Seminar Paper 2000

Umezawa Naoko

First Created on January 9, 2001
Last revised on January 9, 2001

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「The Great Gatsby と American Dream」
「ギャッツビーの高感度な感受性で作られたアメリカンドリームともたらされた悲劇」

             

     私達はこの小説を読んで、アメリカンドリームの始まりから、その成功、そして消えて行くまでの過程を追うことができる。
     アメリカンドリームというのは、個々の生活似よって作り出された夢であり、誰もが金、地位、名声を得るチャンスを持っていて、成功を手に入れることができることを表している。ネイティブのアメリカ人の他に多くの移民で成り立つアメリカは外部からの流入者に対して寛容性を持っている。多くの移民がアメリカ大陸に渡り、生活を一から築き始めた。これはアメリカンドリームの始まりと言える。このアメリカンドリームを志す事自体がアメリカのパワーとなって、今や世界規模で物事を動かせるような国となっている。アメリカンドリームとはアメリカのパワーの源といえる物なのだ。
     丸太小屋に住んでいた貧しい少年が大統領になったり、普通の大学生が一つのアイディアで億万長者になったり、アメリカンドリームの達成者は、大衆のヒーロー、ヒロインとしてその時代のアメリカの価値観や理想的人間像を生み出すものとなっている。

     ギャッツビーもまたアメリカンドリームに名のもとに生き、達成者となるはずだった。彼に父は“if he'd of lived he'd of been a great man. A man like Jones J Hill. He'd of helped build up the country”(p. 76) と言い、息子の成功を信じていたのだ。しかしギャッツビーには死が待っていて、彼の夢もまた共に消えていってしまうのである。なぜギャッツビーには死が訪れるはめになったのか。彼が実現しようとしたアメリカンドリームに含まれていた問題点を考えていこうと思う。
     まず一つ目の大きな問題点は、ギャッツビーは経済的繁栄と愛する人を振り向かせるということが一致し得ると信じていることである。富の中に埋もれる女を得るために富を求め、成功を求めてアメリカンドリームを達成させようとしたのが、ギャッツビーであったのだ。私は目的が何であれ、これも十分にアメリカのパワーの一部になり得たものだと考える。

"Mayer Wolfshiem? No, he is a gambler." Gatsby hesitated, then added coolly: "He is the man who fixed the World's Series back in 1919." "How did he happen to do that?" I asked after a minute. "He just saw the opportunity." "Why isn't he in jeil?" "They can't get him, old sport. He's a smart man." (p. 78)

有名なワールドシリーズの八百長事件に関わっているウルフシェイムとの交流や、ドラッグストアーを買収してエチルアルコールを売ったり、酒の密売人と噂されたり、長官に便宜を図っているから、交通違反のキップを切られるのを免れたり、極めつけは、 Gatsby's notoriety, spread about by the hundreds who had accepted his hospitality and so become authorities upon his past, had increased all summer until he fell just short of being news (p103) などから、ギャッツビーは裏の世界で財を成してきたことが明らかであるが、それも活気みなぎるアメリカのパワーとなっていて、彼の必死に生きる姿が浮かび上がってくるのである。

     しかし、富を得て成功を手にしたとしてもデイジーを得られるかどうかは分からない。もし、それを信じているならあまりにも単純な考え方である。ギャッツビーがそういう考えを持つようになったのはデイジーを通して上流階級という彼の前に立ちはだかる壁にぶつかったからである。彼は少尉時代に自分とは違う世界に住む彼女に出会い恋人となる。 "Then he kissed her. At this lips' touch she blossomed for him like a flower and the incarnation was complete. "(p. 117) この時からから、自分の手に届かないとおもっていた夢が滅びる事の無い現実となった。自分の知らない世界の神秘な存在を初めて意識したのである。彼女の声は"a deathless song" (p.), "inexhaustible charm"(p127), "full of money"(p. 127)と書かれている。何かとらえがたい現実には存在しないもののように感じる。そんな彼女が戦争が終わると同時に自分の手から滑り落ちていってしまい、消えてしまったのである。1度は自分の手の中にあった神秘の存在である。それをもう1度追い求める追求心はすごいものであり、自分の貧乏を悔やんだから富にこだわり、それがデイジーを追い求める事につながっていったのであろう。  ギャッツビーはもともと野心に燃えていてアメリカンドリームを持っていたと思う。デイジーに出会う前からである。

Rise from bed ----------------------------------------------------6.00
Dumbbell exercise and wall scaling-----------------------6.15-6.30
Study electricity, etc.-------------------------------------------7.15-8.15
Work-----------------------------------------------------------------8.30-4.30
Baseball and sports---------------------------------------------4.30-5.00
Practice elocution, poise and how to attain it-----------5.00-6.00
Study needed inventions---------------------------------------7.00-9.00

GENERAL RESOLUTION
No wasting time at Shafters or [a name, indecipherable]
No more smoking or chewing
Bath every other day
Read one improving book or magazine per week
Save $5.00 [crossed out] $3.00 per week
Be better to parents (p.181-182)

