Seminar Paper 2001
Noriko Fujisaki
First Created on January 9, 2001
Last revised on January 9, 2001
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「The Great GatsbyとAmerican dream」
夢の挫折
1、アメリカの夢
He wanted nothing less of Daisy than that she should go to Tom and say: "I never loved you." After she had obliterated three years with that sentence they could decide upon the more practical measures to be taken. One of them was that, after she was free, they were to go back to Louisville and be married from her house―just as if were five years ago.(p.116) この物語の中でギャッツビーは夢に生きる青年である。最初にギャッツビーが登場するのは、ディジーが住むイーストエッグの桟橋の上にかかった緑の灯火に向かって手を伸ばし、震えている場面である。その緑の灯火というのはギャッツビーの夢であるディジーを象徴するものであったのだろう。しかし、最終的にはディジーを再び手に入れることはできず、ギャッツビーは殺されてしまう。ギャッツビーは生涯最後5年、The Great Gatsbyに出てくる全ての時間を夢に捧げ、夢を追いかけたゆえ命を失ってしまったのだ。このようなギャッツビーの夢とそれをつかもうとする過程、そして挫折までを見ていくことにする。
2、ギャッツビーと夢とお金
"Who are you anyhow?" broke out Tom. "You're one of that bunch that hangs around with Meyer Wolfshiem―that much I happen to know. I've made a little investigation into your affairs―and I'll carry it further tomorrow." "You can suit yourself about that, old sport," said Gatsby steadily. "I found out what your 'drug stores' were." He turned us and spoke rapidly. "He and this Wolfshiem bought up a lot of side street drug stores here and in Chicago and sold gain alcohol over the counter. That's one of his little stunts. I pick him for a bootlegger the first time I saw him and I wasn't far wrong. "What's about it?" said Gatsby politely. (p.141) 禁酒時代の中でギャッツビーは酒を密売するなど、非合法な行為により金を儲けた。ディジーと同等の社会的身分を手に入れるため、そしてディジーの家を臨むことができるウエストエッグに大邸宅を建てるために。そして、このトムとギャッツビーのやりとりを見る中で、トムは不法行為をしているギャッツビーを非難しているが、ギャッツビーはうろたえるところがない。夢のためには手段を選ばないのだ。 ギャッツビーは毎週盛大なパーティーを開き、彼の家はものすごく大勢の客でにぎわっていたというのに、彼の葬式には、彼の父親とニックと梟の眼のような眼鏡をかけた男の3人以外には召し使いと郵便集配人しか来なかった。ギャッツビーと付き合いのあった人物は、裏商売の仲間であったり、パーティーにくる人達は皆、ギャッツビーに会うことを目的としていたのではなく、パーティーを楽しむことを目的にしていた人達だ。ギャッツビーは孤独に死んでいったのだ。このことから、ギャッツビーはお金を通じてしか人との関わりを求めない人物だったと分かる。
"I have the idea that Gatsby himself didn't beleave it would come and perhaps he no longer cared. If that was true he must have felt that he had lost the old warm world, paid high price for living too long with a single dream."(p.169) ここでギャッツビーは夢を諦めなければならないと悟っているのである。ディジーとの夢、そしてお金を追っていた5年間は終わったのだ。ギャッツビーはお金で愛を手に入れることはできなかったのである。
3、ディジーのお金に対する考え
'Suddenly with a strained sound Daisy bent her head into the shirts and began to cry stormily. "They're such beautiful shirts," she sobbed, her voice muffled in the thick folds. "It marks me sad because I've never seen such- such beautiful shirts before."'(p.98) ギャッツビーがこのような高級なシャツが買えるほど金持ちになったのを見て、ディジーは心を動かされたようだ。この場面から、ディジーが高級品に弱いことが分かるが、5年前ギャッツビーと恋仲になりながらも、戦争に行ったギャッツビーの成功を待てずに社会的地位の高いトムと結婚してしまったことからも、ディジーのお金への執着心が分かるだろう。
