Seminar Paper 2011

Satomi Aihara

First Created on February 3, 2012
Last revised on February 3, 2012

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Levinの多面性
本当の自分

    このA New Lifeという物語に登場する人物はそれぞれがユニークであり、心のなかに何かを秘めている人物が多いと思う。そんな人物達が主人公Levinの生活に大きく影響し、最終的にLevinは新しい生活を始める事になる。そんな登場人物の中でも一番多くの表情を持つであろうLevinの性格について考えてみたいと思う。

    Levinがキャスケイディアにやって来る前、彼には暗い過去しかなかった。父親は盗み癖があり、捕まって釈放されてはまた盗みをはたらく、という事を繰り返し、その上刑務所で死んでしまった。また彼の母親は父親の代わりに働いて稼ぎ、Levinを育てていたが、結局は父親が原因で気が狂って自殺してしまったのである。Levin自身も飲んでばかりで職もなく、ひどい生活を送っていた。そんなLevinは自分の過去を忘れ、新しい生活を求めて東海岸ニューヨークから西海岸にあるキャスケイディアへと大学の教師として赴任する。Levinはキャスケイディアでの初日に不吉な夢を見る。

He dreamed he had caught an enormous salmon by the tail and was hanging on for dear life but the furious fish threshing the bleeding water, broke free: “Levin, go home.” He woke in a sweat. “I can’t,” he whispered to himself. “I can’t fail again.” (p.24)
これはLevinに今後起こるであろう困難と、チャンスを意味している。Levinの再び失敗してしまったらどうしようという不安や過去を忘れて早く新しい生活に慣れたいと思う焦りなど、様々な気持ちの表れである。 Levinは慎重であり少し臆病であると思う。その事は夢を見た事だけでなく、Levinが最初にキャスケイディアを訪れ、GilleyとPaulineに会った時の会話からも感じ取る事が出来る。
“Do you play?” Gilley asked Levin.
“Play?”
“Golf.”
“Oh, no.”
They drove a while in silence.
“I hope to learn some day.” Levin said with a broken Laugh.
“Good, said Gilley.” (p.4)
これはGilleyの自宅に向かう車内で話された会話であるが、ゴルフをやるかと聞かれてLevinがやりません。とだけ答えたために沈黙になってしまい、それを気まずいと感じたLevinがいつか習いたいと言い足すのである。Levinニューヨークで暗く寂しい過去を送ってきたがために人と会話をする事に慣れていないため、Gilley夫妻と話すことに慎重になってしまっていたのだと思う。Gilleyは自分の上司でもあり今後この夫妻とは付き合いが長くなる事も分かっていたので、自分の印象を良くしようと考え過ぎてしまったのではないだろうか。

    次に、彼は少し抜けているところがあると思う。Levinが初めて講義をする日の事である。

His students were already in class but Levin wasn’t so he galloped to get there, his first hard running in years, heart whamming, throat parched, rain coattails flying in breeze. Bounding up the steps into the old wooden building he went two at a time up the inside stairs. (pp.87-88)
彼は初回にも関わらず遅刻してしまったのである。それだけではなく、講義中に学生を新入生だと思ってスピーチをしたが、実は生徒達は新入生ではなかったのである。さらには、“As if inspired, Levin glanced down at his fly and it was, as it must be, all the way open.” (p.90)とあるように生徒が自分の話しを真剣に聞いてくれていると思い込んでいたら、実はズボンのチャックを全開にしたまま教壇に立ってしまっていたために注目を浴びていただけだというのである。Levinはこのようにはりきって何か物事をしようと思った時に限って失敗してしまう事がよくあるような気がする。それは、酒場のウェイトレスであるLavemeと出会った時もそうである。二人は肉体関係を持つ事になるけれど、その間にLevinと同じくMrs. Beatyの家に下宿しているSadekに入られて洋服を持ち去られてしまう。どうしようもない二人は彼女の家に向かって長い時間歩く事になるが、着いた時にLevemeからひどい事を言われてしまうのである。
“Couldn’t we meet sometime-under better circumstances, and-”
She kicked his pants off the porch.
“No you bastard, don’t ever let me see you again in your whole goddam life. Don’t think those whiskers on your face hide that you ain’t a man.”
Levinはこんな状況にあってもまたLevemeと会おうとするが、Levemeから拒絶されショックを受けるのだった。この事に関してはLevinは抜けているだけでなく性欲がとても強い男であると思う。後に登場する自分が受け持つクラスの女生徒Nadaleeとの関係を続けることが無理だと分かった時に、またLevemeを探しに酒場に立ち寄ったのは、自分の欲望のためであるとしか考えられない。