からも、希望似満ち、純粋な夢を頼りに将来の自分の姿を確認する姿が見えてくる。デイジーとの出会いを機に、彼のアメリカンドリームの形は変わったのだ。
     次に二つ目の問題であるが、ギャッツビーの中に存在するデイジーはだんだんと変化し、思いが強すぎるがゆえに、もはや生身の人間としてではなくて幻想のなかの存在となっている点である。

Gatsby and I in turn leaned down and took the small reluctant hand. Afterward he kept looking at the child with surprise. I don't think he had ever really believed in its existence before.(p. 123) He wanted nothing less of Daisy than that she should go to Tom and say: "I never loved you "(p.116)

デイジーは彼の中では出会ったころのままの18歳から変わっていないだ。夢の象徴ともいえるものに位置づいているように思う。その原因はギャッツビーの持っている、"some heightened sensitivity to the promise of life"(p.6) にある。      ニックはギャッツビーのことを"some heightened sensitivity to the promise of life"(p.6)を持っている人だとあらわしている。彼のそれがデイジーをとらえ、普通の人間では見出せないようなその才能、その強すぎる感受性によってデイジーは彼の中のすべての象徴となったのであろう。ニックは"Gatsby who presented everything for which I have an unaffected scorn"(p.6)と言っている。しかしこれに相反して、"You are worth the whole dawn bunch put together"(p.162)と叫ぶ場面もある。これもギャッツビーの持つ"some heightened sensitivity to the promise of life"(p.6)によるものである。まず、はじめの軽蔑するすべてのものを持て合わせているという文だが、例えば普通に世間一般から見られている表向きは、裏の仕事に手を染め富を築いている成金野郎という人物であり、それは事実なのであるが、これは普通の人とは違った感受性を持つギャッツビーだからこそ選ぶ手段であり、それによって出てきてしまう思想、行動であるからこそそのように思われてしまっているのだ。それは本文でも "It is what preyed on Gatsby, what foul dust floated in the wake of his dreams"(p.6)とある。そして、奴らを皆合わせたより価値があるというセリフは、ニックがギャッツビーとだんだんと接近する中で、デイジーやトムやジョーダンにみられる、金持ちでも中身がなく無責任な彼らを目の当たりにして、ある意味一番純粋な象徴に基づいて生きていて、それがあるからこそどんな手段でもアメリカンドリームを追いかけている彼の本当の心の姿に気づいたから出てきたものである。

     三つ目の問題は、ギャッツビーは全てを昔のように戻す事をのぞんでいること。そしてまた、過去を消すことができると信じている事である。彼は昔を取り戻す=デイジーを手に入れるという夢の為に、お金、地位、名声を得ようとしてきた。夢がかなうと信じてやってきた。しかし、デイジーは夢は実現されないものと認識し、ギャッツビーの存在に胸を躍らせながらも、それは幻想として演じているのだ。今でもギャッツビーのことを愛しているようなことをにおわせながらも、それは実現できないものとして演じているわけだから、

 
"Oh, you want too much !" she cried to Gatsby. "I love you now-isn't that enough? I can't help what's past." She began to sob helplessly. "I did love him once but I loved you too." (p.139-140)

と、昔に戻ることを望んでいて夢を実現させようとしているギャッツビーに対応しきれなくなるのである。そして、何一つ自分で決める事ができない、ましてや方向転換なんてとてもできないデイジーが描かれている。こんなデイジーが相手でこんな情況ではギャッツビーのロマンスは幻想でしかなく、昔を取り戻す事は到底無理だった。  "it's all wiped out forever"(p.139)とギャッツビーは言うが、デイジーは"I never loved him"(p.139)とは断言することはできない。それはうそになるからである。過去を消す事はできないのである。

       以上の3つの点をギャッツビーがアメリカンドリームを実現しようとした過程で問題となるものとあげた。3つを合わせて見てみると、悲劇の原因は彼の幻想の波長が、現実の世界のものと合っていない点にあるように思われる。しかしそれは彼に非があるとは言えない。彼の人生の希望に対する高感度の感受性を持つがゆえに生じてしまう、周りとのズレがあったからかろう。金を持っている人々に見られた無責任さや心の歪みがうずまく現実の世界である東部の中で、ギャッツビーのデイジーを思って夢を追いかける行為はある意味一番純粋なものとしてとらえられるのだ。  彼がアメリカンドリームを達成し、地位を得て過去を取り戻そうとしても、お金に埋もれ何一つ自分の意思を持つことができない無責任な女性が相手では、彼の幻想はかなうはずもなかったのだ。
     ギャッツビーが海峡をはさんで見ていた桟橋の先端にともる緑の灯は、彼の胸の中のデイジーの象徴として描かれていた。ニックが最後にその灯を"the old island here that flowered once for Dutch sailors' eyes-a fresh, green breast of the new world." (p.189)とあらわしている。オランダ人はもちろん新大陸、新世界を目指す移民であり、そこにはアメリカンドリームを追い求める姿がありありと浮かぶ。つまりギャッツビーの目指す緑の灯は、何の飾りもない俗世間のお金などとは関係のない本当のアメリカンドリームの精神をあらわしていたのだ。  


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