Seminar Paper 99

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Miki Harada

First Created on December 31, 1999
Last revised on January 17, 2000

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Adventures of Huckleberry Finnにおける黒人問題」
HOMEとしてのJim

Persons attempting to find a motive in this narrative will be prosecuted; persons attempting to find a moral in it will be banished; persons attempting to find a plot in it will be shot. BY ORDER OF THE AUTHOR (p. 6)

Adventures of Huckleberry Finn は白人の男の子Huckが暴力を振るう父親からそして社会から逃げるため、黒人Jimとともにいかだで川を下り冒険をしていく物語である。純粋な少年Huckの口調で作者自身の意見を語らせている。純粋な子供の目から見ることによって当時の社会の矛盾さを暴き、子供の口を借りる事によって過激な意見をオブラートに包む働きをしている。この Adventures of Huckleberry Finn において作者Twainが人種差別主義者であるか否かを述べる前に、まずHuckと共に冒険をした黒人男性のJimについて述べていきたい。 この黒人男性JimはHuckと共に川を下っている逃亡奴隷である。元はHuckが逃げ出してきたthe widow Douglasの妹Miss Watsonの奴隷であり、南部へ売られてしまう話 を聞いて逃げて出してきたのだ。彼には夢がある。

Jim talked out loud all the time while I was talking to myself. He was saying how the first thing he would do when he got to a free State he would go to saving up money and never spend a single cent, and when he got enough he would buy his wife, which was owned on a farm close to where Miss Watson lived; and then they would both work to buy the two children, and if their master wouldn't sell them, they'd get an Ab'litionist to go and steal them. (p. 110)

ここにあるように自由州に渡りそこでお金を貯め、妻と子供達を買い取って幸せに暮らす事だ。そのために自由州であるイリノイへ渡ろうとしている。そして彼の性格はというと愛情深く人間味にあふれている。いつもHuckが無事にいかだに戻ってくると体で愛情を表現し迎えてくれるのだ。

"Goodness gracious, is dat you, Huck? En you ain' dead - you ain' for true. Lemme look at you, chile, lemme feel o'you. No, you ain't dead! you's back agin, live en soun', jis de same ole Huck - de same ole Huck, thanks to goodness!"(p. 93)

これは霧が起こり二人を引き離した後、いかだに戻ってきたHuckに言ったJimの言葉である。 そして自分の家族に対しても同様である。

When I waked up, just at daybreak, he was setting there with his head down betwixt his knees, moaning and mourning to himself. I didn't take notice, nor let on. I knowed what it was about. He was thinking about his wife and his children, away up yonder, and he was low and homesick; because he hadn't ever been away from home before in his life; (p. 170)

遠く離れた家族を思っているのである。ホームシックにかかっているのだ。そしてこれを見ていたHuckはこう言っている。"I do believe he cared just as much for his people as white folks does for theirn. It don't seem natural, but I reckon it's so."(p. 170) 家族を思う気持ちは白人と変わりないと言っているのだ。Jimは愛情深くもあり賢くもある。それはHuckとたびたび繰り返される議論に表れている。Jim独自の考え方でHuckを困らせて負かせてしまうのだ。実際Huckもこう言っている。"Well, he was right; he was most always right; he had an uncommon level head, for a nigger."(p. 86) こうしてJimを見ていくとHuck即ち作者TwainにとってJimという黒人が白人と同等の人間であるかのように見える。しかし黒人が白人と変わりはない人間である事は認めるものの、nigger(黒ん坊)と黒人の差別用語を何回も繰り返し黒人と白人をはっきり差別している。

そこでJimがHuckにとってどのような存在であったのか述べていきたい。まずJimは父親代わりであった。本当の父親Papはアルコール中毒で暴力を振るうHuckにとって恐ろしい存在であった。それに対しJimはいつもHuckの事を気にかけ、彼なりの考えでHuckに善悪を教える存在であった。いつもHuckの行動や考え方に賛成か反対かの意見を述べていた。

Jim said he reckoned the widow was partly righr and pap was partly right; so the best way would be for us to pick out two or three things from the list and say we wouldn't borrow them any more (p. 75)