"She's got an indiscreet voice," I remarked. "It's full of-" I hesitated. "Her voice is full of money," he said suddenly. That was it. I'd never understood before. It was full of money-that was the jingle of it, the cymbal's song of it...High in a white palace the king's daughter. the golden girl...(p.127) ディジーの硬貨のじゃらじゃらするような声、それはディジーのお金に対する執着心を表し、そのディジーの声を魅力的とするニックもギャッツビーもお金に対して同じ考えをしているのではないか。 一時はギャッツビーがディジーの心を取り戻し、あたかも夢が叶ったかのように見えた。しかし、ニューヨークのプラザ・ホテルでギャッツビーがディジーに「トムを愛したことは決してない」と言わせようとする場面で、'"I want to speak to Daisy alone," he insisted. "She's all exited now―" "Even alone I can't say I never loved Tom," she admitted in a pitiful vice. "It won't be true."'(p.140)ギャッツビーの実現したかのように見えた夢は崩れていく。 ディジーがマートルをひき殺してしまった夜、ギャッツビーはトムがディジーに昼すぎのこと(ギャッツビーとディジーの関係について)で暴力などしないかを徹夜してディジーの家の前で見守っていた。その時のトムとディジーの様子は次のとうりである。
Daisy and Tom were sitting opposite each other at the kitchen table with a plate of cold fried chicken between them and two bottles of ale. He was talking intently across the table at her and in his earnestness his hand had fallen upon and covered her own. Once in a while she looked up at him and nodded in agreement. They weren't happy, and neither of them had touched the chicken or the ale-and yet they weren't unhappy either. There was an unmistakable air of natural intimacy about the picture and anybody would have said that they were conspiring together. (p.152) 彼らが何を話していたのかは記述されていない。しかし、その後ギャッツビーがウィルソンに殺され、ニックがトムとディジーに電話をした時、彼らが行き先も告げずに荷物を持って出かけていたことから、ディジーはトムのところへ戻る決意をしたことが分かる。ディジーは、マートルをひき殺してしまった車の持ち主であるギャッツビーに疑いがかかることは当然承知のはずである。そのギャッツビーを心配もせずにトムと出かけてしまったのだ。ディジーはギャッツビーを見殺しにしたも同然なのである。 ディジーは再びギャッビーを愛したかのように見えたが、それは5年前の青春時代の淡い恋への懐かしさとギャッツビーの成功に心惹かれただけなのではないか。ディジーはそのことに気が付き、トムとやり直すのである。
4、結論
The Great Gatsbyの登場人物の中にはお金とずっと付き合ってきて、お金というものを分かっている東部の人間はいない。お金について理解の浅い、つまりお金で愛が買えると考えている西部の人間しかいないのだ。"I see now that this has been a story of the West, after all-Tom and Gatsby, Daisy and Jordan and I, were all Westerners, and made us subtly unadaptable to Eastern life."(p.184) The Great Gatsbyはギャッツビーが夢の究極的な挫折に出遭い、不慮の死という悲劇で幕を閉じることとなる。その背景には、ギャッツビーを含め、The Great Gatsbyに登場する人物が皆、あまりにもお金に執着しすぎていた、というのがあるのではないかと思う。それは、第一次世界大戦という人間文化の腐敗を反映しているとも言えるのではないだろうか。ギャッツビーはこの戦争でディジーとの夢を深めたが、戦争によりディジーと引き裂かれた。そして、夢を実現しようと不法行為を講じて富を築いた。ディジーはギャッツビーの成功を待てずに、地位のあったトムと結婚し、多額の財産を築いた昔の恋人であるギャッツビーと再会すると、一時ギャッツビーに心が戻りそうになった。ギャッツビーもディジーもお金に執着し、お金で愛をも買うことができる、お金で夢を叶えることができる、お金で全てが手に入ると勘違いをしてしまっていたのだ。 |
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