Seminar Paper 2011

Ryohei Tanaka

First Created on February 3, 2012
Last revised on February 3, 2012

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Levinの多面性
性格分析

 「A New Life」の話で、主人公Levinは新任講師としてやってきて、他の講師との関わりやPaulineとの恋愛の中で様々な顔色を見せてきた。この話自体、一つの大学の中で起こる数々の問題や人間関係を描いたものであるが、私たちの生活のなかでも起こりうる可能性を感じるようなリアルさがある。そのようなストーリーの主人公なので私自身もLevineに共感できるところが多々あるし、実際不倫などは経験したことのないことなので斬新に感じることも多かった。Levinの立場になって考えたとき、あの場面は自分だったらこのように行動していたとか、この場面だったら自分はこうやって考えていただろうなど、照らし合わせながら読み進んでいくといろいろと発見があった。そんなLevinの性格は、普段は物静かで冷静だが、教育に関しては熱い感情を持っていて、時には大胆で情熱的な性格をしている。これらのことを話の中に出てくるLevinの言動から読み取っていくことにしよう。  

 始めに、Levinが新任講師として町にやってくる場面。PaulineとGilleyが迎えにきてくれて、車の中や家についてからの会話の中で、二人はこの地にやってきたLevinにあれやこれやと質問をしているが、Levin自身はあまり口を開かず聞き手になっている。過去のことをにおわすような会話もでてくる中、Levinはその内容にはなるべく触れないようにしている。この最初の場面からLevinの闇を抱えた、暗い過去があることを作者は意図している。この小説の最初の分で”formerly a drunkard”(p 3)とLevinが紹介されているが、二人の家に行ってすぐ、アルコールを勧められているLevinは”No, I really-“(p 7)と断ろうとしている。さらに、質問に対して一言二言返事をしているLevinを控えめな性格であると言うことができる。窓越しにGilleyと目があって気まずい雰囲気になるところからも、初めて会った人に最初から心を許すことができないところもそのような性格を裏付けるもので、自分も共感することのできる部分である。その後、不運なことから二回もパンツを汚され、履き替えているというところが書かれているが、Levinは何かと運が悪いというか、恵まれてなさがある。希望も持ってこの地にやってきたその晩にそんなことが起こると、この後良くないことが起こるのではないかとなんか恐くなってしまうものである。どことなく、悪い雰囲気を持っているし、自分の最初のLevinの印象をあまりよくなかったのを覚えている。

 Levinの性格を分析する上でPaulineとの関係は外すことはできないであろう。二人は不倫関係にあり最終的には一緒になることができ、どこかへ行ってしまう。PaulineといるときのLevinは多くの場合冷静さを失い、熱狂的になってしまう。まず、二人が初めて関係をもった森でのシーンであるが、このときは完全に冷静さを保てずにいるLevinを見ることができる。場所を移動するなどの考えは一切なく、その場で愛し合ってしまう。ここを初めて読んだときは、こんなことがあっていいのかとも思ったが、これこそLevinが情熱的な性格をだした代表的なシーンであろう。その後、関係を深めていく中でLevinが自分の過去について話す場面がある。自分のことを打ち明けて、いかに自分が愛しているかを表現しているとともに、Paulineのことを信じているからこその行動であった。Levinはあまり自分のことを他者には話したがらないが、本当に信頼している人物には心を開くことができるのだ。この気持ちは私にも当てはまるきがする。自分のことを話すことには勇気がいるし、恥ずかしかったりもする。そんなところからLevinは狭く深く人間関係を築いていく人間なのだろう。このようなタイプは、一度関係が作られるとその絆はなかなか切れないといった人間像がわかる。次にPaulineと会えなくなってからのLevinの心情を見ていくと、Levinの不安定さを感じることができる。もともと世間的には正当とされていない不倫関係ではあるが、Levinが本当に愛していて、会えなくなることのショックの大きさはかなりのものであったのだろう。さらに、追い討ちをかけるようにPaulineがDuffyと関係を持っていたのであろう写真を見せられてしまう。自分の愛した人にそのような過去があったことを知れば誰でもそのようになってしまうのかもしれない。嫉妬心や怒り、悲しみなど多くの感情が混じった表情をしている。Levinは自分の髭を変えたりして、Paulineのことを忘れて前に進もうとしている。その結果、Levinは新たな自分になることができ、学校での学生との接しあい方や、日常の生活にいたるまで生まれ変わることができた。”service to others”を率先して行うことが大切と築くこともでき、失敗してもこのように前向きに立ち向かっていく姿勢は見習うべき点である。次に、ずっと離れていたLevinとPaulineが久々にちゃんと会うことができ、お互いの愛を確認することができたシーンを見ていこう。PaulineがLevinの家の前でずっと待ち続けLevinと話をしようとしていたが、Levinは拒み続けた。やっと立ち直り、Paulineのことを忘れることができたのだが、彼女が現れたことによってまた心を揺さぶられることを嫌がったのだ。Paulineからきた手紙を一度燃やしてしまうなど、読んでいて素直に会えばいいのにと思わせるような、Levinの頑固さを感じる。さらに、一回別れた人に会うということに対する恐さもここでは表現されている。Paulineのいる下の階に下りる前に、自分の部屋で鏡をみているシーンは印象的であった。複雑な感情が入り混じっているのがよく表れている。教育の場などでは強気な一面も見えるが、ここでは多少なりと臆病になり、逃げ腰なLevinの印象を受ける。しかし、いざ二人が会うと以前と変わらず愛しあっていることを確認しあう。ここでLevinがどんなことが起きようとPaulineのことを愛すると決意する。このあとのLevinの態度などから、強い決心を感じる。一度自分の中で決めたことは曲げたくないといった、Levinの頑固な性格がここでは良い方向に働いたのであろう。そして、最終的にPaulineが妊娠している事実を知ることになる。自分と愛する人の間に子供ができたことに喜ぶ気持ちと驚きの表情が読み取れる。ここでGilleyとは別れ二人で旅立つ決断をしたことにはびっくりさせられた。まさかこんな結末になるとは。このまま二人で生きていくことは、そのときの生活に比べ確実に不安が付きまとうはずなのに、Levinのこの決断から、向こう見ずな性格や大胆な性格が見られる。もし、自分がこのような場面になったとき、同じ決断をできるとは思わない。それだけPaulineという一人の女性を愛していたのだろう。

