「ゼミ論作成の手引き」



このページは1998年度卒業生が在学時に作成しました。

★テーマの選び方

テーマを選ぶには、大きく分けて2つの方法があります。

1. 今まで研究したことのあるテーマを、もう一度詳しく研究してみる。

個人研究発表などで取り上げたテーマについて、余すところなく完璧に調べ上げていたでしょうか。また、そのとき質問されたことに関しては、きちんとその答えを調べてありますか。わからないことはわからないままにしてあるのではないでしょうか。このようなテーマをもう一度研究し直すと、新しいことがさらに色々とわかり、2年間のゼミ生活の集大成としては、ある程度満足のいくものに仕上がるはずです。今まで調べたこともゼミ論の中で生かせるので、新しいテーマを一から調べ始めるよりは深いところまで研究できるかもしれません。2年間を通じて1つのテーマの専門家になるのはいかがでしょうか。

2.新しいテーマに挑戦する。

今まで研究したテーマの中でこれといった発展性のあるものが見つからなかった場合、他にもっと研究したいテーマが見つかった場合などは、新しいテーマに挑戦してみるのも面白いと思います。テーマが見つかってしまえば後は簡単なのですが、何かいいテーマはないかと探しているのであれば、おすすめの方法はいくつかあります。

(1)文法の項目(受動態、仮定法、時制など)や品詞の中で、自分の興味があるものを探してみる。
このとき注意して欲しいのは、テーマを具体的に絞ることです。例えば、一言で形容詞と言っても、それについて何冊も本が書けてしまうほど、内容は幅広いので、もっと具体的に、形容詞の何について研究したいのかを明確にしましょう。そうしないと、ただ形容詞に関する記述をだらだらと引用するだけで、目的のよくわからない論文になってしまいます。

(2)ゼミのホームページに載っているような参考文献を読んでみて、その中でテーマを見つける。
参考文献を読んでみると、その中にもっと詳しく調べてみたいと思うようなテーマがあるはずです。今まではそれほど気にもせず、こういうもんだと納得していたことでも、専門書を読んでみると意外なところに疑問点が生まれたりします。テーマ選びに頭を悩ませているのなら、迷わず図書館に足を運びましょう。

(3)英文法やゼミの教科書を読み返す。
ゼミの教科書の研究発表で、自分に割り当てられたところをもう一度読んでみましょう。それほど興味はないけれど、自分の担当だから仕方がない、と調べていた人もいるでしょうが、これも1つのきっかけ、運命の出会いです。自分も気づかないうちに、案外面白いテーマについて調べていたかもしれません。また、他の人が発表したテーマについて研究しても構いません。友人とも情報を提供し合いましょう。

(4)先生にアドバイスしていただいたことを思い出す、または先生に相談する。
今まで挙げた方法は全て試したが、それでもテーマが見つからないという人は、最終手段として、先生に相談しましょう。しかし、本当に何も考えずに「先生、私のゼミ論のテーマを決めて下さい。」と言っても、先生は困ってしまいます。あらかじめ、いくつか自分で候補を挙げて、その中から先生と相談して決めるという形がベストです。また、何かのときに、先生が「これはなかなか面白いテーマだから、ゼミ論で研究するのもいいのでは」とおっしゃったことがあるかもしれません。思い出してみましょう。


以上の方法を参考にして、自分の研究テーマを探してみてください。もちろん、方法は他にも色々あるはずです。自分なりの探し方を考えてください。先生に頼りすぎず、なるべく自分の力で早めにテーマを決めましょう。


★ 論文の形式

テーマが決まったら、早速、論文作成に取りかかりましょう。

1.全体の形式

最も一般的な形式は、「表紙(タイトル) → 英文要約(Abstract) → 謝辞(Acknowledgement) → 目次 → 本文 」というもののようです。工夫して、見やすい論文にしましょう。

2.Abstract

Abstract とは学術論文の要約・概要のことです。ゼミ論には絶対に必要というわけではありませんが、卒論には必要です。簡単に言えば、「その論文にどのようなことが書かれているのか」をまとめたものであり、論文が和文のときは英文要約、論文が英文のときは和文要約にするのが基本です。

3.謝辞(Acknowledgement)

論文作成に協力してくれた人に対する感謝を述べたい場合は、「まとめ」や「結論」の部分など本文中に含めてしまうのではなく、「謝辞」"Acknowledgement" として独立させましょう。

4.目次

多くの場合、論文はいくつかの章・セクションに分けられますが、その章・セクションのタイトルを目次にまとめることが必要とされます。目次には、章・セクションのタイトルとそのページを記します。タイトルページから目次までのページ番号は Roman numerals (i, ii, iii, iv, v…) でつけられ、本文・参考文献のページ番号は Arabic numerals (1,2,3…) でつけられることが多いようです。次の例を参考にしてください。