    さらにLevinはロマンチストである。Levinはある朝地下室で壊れた椅子の上に自分の靴が置いてあるのを見て感動し、生きていることの喜びを感じる。

“I mourned them but it was a lie. I was in love with an unhappy, embittered woman who had just got rid of me. I mourned the loss of her more than I did them. I was mourned myself. I became a drunk, it was the only fate that satisfied me.” “I drank, I stank. I was filthy, skin on bone, maybe a hundred ten pounds. My eyes looked as though they had been pissed on. I saw the world in yellow light.” “I awoke under burlap bags and saw my rotting shoes on a broken chair. They were lit in dim sunlight from a shaft or window. I stared at the chair, it looked like a painting, a thing with a value of its own. I squeezed what was left of my brain to understand why this should move me so deeply, why I was crying. Then I thought, Levin, if you were dead there would be no light on your shoes in this cellar. I came to believe what I had often wanted to that life is holy. I then became a man of principle.” (pp. 201-202)
このような事を恋人に話すなんてやはり彼はロマンチストであると思う。 また、初めて西海岸へとやって来た時も、
“My God, the West, Levin thought. He imagined the pioneers in covered wagons entering this valley for the first time, and found it a moving thought. Although he had lived little in nature Levin had always loved it, and the sense of having done the right thing in leaving New York was renewed in him. He shuddered at his good fortune.” (pp. 4-5)
というように感じている。そして夜空を見上げて星を見つけると、
“Levin went outside with him and almost cried out. In the amazing night air he smelled the forest. Imagine getting this for nothing. He drew in a deep waving breath as he gazed at the stars splashed over the immense dark sky.” (p. 22)
外に出て外気を感じただけで泣きそうになってしまうだなんてさすがLevinである。 大都会からやってきたLevinにとってキャスケイディアの田舎風景は、心の癒しであったのではないだろうか。実際に私もオレゴン州で生活していた時に、ふとした瞬間夜空を見上げる事が多くあった。

    そしてLevinは理想主義であり、完璧主義であると思う。その事が伺えるのはこの場面である。 初めに理想主義についてである。 Levinは元々文系の分野を教えるつもりでキャスケイディア大学へとやって来たのであるが、実際は文系の大学ではないと知り失望した。しかしLevinは英文科が教科書として扱っているテキストの内容に不満を感じ、廃止すべきだと考えた。授業方針や学科の改革についても考えがあり、赴任してしばらくの教授が考えるような事ではない理想の教育方針を考えている。

“ In that case,” Levin said with a thick tongue, “maybe I ought to say I think English 10 is a good place to begin teaching writing. I hate to mention this, Gerald, but some of the freshmen think a paragraph is a new invention. And I’m not against grammar but I’m against? I don’t care for only grammar. For the boneheads it’s torture.”
キャスケイディア大学では学問を研究したり論文を書く教授はほとんどいないので、学問について述べる教授はほとんどいないのである。そんな教授のうちの一人である Gilleyに対してLevinはこのようにGilleyに対してはっきりと意見を述べている。初めは自分の事を採用し、身の回りの面倒まで見てくれるいい人だと、Levinにとって頼れる存在だと思っていたが、実際Gilleyは文学に対して興味はなく、自分が学科長になることに懸けていた。そしてLevinのように改革を望むのではなく、世間体や平穏無事な生活を望む現実主義であった。そのためLevinとGilleyはしばしば対立してしまうようになる。そしてLevinはしまいには学科を自分が変えようと思い、学科長選にも出馬するのである。 完璧主義だと言える点については、以下の文章から考えられる。 Levinは受け持つクラスの生徒の中にNadaleeという女生徒がいた。彼女は銀行で働いた経験があり、他の学生達と違って大人びている。LevinはそんなNadaleeに惹かれてしまい、肉体関係を持ってしまう。 そんな彼女のテストの成績にLevinはCをつけるが、Nadaleeはなぜ親密な関係になったにも関わらずCなのかと不満に思う。しかしLevinは教授としてそこは絶対に譲らなかったのである。
Now she tells me.
“I can’t do it,” Levin sighed.
“Doesn’t how close we once were mean nothing at all to you?” Nadalee asked.
“It does, but not to make me dishonest.”
She looked at him bitterly. “ Weren’t you dishonest in sleeping with me?”
“How so?”
“To your obligations?”
“Yes.”
“Then would it make you any more so to raise my grade just a teeny, to a B minus?”
“Yes.”
Her eyes brimmed. He found her a tissue but she flung it away, shot him a cold look, and left the office. (p.159)

