Seminar Paper 2004

Eriko Kato

First Created on January 27, 2005
Last revised on January 27, 2005

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LevinとGilleyの関係 両者が代表する価値観
それぞれのNew Life

1.はじめに

    この物語でLevinとGilleyは中核的な人物である。この二者は対照的である。また、大学という舞台で、学科長選挙・文学・女性関係などによって両者は激しく対立することになる。物語では周囲の登場人物を含め両者が深くかかわりあっている。また、この二者の関係が物語の上でお互いの成長や進歩と結びついていると感じた。つまりそれぞれの “A NEW LIFE” である。これから、まず二者の性格や考え方を踏まえた上でそれぞれのかかわりあい方、先ほど述べた選挙・文学や研究に対する考え方などから両者が代表する価値観について述べようと思う。そして、二者の成長や考え方の変化についても述べようと思う。

2.Levinとは、Gilleyとは

    まず、主人公であるLevinの性格や考え方について述べようと思う。Levinの過去というものがたびたび出てくる。これがLevinの現在の姿を作る理由でありいつも過去の影に悩まされている。この物語の題名である “ A NEW LIFE” というのも暗い過去から抜け出し新しい生活を送ろうとする主人公の物語とも言える。“S. Levin, formerly a drunkard・・・” (p. 1) とあるが、この部分は冒頭最初の描写であるため、非常にこの印象が強く残る。また、ひげを生やしている。これはユダヤ人であることを示していると同時に本当の自分を隠しているということも意味している。Eachesterについたとき疲れきっていて、孤独であるとあるが、これは長旅で一人だからという理由ではなく本人自身の特徴や過去をあらわしている。

     また、Levinは物語でよく失敗をする。このことを次のように表されている。

He was as a man inadequate, in the sense of being powerless to achieve the most meager happiness. He had been left far behind by Purpose - these chances for self-fulfillment that spring up around the man who is not fortune’s fool. Whatever stayed into Levin’s orbit wrecked it. He could not make happen to him what happened to all but the poor with sooner or later, some sense of accomplishment ? however slow if visible. (p. 265)
つまり、自分が判断したことにより自らを悪い方向へ持っていってしまうということである。この性格によりLevinは数多くの失敗をし、後悔することになる。 次にGilleyの性格や考え方について述べようと思う。まず外見は次のとおりである。最初Levinと出会ったとき、ゴルフをする服装をしている。40才すぎの背の高い精力的な髪がふさふさした赤毛の男である。第一印象は親しみやすい声でLevinに話し掛け顔いっぱいの笑みを見せるなど社交的で親しみやすい。Paulineは次のようにGilleyの性格を説明している。
Through the years I’ve known him he’s substituted a series of minor gratifications for serious substantial ones. He’s partly affected by what he thinks people expect of him, and partly he’s react as he has because I‘ve urged the opposite. (p. 189)

    また、ゴルフ、釣り、スポーツ見学、写真など多趣味で活動的のためじっとしていられない。Paulineの話では、昔はPMLAなどに論文を載せたりしていたが、今では論文を書かなくなった。外のことに興味がむくため、文学に興味がなくなってきている。また、Gilleyは社交性のよさもあってか世間体を気にするところがある。

    このように、性格からいっても両者はタイプが違うといえる。例えばLevinはゴルフも釣りもやらない無趣味な人物であるのに対し、Gilleyは多くの趣味を持つ。(そのおかげでGilleyは他の人から評判がいいという利点になる。) また、Levinは理想主義的あるいは精神に重点を置くのに対し、Gilleyは理論的、現実的に物事を考え重点を置いているといえる。この性格の違いが価値観の違いとなり、両者の関係に大きく影響する。