目  次

Abstract ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ i
謝 辞  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ii
目 次  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iii

0. はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

1. 文献研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
 1.1 Bennett (1975)  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
  1.1.1 基本的な考え方  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

〜〜〜 中略 〜〜〜

3. まとめ・結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

4. おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35



★ 本文の形式

形式が整ったら、いよいよ本文です。

1. 序論と結論

 本文では、最初に「はじめに」「序論」などとして、そこにその論文のねらいや、その論文でどんなことを書くのか、どのようなきっかけでその題材を選んだのかを簡単に書き、最後には「まとめ」「結論」などで、その論文によってわかったことなどを簡単にまとめる、という形式が取られることが多いです。最後のまとめに加えて、今後の課題などをあげてもよいでしょう。

2.文体

 まず、文体は必ず一致させましょう。常体(すなわち、「だ・である調」)と敬体(すなわち、「です・ます調」)を混用せずに、どちらか一つに文末を統一させることが必要です。 論文はそもそも個人的な意見を述べたものですので、文中に「個人的には」「私見としては」という言葉を入れる必要はありませんが、自分の意見なのか、文献に書かれたほかの研究者の見解なのかをはっきり区別させる必要はあります。このことについては次項で詳しく解説します。

3.自分の意見と他の人の意見との区別

 これは、論文を書くときに最も気をつけなければならないことの一つです。著作権とも関わってくるので注意してください。他の人の見解を自分の論文内で述べるには主に3つの方法があります。

(1) 引用
引用とは、文献に書かれていることをそのまま自分の論文に使うことです。和文の場合は「 」、英文の場合は " " でその部分をくくって、本文中または脚注に (どの文献から引用したものかわかるように) 著者名と出版年、引用部分が書いてあるページ数を明記します。例文を引用した場合も同様に扱ってください。引用する部分が何行にもわたるような長い場合は「 」、" " でくくるのではなく、段落を改め、その部分をインデントさせて書きます。また、それに加えてフォントを小さくする場合もあります。本文中に記載する方法については次の例を、脚注を使う場合は、「孫引き」の項の例をそれぞれ参照してください。

例1
a) in は「内部」を感じさせる語である。「ある空間を設定しその中にある」(田中・川出 1989: 120) ということであり…
b) 時間的長さをまったく考慮に入れず「ただ単に時、または時間の関係 (time relation) にのみ意識がはたらいている」(小西 1997: 20) わけで…
例2
また、田中・川出 (1989: 137, 138) は「X と Y の空間関係において具体的なイメージを連想させにくい」、「動きも幅も感じさせない」とし、大西・マクベイ (1996: 139) は「その地点で『何が起こったのか、何をやっているのか (出来事 / 活動)』という場所以外に力点がある」としている。
例3
(40) My father's great at golf. (Wahlen 1995: 44)
(41) My mother's wonderful at tennis. (ibid.)
(42) My grandmother's super at aerobics. (ibid.)
(43) My brother's a champion at skiing. (ibid.)
(44) My grandfather's a star at bowling. (ibid.)
(45) Most people are slow at learning a new language. (ibid.: 45)
* ibid … 前に述べたのものと同様という意味。この場合はWahlen 1995を意味している。

例4
また、小西 (1997: 23) は、
時の at, in と on についても、場所のそれと似て、 at と in は長短の相違こそあれ、いずれも時なり、期間なりを明確に規定するに対し、 on は場所の on のように単に漠然と時の接触を表すのが原意である。それゆえ、on は古くはその意味で、どの時にも用いられていたのである (cf. OE on sumera [= in the summer])。ところが後にその観念が逐次稀薄になって、その用法も固定するようになった。そして、今日では at, in とともに場所のように重複せずに時のある部分のみを担当し、時の接触より、時間的期間の短く感じられるところから、一点を示す at と、ある長さを示す in との中間の部分、すなわち専ら日に限定されるようになった。
と述べている。
(2) 他の人の意見の引用
文献に書かれている言葉をそのまま使うのではなく、自分で少し言葉を変えたり要約したりして論文内に書く場合は、「 」や " " などはつけずに普通に書き、本文中または脚注にその文献の著者名と出版年を明記します。