 次にGilleyとの教育についての話し合いから、Levinの教育に対する熱心さが見える。社会に出たときに役に立つ必要な能力を身につけさせることが、この大学でするべきことだと主張するGilleyに対して、もっと精神的な面や道徳的な面、liberal artsと呼ばれる教育に重点を置くべきと主張するLevin。この二人の意見は話の中で常に対立し、学部長選挙のときなどにも影響している。相手が自分に良くしてくれている職場の先輩に対しても自分の考えを押し続けるLevinは相当頑固者であるといえるだろう。さらに、この考え方は、Levinがリアリストだということも言える。Gilleyのような実践的の方針の下、大学側に言われたとおりに行動しているほうが、もしかしたら仕事をしていく上では楽かもしれない。そのように、自己をだしすぎることで周りからあまり良い目で見られない可能性もあるし、それによって仕事はしにくくなるかもしれないにも関わらず、そのように周りに流されることなく自分の思ったことを貫きとおす性格はLevinの良い一面であると思う。一度、Levinが自分を学部長であるかのように感じた”Holy smoke, Levin thought, suppose I were head of the department?” (p 275)というシーンがあった。自分が学部長になればこの大学をもっとよくすることができるという自信があったのだ。立候補していた二人よりも自分の方が適任であると、少し自身過剰な気もするが、自分の中で想像を膨らませていたのだろう。これもLevinの教育に対する熱さからきているものである。実際、このような教師は一人ぐらいいた方がいいのかもしれない。

 最後に一人でいるときのLevinを見てみよう。印象的だった場面は、パーティーを抜け出して星を見ているところだが、このときのLevinはPaulineのことを思い出している。同時に花のにおいを嗅ぎPaulineを思い出しているLevinは、どこかロマンチックなものを感じる。自分の生活のなかで星を見て物思いにふけるなんて、なかなかできることではないだろう。ある場面では、放課後のダンスをしている学生たちを見て、過去を思い出して、感情的になっている。自分の過去と比べることで、今までの自分は何をしていたのかとLevinがやるせない気持ちになっている。このようなところから、Levinはロマンティストでかつ感情的な性格がわかる。さらに、ことがあるごとに一人で考えているシーンが書かれている。誰かに話をすることや、相談することよりも、自分で考え答え見つけることを好む性格なのだろう。

 普段は寡黙な性格をしているLevinも様々なシチュエーションによって、様々な表所を見せてきた。情熱的でリアリストであったり、大胆で向こう見ずな性格であったり、頑固なのに臆病な性格を持っていたり。それらの性格は人と関わる中でこそよく現れるものであれば、時には一人でいるときにしかださない一面があるということだ。それは現実世界にもよく当てはまることである。私はこの話からそのようなことを学べたと思う。私たちの生活に近い状況を描いているからこそそのように感じることができたのであろう。最後に、Levinというキャラクターを私はけっこう好きになることができた。不器用でなかなか自分を表現できない性格が自分とも似ているところがあるからだ。けっしてかっこいい主人公ではなかったかもしれないが、とても興味深く、もっと知りたくなるような主人公であった。そして、話も全てがハッピーエンドで締めくくられたわけではないが、今後の登場人物たちをもっと見ていたくなるような印象で読み終わることできた。


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