3.LevinとGilleyはお互いのことをどう思っているか 

    次に両者の関係をPaulineのことを絡めて述べていこうと思う。

    Levinは新しい人生のきっかけをつくってくれたGilleyに対して感謝するとともに “Levin out of the corner of his eye, watched the man watching him.” (p. 7) や “Gilley looks restless, he thought. I’d better give him back pants and find some place to sleep. ” (p. 11) と気を使っている。しかし、Gilleyが自分のクラスの生徒を移動させたりすることにより不信感が生まれてくる。 “The man is my enemy, Levin thought.” (p. 178) と考えるようになるのは自分の、教師としての実力がないと思われてしまうのではないかと新生活に悪影響がでると思い対立するようになる。Paulineとの関係ができてからは未来を与えてくれたのに裏切ったという罪悪感とばれたら将来は真っ暗という不安を持ち接する。最後にGilleyに大学の教師を辞めろといわれてそれを受け入れたのは教師としての生活が終わる一方でPaulineとの新しい生活が始まるということがあるからであろう。

    GilleyにとってもLevinは学科長という新しい一歩のための大事な一票である。初めてLevinを見たときは警戒し、ひげについて注意したり周りに悪影響を与えないように個室を用意したりしている。また、この個室はLevinを特別待遇し、良い印象を持ってもらおうという意図もある。何回か口論になっても性格上そうであるのかそれとも選挙のためかしばらく経つといつもの陽気な態度で話しかける。しかし、その甲斐もなく選挙、PaulineということでLevinから裏切られ、嫌悪感を抱く。それが逆にGilleyにプラスに転じ結果として新たな生活をLevinによってもたらされたということがいえる。

4.学科長選挙について

    学科長選挙は先ほど述べた性格やこれから述べる文学や授業などについてお互いがどのように思い、何を大事に考えているのかということが顕著にあらわれている。最初はGilley対Fabrikantの戦いになるため、Fabrikantのことを交えながら述べようと思う。

    Gilleyは性格上、社交的でありBucketもGilleyの方が良い大学の事務官になるだろうと述べている。Levinに対しても自分の味方にするためにあらゆる努力をし、好感を持ってもらうように接している。考え方の違いで気まずい空気になると、 “I like suggestions given in a friendly sprit by people who are aware of what the practical problems are and how long it took to build Rome.”(p. 104)と、笑顔でフォローする。そして間接的にLevinからの支持を望んでいることをアピールする。Levinを採用したのも選挙で自分の味方につくように独断で決定したことである。

    一方Fabrikantはあまり対人関係が得意ではないタイプである。しかし、文学には熱心で “I’d throw out The Elements.”(p. 111)という点でLevinと考えが一致する。Bucketは、Fabrikantは文学においてレベルをあげることができると考えている。

    このように上記のように、外交的で文学よりも評判をとるGilleyか内向的で周りよりも文学をとるFabrikantかというようにここでも対照的である。最初Levinはものの考え方ではFabrikantのほうが好きだが人間としてはGilleyも好きであるためどちらがふさわしいのか決められない。しかし、GilleyがLevinを採用したのが選挙のためということを知り落胆する。このころから次第にGilleyへの信頼が失われてきているように思われる。そして “Ten Indians”の問題からFabrikantを支持することになる。しかし、この裏側には検閲制度を取り上げたいがPaulineのことがあるため自分ではいえない。そのためFabrikantを支持し利用しようと考えたのである。

    次第にFabrikantに対しても不信感が出てきて自分が立候補することになる。これはFabrikantには任せられないという気持ちと “That smacks of sickening pride.” (p. 298)つまりゆがんだ自尊心からである。自分で新しい生活を切り開こうとしたのである。 しかし、選挙という点ではLevinは自らの過ちで失敗し、Gilleyが新たな生活の学科長に決定されることになる。

5.文学・授業に対する態度

    舞台が大学で両者とも教師という立場にあるため、文学や授業に対する価値観の違いがいくつかの場面で登場する。この背景にはそれぞれの性格が強く影響していると考えられる。これから、Nadaleeの成績, Albert. O. Birdless, “Ten Indians” の例から二者の価値観の違いについて述べようと思う。