例1
on は「接触」をイメージさせる語である (cf. 田中・川出 1989; 田中(編著)1987; 阿部 1993・1998; 大西・マクベイ 1996; Bennett 1975)。
例2
「…の点に関しては」のような意味でも用いられることは簡単に理解できる。この場合においても活動的、または技術面に目を向けていることは同じである (小西1976: 200)。
例3
(82a) は単なる場所を表しているだけなので「もの」を実際にとらえたかどうかは不明であるのに対し (田中(編著) 1987: 348)、(82b) では…

(3) 孫引き
孫引きとは、自分が読んだ文献の中で引用されていたり、その文献の中で他の人の意見として書かれていたりするものを、自分の論文の中でさらに引用することです。引用と似ていますが、この孫引きの場合は、孫引きのもととなる文献を自分では読んでいないという点で違っています。引用と同様に「 」、" " でくくり、脚注にて著者・文献名・出版年を、脚注を利用して明示します。(1)、(2) の場合は自分が読んだ文献からの引用なので、著者名と出版年をたよりに参考文献のリストからその文献を割り出すことができますが、孫引きの場合はその文献にあたっていない(つまり、参考文献リストにはあげられていない)ので、文献名も明示する必要があるのです。孫引きに利用する文献名については、それが引用されている参考文献のリストを見れば簡単に見つけられます。

例1
Bennett (1975: 113-116)は Sandhagen (1956)1 の行った in の分類をもとに分析している。
------
(脚注として)
1 Sandhagen, H. (1956) Studies on the Temporal of the Prepositions AT, ON, IN, BY, and FOR in Present-day English による。

例2
… Langacker2 の使った用語である。
------
(脚注として)
2 Langacker, R. W. (1987): Foundations of Cognitive Grammar, I, Theoretical Prerequisites などを参照のこと。

例3
Bennett は、この分類を、'calendrical unit of time' と 'non-calendrical unit of time' という点から考えている3
------
(脚注として)
3 詳しくは Leech, G. N. (1969) Towards a Semantic Description of English を参照のこと。



★参考文献

論文の最後には、論文作成時に使用した参考文献のリストを書く必要があります。著者・出版年・文献名・出版社 (ときに発行地も) を明示し、著者名をもとに順番に並べます。この並べ方についてはほかの文献の参考文献リストを参考にしていただきたいのですが、主なものには、和書と洋書に分けてそれぞれ五十音順・アルファベット順に書く形式と、和書・洋書のすべてをまとめてアルファベット順に並べる方法があります。次の例を参考にしてください。

(1) 全体の形式

阿部 一 (1993)『基本英単語の意味とイメージ』 研究社出版
--- (1998) 『ダイナミック英文法』 研究社出版
安藤 貞雄 (1993) 『続・英語教師の文法研究』(第4版) 大修館書店
Arlin, M. (1983) Children's Comprehension of Semantic Constraints on Temporal Prepositions Journal of Psycholinguistic Research 12; 1-15
Bennett, D. C. (1975) Spatial and Temporal Uses of English Prepositions
--- An Essay in Stratificational Semantics
Longman

〜〜〜 中略 〜〜〜

Ungerer, F. & H. J. Schmid (1996) An Introduction to Cognitive Linguistics Longman
和田 四郎 (1998) 「『点』としての at」 『現代英語の語法と文法』 (小西先生傘寿記念論文集編集委員会(編)); 231-239 大修館書店
Wahlen, G. (1995) Prepositions Illustrated The University of Michigan Press


(2) 共著

Leech, G. & J. Svartvik (1994) A Communicative Grammar of English (2nd edn.) Longman


(3) 編集

a) Rauh, G. (ed.) (1991) Approaches to Prepositions Narr
b) Bailey, C.-J. N. & R. W. Shuy (eds.) (1973) New Ways of Analysing Variation in English Georgetown University Press
c) 河上 誓作 (編著) (1996) 『認知言語学の基礎』 研究社出版


(4) 訳本

a) クロース, R. A. (Close, R. A.) (斎藤 俊雄 訳) (1980) 『クロース 現代英語文法』 研究社出版
b) Bolinger, D. (1977) Meaning and Form Longman (中右 実 訳 『意味と形』こびあん書房)


(5) 雑誌の中の一記事・論文集の中の一編

a) Cuyckens, H. (1984) AT --- A Typically English Preposition Papers and Studies in Cognitive Linguistics 19; 49-64
b) 衣笠 忠司 (1998) 「時を示す after, in と later」 『現代英語の語法と文法』 (小西先生傘寿記念論文集編集委員会(編)); 54-63 大修館書店



★ まとめ

以上のことを参考にしながら、皆さんの個性あふれる論文を作ってください。


よく見られる誤り

上の手引きをきちんと見ておけば問題はないのですが、形式上よく見られる間違いを挙げておきます。