代も、かなりの金遣いの荒さで非難を集めていた。更に現在でも彼と同世代の人間、もちろんNickもその一人で、「どうしてそんなに出来るだけの財産を彼が持っているのだろう、理解しがたい」。と思ってしまうであろうほど金遣いが放蕩であった。Nickはこの作品の中に登場する人物の中で数少ないmoneyに対しての意識が薄い人物なのでこう考えたのであろう。Daisyと結婚してからもその使い方は変わることはなく、その豪快な使いっぷり、moneyに対する余裕がDaisyが彼との結婚を決意させたきっかけなのではないだろうかと思う。彼は「単に俺がお前よりも強くて男らしいからといって、俺の意見が絶対だなんで思わなくてもいいんだぜ」というぐらい、自信たっぷりの態度を時折のぞかせている。若くして大金持ち、有名人としての栄華を極めた彼は何の苦労もなしにアメリカンドリームを体現させた人物であろう。またDaisyを愛する一心で彼もまたGatsbyと同じように彼女のためになら金に糸目はつけない、今の恵まれた地位を失いたくないがために自分とDaisyの身を守るためならなんでもやるという考え方であったのではないだろうか。

    だが今彼はDaisyとの仲があまり上手くいっておらず、愛人Myrtle Wilsonと密会する日々を送っている。 MyrtleはGatsbyと同じように夢半ばで車に轢かれて無残にも息絶えてしまう。彼女の夫であるMr. Wilsonを彼女はmoney, nice house, cultureの三拍子すべてそろった男だと考えて結婚したのだが実際、彼は結婚式に着るスーツすらも持っていなかった。金持ちでない彼と結婚したことに嫌気がさしている彼女としてはお金持ちと結婚すること、玉の輿に乗ることがアメリカンドリームで、その様子がTomと密会している場面で描かれている。アメリカのみならず、どこの国でも女性がお金持ちと結婚したいと思うことは普通のことなのだろう。だが派手な服を着て、まるで高い階級の人間のように振る舞っているが、細かいところで彼女自身の教養のなさ等が影響し、そういう風に見ることが出来ないのだ。彼女にとってのアメリカンドリームは関係性などではなく、本当に「money」単体が欲しいという考えであったのだろう。実際はDaisyが彼女を轢き殺したのだが、moneyを追ったが故に死んだ、夢に殺されたという言い方が正しいのではないだろうか。

    最後にDaisyとの関係性について述べたいと思う。” I looked back at my cousin, who began to ask me questions in her low, thrilling voice.” と書かれているようにNickにとってDaisyは従妹であるにも関わらず、彼は彼女のことをかなり魅力的な女性だと見ている。作品中では彼女の表情、特に声について触れることが多い。Moneyに溢れた声や、上記のthrilling voiceなど。まるで男の気を自分に惹き付け、決して忘れることができないと思わせるような刺激的な声なのだ。良家、nice girlとして生まれ育った彼女もまたMyrtleと同様にお金持ちの男性と結婚することが幸せだというアメリカンドリームを持っている。五年前にGatsbyとの恋仲にありながらも、戦争に行ってしまったGatsbyを待ちきれなかった彼女は栄華を極めた男、Tomと結婚してしまう。その時の彼女にとってはやはりお金持ちのTomのほうが魅力的に見えたのだろう。

    だが五年後、Nickの家でGatsbyとの再会を果たしたDaisyはJames Gatsから成り上がった男、Jay Gatsbyを見て、再び心が揺れているのではないだろうか。アメリカンドリームを何の苦労もなく体現した好きでもない男Tom Buchanansと、最近になってアメリカンドリームを苦労して体現した昔好きだった今でも気になる男Jay Gatsbyとの間で揺れる女の心境が ‘I won’t stand this!’ cried Daisy. ‘Oh, please let’s get out.’ ” (p. 140) で描かれている。この心境に行きつくまでに昔の恋人であったGatsbyを五年の歳月を超えて再び愛するのかと思われたDaisyだったが、彼の正体、悪行がわかるとさっさと退散してしまった。Myrtleを轢き殺したのはDaisyだと上記したが、彼女はその罪さえもGatsbyに擦り付けて、逃亡しようとする。彼女もまた自分の今の恵まれた地位を失うのならば何でもするという考えの持ち主なのであろう。せっかく手にしたアメリカンドリームを失うくらいならば、人を踏みつけてでも生活していってやるとでもいう態度が腹立たしく思えた。TomとDaisyの二人にこそ「金の亡者」という単語が相応しいのではないだろうか。

    物語はすべてNickの視点で語られてきたが、夢を追い求めながら、その性急さ故に破滅へと進んでしまう、Gatsbyの悲しさと、それを冷静に見つめ、その上で更に、豊かさの中での無責任な人々への侮蔑に至るNickの視線に強い共感を持ったのが事実だ。一人の男の果たせなかった夢を描きながらそこに至る過程で、貧しい男は金持ちの女性とは結婚できない (アメリカンドリームの崩壊) という当時の社会の理不尽さ、そして生まれた時から裕福な生活を送ってきた人達のうつろな、無責任な生き方への怒り、それらのことが特にFitzgeraldは言いたかったのではないだろうか。Moneyの持つ本当の意味、ただそれだけでは意味をなさないが、様々な条件が重なることによってmoneyの本質的な意味を見ることができるのだなと思いました。




Back to: Seminar Paper Home