Seminar Paper 2011

Tomoka Shimamura

First Created on February 3, 2012
Last revised on February 3, 2012

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Levinの多面性
どのキャラクターよりも「人間」らしいLevin

    A New Life の主人公Levinは、物語の中で実に様々な性格を見せている。 物語の前半では主に間抜けでツイていないところや男らしくないところ、真面目なところがよく描写されているが、後半に向かうにつれ、彼のユダヤ人的な自虐や自己犠牲心の強さがよく表わされているように思う。この性質はPaulineとの関係が深まっていくごとに強まっていったのではないだろうか。過去に愛を失い大きな絶望を抱えながら、最終的に自己を犠牲にし、あれほど熱意を持っていた教師という職を捨ててまで「愛」を求めるLevin。
いつも物事をじっくりと考えあれこれ自問自答しながら、気弱になって逃げだそうとしてみたり、はたまた信念を貫こうと決意したり…彼の行動だけでなく心の内の描写をあちこち比較しながらLevinの多面性、そしてそこから感じられる「人間らしさ」について論じたいと思う。

    まず1つ目に言えるのが、教育への熱意がある、という点である。 Levinがリベラルアーツを大切にし、文法というより学生の考え方を育てたい、と教育についての信念をしっかり持っていることは物語の初めからすでにうかがえる。
まずGilleyのセリフで”Your department assignment is you’re chairman of the textbook committee - ”You’re obviously conscientious” (p. 36)とあり、Levinはまだ赴任したてにも関わらず、真面目で良心的で信頼を得たため、そんな大きな役割の依頼を受ける。 また、自分の授業のやり方が良くなかったことを認め、学ぶことを求める学生を尊重し彼らが学ぶことの手助けをしよう、と考える。“He changed to his student” “respect those who seek learning and help them learn what they must know” (pp. 273-274) そして研究室を開放し、学生に忍耐強く接するようにしている。
このように生徒への接し方や授業のやり方を素直に直す努力をし、自分に合った形で “service to others” (p. 273)を実践している。 最終的にはPaulineとの愛を貫くためにGilleyとの交渉を拒み、教師という職とこれからステップアップしていく目標を手放してしまったが、熱心であった為もったいないところだ。

    また2つ目として、Paulineから来た秘密の手紙にキスをしたり(p. 241)とさりげなくロマンチストな一面を見せる場面を挙げたい。
他には、私たちに未来はあるの?というPaulineの問いかけに“That creates the future” “Your love inspires me. It always will.” と、未来は創るものだ、君の愛は僕にいつも希望を与えてくれるんだ、と答え、Paulineを泣かせている。(pp. 239-240) また、Levinが自分を愛し続けてくれるかどうかとPaulineが不安になっている場面(p. 248)で、Levinは彼女にプレゼントを贈っているのだが、なぜイヤリングにしたかというと、以前にPaulineがLevinから物を貰いたがっていて、Levinに合う自分のイヤリングを選んでいた(p. 218)事からではないか、と想像できる。

    3つ目としては、Paulineとの気まずい関係からGilleyを避けている場面や、車で逃げている夢を見ていることなど、しばしば嫌なことや重荷から逃げたがっているシーンがあることから、Levinの気の弱さについて論じたい。
例えば、PaulineがErikとMaryを連れて久々にLevinを訪ねてきていることがわかった途端、窓の外のフェンスを見る、という場面。これは彼女をずっと避けていたため、久しぶりに彼女と会う緊張と気まずさのあまり逃げてしまおうかと一瞬考えていることを匂わせるシーンである。
そして後半では、ストレスや不安から来る直腸の病気にかかってしまう。これはPaulineとの不倫状態に対する罪の意識やGilleyとの気まずすぎる関係が原因と見られる。 気の弱いLevinは、このような大きな不安が身体に出てしまったようである。
また (p. 85) でよい雰囲気になり、せっかくLaverneはその気になっているのに、Levinは最後の最後で消極的になり、もっとよい機会があったらにしようよ…などと煮え切らない態度をとってしまう。それに対し腹を立てた彼女から“Don’t think those whiskers on your face hide that you ain’t a man?” 顔をひげで隠している、あなたは男じゃないわ!とののしられ振られてしまった、という残念なエピソードがある。下心はあるけれどいざとなると男らしさがなく、女性をエスコートするのが下手くそである、という点からも気の弱さが感じられる。だが、そんな憎めないところもLevinの良さであると思う。