    NadaleeとはLevinの生徒であり、関係を持った女性であるLevinはほかの学生には厳しく、Nadaleeだけに甘くはできないと、私情とは関係なく公平な立場でいるということを言っている。しかしその後この結論に悩み間違いに気づき訂正する。これは、関係がばれたとき自分の職が失われてしまうのではないかという恐怖からきたものであると考えられる。つまり、自分のNew Lifeについて脅かされると冷静でいられなくなる。Gilleyとの対立はこれからである。ほかに一人成績を下げる生徒がいた。Levinは “I’m sorry , Gerald, but a mistake is a mistake.” (p. 161)という態度なのに対し、Gilleyは評価を下げるのはよくない。学生にも学部にも迷惑がかかるという見解を示している。Gilleyは世間の評判を気にするため多少のことには目をつむるという考えであるということがわかる。

    Albertのときにも両者の意見は両極端である。Levinは証拠をつかめず、フラフラになっているAlbertを見て疑うことをやめる。つまり、 “You can’t indict without evidence, and you can’t indict in perpetuity.” (p. 177)という意見である。それに対し、Gilleyは “He should have been tracked down and exposed.”(p. 176)という強気な態度である。ここまで言うのはFairchildが盗作に関して熱心に取り組んでいるためであると思われる。これだけだとGilleyだけが他人の評判を気にしているように思えるがLevinもそうである。Albertの事件のとき、一人で証拠をつかもうとしたのは、もし自分が見つけられず疑いをやめてAvisやGilleyが発見してしまったら自分に落ち度があったことになるかもしれないと考えたとも考えられる。

    “ Ten Indians”について抗議があったときの両者の見解は、文学的、理想主義的な考えと現実的、実際的な考えの対立である。Levinはあの話に悪いところはない、父親が文学・研究について何も知らないからだ、というのに対しGilleyは選集からはずすべきであるとか町の人々は発言する権利があるという態度である。また、Levinは先ほど述べたように父親やそのようなことを言う人は大学にくる資格はないと、文学を知らない人には何も言われたくないというようなやや見下した言い方であるが、Gilleyは法律でこの大学に入る資格があるとか自分たちの繁栄のためにはそうするべきという考えである。このようにLevinは自分自身の理想や信念があり、それを通そうとする(自分の考え中心)が、Gilleyは現実的には周りの人からの協力や理解が必要と考え周囲の人の意見を通そうとしている(他人の意見中心)。また、このころ、LevinはPaulineと関係を持ち始めるためGilleyにあまり強くいえなくなり、一方Gilleyも選挙が近づいていることから “I think we value the same things.” (p. 228)とLevinは味方であるというように文学以外の要素も複雑に絡み合ってくる。

6.最後に

    以上のようにLevinとGilleyはほぼ正反対の性格や価値観を持っており、幾度となく対立をしてきた。しかし、この両者には一つの共通したことが言える。それはNew Lifeである。Levinは選挙で落選し、職を手放さなければならなくなるが、Paulineとの新しい生活が始まろうとしている。Levinにおいては自分では結局自分の手で失敗をくりかえしてしまう。選挙や失業も半ば自分の判断ミスともいえる。そんなLevinに新しい生活を与えてくれたのはまぎれもないGilleyである。大学の講師として採用し、結果的にPaulineを渡すことで新たな生活のきっかけを与えたことになる。Gilleyは選挙に勝つことができたが、Paulineの事件による同情などでLevinと関係する。また、 “Got your picture!” (p. 367) からもわかるようにLevinが訴えていたような改革を始めようとしている。Paulineとわかれたことによってまた新たな生活が始まるかもしれない。このようにお互い全く正反対の性格でありながら影響しあい、New Lifeのきっかけを与え歩んでいるといえる。

    参考文献 『バーナード・マラマッド研究』 佐渡谷重信編 (1987年 泰文堂)


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