    そしてLevinは勇敢というか度胸があると思う。 私はLevinが最も度胸を見せると思うのは女性関係においてだが、これは度胸があるというよりは自分の欲望を満たすために何でもしてしまうというLevinの悪い癖であるように思える。始めに酒場のウェィトレスであるLeverneである。彼女とは会ったばかりであり、同じ下宿先であるSadekが好意を持っていたにも関わらず肉体関係を持とうとしてしまった。そして担当クラスの生徒であるNadaleeに手を出し、また同僚であるAvisとも好意があるわけでもないのに関係を持とうとしたのである。何よりもGilleyの妻であるPaulineと不倫関係に陥ったことが一番度胸がある行動であったのではないだろうか。 そしてPaulineと不倫関係になってしまったLevinはDuffyが教師を辞めさせられた理由とDuffyとPaulineの関係を知るために誰もいない隙を狙って研究室に入って資料を探してしまうのである。

“He decided to go home and be done with temptation, but once in the hall he walked the wrong way. For safety’s sake he knocked first, softly, and listened to utter silence throughout the building. Levin’s legs were so wobbly he had to trek back to his office. He rested his head on his arms on the desk. Go home, he warmed himself. In the distance a church bell thinly tolled midnight. What’s the sin, he asked, is knowing the truth? Is it ever wrong to know? He rose from his seat at the thought and hastened down the hall non-stop into Gilley’s office, leaving the door partly open in case he had to make a quick exit.” (p.299)
やはりこれも女性関係における自分の欲望を満たすために取ってしまった大胆過ぎる行動の一つである。

    最後にLevinは責任感があると思う。 それはLevinのクラスの生徒であるAlbert O. Birdlessの盗作問題の時である、Albertが盗作をしたのは明らかなことであったが、Levinは決定的な証拠を見つけることが出来なかったので証拠探しをやめたのである。最初彼の行動は大人気ないものであったけれど、結局はAlbertを呼び出し、きちんと向き合って、一対一で話し合うのである。そして彼と話すと彼は泣き出しそうでとてもくらい表情だったので、LevinはGilleyに非難されるも彼を無罪とするのである。これはLevinの教師としての責任感ではないだろうか。 そしてこの後GilleyはLevinに言わずに彼を他のクラスに移してしまうのである。これを知ったLevinは自分の権威をないがしろにしたと怒り、Gilleyを自分の敵としてみるようになるのである。 このシーンからだけでなく、PaulineとGilleyの子を育てるという決意をしたことも私はすごいことだと思う。Levinは結婚した事があるわけではないのに、離婚暦があり、さらに他人との子供がいる女性を自分の生涯の相手として決めたのだから、普通に結婚を考える人以上に責任感が強いのではないかと思う。それだけPaulineを愛していたという事にもなるのだろうけれど…。

    Levinはこのように物語の中で色々な表情を見せる。ニューヨークにいた時には見せなかったような一面もキャスケイディアに移ってからは本当の自分を発見し、自分自身でも驚くことがあったのではないだろうか。そしてこのLevinの性格はPaulineにとても影響したのではないかと思う。 新しく家族となったLevinとPaulineそして妻子を失ったけれども以前から願っていた学科長というポストを得たGilleyがそれぞれの暗い過去を忘れ幸せなNew Lifeを歩んで欲しいと私は思う。


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