    そして4つ目として、何かと自分の中で葛藤し、じっくり考えている描写が多いLevin。 物事を慎重に考えるタイプなのではないか、と私が考える理由としては以下の通りである。
例えば学部長の投票の際 “Levin had considered this course of action before but hadn’t made up his mind because he was still not entirely sold on Fabrikant.”(p. 231)と、Fablikantをよいと思いこめず、決心がつかなかったことからGilleyとFabrikantの考え方や人柄や経歴、そして最終的に成長が見込めるかどうかと信念の強さをじっくり比較している。そうして “Of these two most possible choices it seemed to Levin the better was Fabrikant” (p. 232) という結論を出している。
またDuffyとPaulineのツーショット写真の存在を知ったとき、初めは2人の関係を疑い責めていたが、実際に見てもいない写真の話を真に受けるのは…とじっくり考えるうちに、写真が恋人同士だった証拠とは言い切れない“Two and two was sometimes not two and two” 2+2=4とは限らない(p. 326) という結論に達する所からも、Levinの慎重さが読み取れる。

    そして5つ目に、彼の損な選択をしてしまう性格についてである。これは後に書く自己犠牲心ともほぼ同じだと思い、まとめて理由を挙げる。
基本的にLevinは“ツイていない男”なのだが、災難の数々の内、何かと自分にとって損な選択をすることで自ら呼んでしまっているような場面がいくつかある。例えばGilleyとLevinが口論になる場面(pp. 290-291)でLevinは“I’ll do what I have to” と反Gilleyの姿勢を強調するような言い方で自分の立場を危うくしてしまう。そして怒ったGilleyに ”Let me tell you there won’t be much of a future for you-“ この学科での君の未来はないぞ、と脅されてしまう。
そしてGilleyがPaulineの欠点をまくしたて、なぜそれでも重荷を背負うのか?という問いに“Because I can, you son of a bitch.” と答える場面(p. 360)は印象的である。無理をして強がっているようにも感じられるが、損得ではなくPaulineを受け入れる、という思い切ったLevinの決意の一言だと思う。 また、Paulineとの関係を自問自答するうちに(p. 339)と、心から彼女を愛してはいないことに気づいてしまうのだが、 “If Pauline loving him loves; Levin with no known cause not to will love her.”(p. 338)彼女を愛さない理由はない、と心からではなく理屈でPaulineの愛を受け入れようとしている。
そして極めつけは、Paulineに親権を渡してほしい、とお願いするためにGilleyの元を訪ねる場面だ。そもそも子供の扱いに慣れておらず、子供が好きといった描写はないLevin。 “Couldn’t he take one and we’d have the other?” “Suppose I said I didn’t want them?” (p. 349) などとダメ押しで言っている辺り、2人の子供を呼び寄せることに気が進まない様子であった。それに、いくらPaulineに頼まれたからといって、浮気相手であるLevinがのこのこお願いに行くなんてあまりにも気まずいと思うのだが…内心かなり弱気でありながらも、Paulineの為になんとかGilleyの元へ行ったLevinのお人好しさと自己犠牲心の強さがよく表れている場面である。

    このように結果的には損な方へと自ら向かってしまうものの、物事を慎重に冷静に考えているLevin。暗い過去や絶望と葛藤し、しょっちゅう弱気になりながら、それでも信念を貫き、「愛」を求め続けた。物語全体を通して、彼の生き方からはもっとよい人間でありたい、という自己の理想を求める心と、善の意識の強さから来る自己犠牲心を強く感じる。 Levinの多面性をこうしてまとめるにあたって、他にも挙げたい性質はいくつもある。 と言うのも、Levinというキャラクターは多面的すぎて、心の中と実際の行動との矛盾も多く、他の登場人物に比べて、はっきりとしたキャラクター性が掴めなかったのである。
だが最後まで来て、それはLevinが他のどの登場人物たちよりも現実的な「人間味」が出ているからなのではないか、と私は思った。 思ったままに自分らしく自由に生きたい、でも自分とは一体どういう人間なのだろう、としょっちゅう悩む。まぬけで周囲の笑いを誘うキャラクターでありながら、暗い過去やトラウマを持っている。人からの評価が気になる反面、自分の考えを曲げたくない。嫌なことから逃げ出してしまいたい。今は本当の愛ではないと気づいていても、愛されたいし、愛したい。そして、損だとわかっていても良い人間でありたい、と自己犠牲を払う…  まさにLevinは私たちのような矛盾だらけの多面性を持っていて、そこが不思議な親近感を感じさせるのではないだろうか、と思う。 そしてそのような、一見もやもやとしてハッキリとしないリアルな人間味こそが、Levinというキャラクターの奥深さと魅力なのではないだろうか。


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