ここにあるように少しずれがあるもののJimは自分の考えにより善悪をHuckに伝えている。また無償の愛でHuckを包みこむ姿は母親代わりであったといっても良いであろう。Huckをこよなく愛し常に愛情表現をしていた。見返りを求めないその愛は母親の愛と同じである。 そしてかけがえのない友達でもあった。HuckのJimに対する感情は徐々に変わってきている。初めはMiss Watsonの奴隷に過ぎなかったが、同じ境遇である事で仲間意識が芽生えてきた。それはMrs. Judith Loftusの家から帰ってきたときのHuckの言葉から読み取れる。"Git up and hump yourself, Jim! There ain't a minute to lose. They're after us!" (p. 72) 実際に追われていたのはJimである。しかしここでHuckはus(僕たち)と言っているのだ。HuckはJimを同じ仲間であるとみなしている事が表れている。そしてJimがHuckにとってかけがえのない存在になった瞬間がある。"All right, then, I'll go to hell" (p. 223)と捕まってしまったJimを助ける為に、当時の社会でいう良心と自分の心の良心との狭間で苦しんできたHuckが自らの道を決めた場面である。

この二人の信頼関係は人種を越えたものであった事は確かである。しかしこの作品に表れているのはJimがHuckの親代わり又は友達であると共にHuck(白人男性)の守るべきもの、常に白人の手助けが必要のものであるという事だ。HuckとJimが対等になった事はない。常にJimがHuckに仕えていた。Jimは冒険をしているHuckの帰りを待つhomeだけの存在であるという事である。常にJimは家即ちいかだにいてHuckが帰ってきたら 安らぎと愛情を注ぐhomeの存在でしかないのだ。Huckにとってhomeとは自分が優位な立場であり自分に仕え愛情を注いでくれるものでなければならなかった。なぜなら自分の父親Papとの生活にもthe widow Douglasとの生活にも自分を見出せず、自分を理解し評価してくれる居場所が必要であったからだ。"Then I set down in a chair by the window and tried to think of something cheerful but it warn't no use. I felt so lonesome I most wished I was dead."(p. 16) 実際にthe widow Douglas との生活で感じていたこの恐ろしい孤独感lonesomeがなくなった。Jimとの冒険で始めて自分の居場所homeを見つける事が出来たのだ。

-and whilst I eat my supper we talked, and had a good time. I was powerful glad to get away from the feuds, and so was Jim to get away from the swamp. We said there weren't no home like a raft, after all. Other places do seem so cramped up and smothery, but a raft don't. You feel mighty free and easy and comfortable on a raft.(p. 134)

このように実際JimとHuckはいかだの上でまるで親子のようであるが、いつもJimはHuckの帰りを待っているのだけである。このような場面は幾つか見られる。それはMrs. Judith Loftusの家から逃げ帰ってきた場面や,霧が現われ二人を引き裂きそして再会した場面,Grangerford家の宿恨から逃れた場面,DukeとKingとの生活でのつかの間な二人の時間などがある。しかしそれらは全てJimがHuckのhome以上には扱われない事を示している。その上Huckが冒険に行っているときはJimについて全く触れられる事がないのだ。こうなるとJimは白人に仕える黒人奴隷の域を脱する事が出来ていないのがわかる。 しかもJimのこの冒険の目的であるJimの夢、自由は無視されている。それはまずミシシッピ川を下ってしまう事にある。"and took me up the river about three mile, in a skiff, and crossed over to the Illinois shore"(p. 36) とあるようにイリノイ州に渡るのは簡単な事なのに、わざわざ川を下らせたのだ。それから難波船に探検に行く時、HuckはJimの自由を全く考えていないことである。Jimは反対していたのに、Huckが言い張るので仕方なく折れなければならなかった。"Jim he grumbled a little, but give in."(p. 77)これは黒人が白人に従わなければならない事を示している。さらにはいかだはどんどん南下していき、霧が表れJimはオハイオ川との合流地であるCairoを過ぎ去り、自由州であるイリノイへ行く事が出来なくなってしまうのだ。それだけではなくより奴隷制の厳しい南部へと入っていってしまう。更には突然に入ってきたDukeとKingによってJimの自由は失われ再び奴隷として彼らに仕えなくてはならず、更には彼らに売り飛ばされてしまうのである。そして実際自由となったJimであるがTomの楽しみの為に拘束され、Tomの好きな様にされてしまった。このような事からJimの夢や要求が全く無視されているのがわかる。

このように見てくると、黒人であるJimはこの作品の中で多くの差別を受けているといって良い。ただ作者が言っているのは黒人の愛情深さや賢さは白人と変わらないという事だけで同じ人間である事を認めただけに過ぎないのである。黒人への人種差別や白人との優劣は否定しておらず、問題として全く扱われていないのだ。この作品 Adventures of Huckleberry Finn において、黒人の人間としての自由や欲求を無視し、黒人を白人に仕え守られる存在として描いている。従って作者Twainは黒人を人間と認めるものの、人種差別主義者であると考えられるだろう。


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