Seminar Paper 2004
Yuko Kokubun
First Created on January 27, 2005
Last revised on January 27, 2005
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Levinの多面性
--幸せの形--
この物語を読んでいない人に主人公の性格はと聞かれたとしよう。簡潔に彼の主人公の性格を説明できる人は何人いるのであろう。おそらく私は出来ない。理由は二つある。一つは彼の性格を表すことの出来る形容詞がたくさんあるということである。そして二つ目はこの物語の中で彼の性格を導き出すための出来事に対して人それぞれ捉え方が違うという点である。これから彼の性格に関係する部分を引用しつつ、そこから読み取れることや私の意見を交え最終的にはこの物語のテーマをそこから見つけていきたいと思う。 Levinの性格キーワード@はドジだ。二つ本文から例を挙げる。“As if inspired, Levin glanced down at his fly and it was, as it must be, all the way open.”(p. 90)“Leaving Humanities Hall late Friday afternoon, the instructor skidded on a wet leaf on the porch..”(p. 124) 他にもLevinのドジっぷりを表す箇所はいくつもあるが上記の二つは私にとって特に印象深いものだ。前者のほうの状況は最初の授業時に生徒が自分の話を真剣に聞いてくれていると思ったら実は自分のズボンのチャック全開だったという話、後者は気分の落ち込みが自然に出会うことでやってやろうという気持ちが出た矢先に研究室を出たときに足を滑らせてこけてしまったという話である。しかもこの二つのドジには共通していることがある。Levinが理想やそれに近いものの為にやる気を出したときに起きているのだ。ドジである。それはしかしなんとも憎めないドジではないだろうか。私は思わずくすっと笑ってしまうようなドジであると思う。後者の話で、Levinはこの出来事の一部始終がまるで一年も経ったような気がすると言っている。なんと可愛らしい感想。ここから分かることは、ドジと言っても決して悪い意味は含まれていないということだ。誰だってこけるときはこけ、チャック全開なことだって経験はあるだろうし。 性格キーワードAは夢だ。Levinには夢がある。“I left New York on my own accord- (中略) seeking, you might say, my manifest destiny.”(p. 108)この夢のために慎重になっていることが読み取れる箇所がある。“The instructor was thinking of going to Gilley to make it clear to him that he wasn’t committing himself to anyone for head of department until he knew more than he did about both candidates.”(p. 107)ここでは、科長を争う二人についてあまり知らないうちにどっちの側につくと決めることはやめようという場面である。なぜならここで軽はずみな気持ちでこっちの側につくと言ってしまって、後々これが原因で自分の夢を諦めざることになっては困るという気持ちがあるからであろう。もう一つ例を挙げると“Whatever’s happening here, he thought, I’d better not get involved. ”(p. 119)同僚のBucketから今回科長を争う二人の関係を聞いて自分はそんな二人のようにややこしい関係にならず、ここで自分の夢をかなえるために頑張るんだという気持ちが感じられる。この二つの例から新たな性格キーワード、慎重ということも考えられる。夢が大きいから、真剣だからこれほど慎重になれるのではないだろうか。夢が大きいことはいいことだ。夢とは直接関係しないが、彼の慎重な性格が表れている場面がある。昔この大学を辞めさせられたDuffyのことをたくさん聞いている所をみても、自分はそうはなりたくないという気持ちが感じられる。 続いてのキーワードBは短気(子供っぽい、思いつきで行動してしまう)ということだ。 Levinの担当の生徒に盗作の疑いのある生徒が現れた。はじめはそこまで必死になって彼 の罪を実証しようとはしなかったが生徒のある一言で彼の態度は豹変する。その一言とは “There are a lot of other guys who don’t like your class.”(p. 173)この言葉を聞いてから のLevinの態度はこう変わる。 “He extended his effort , despite papers to grade and his own reading piling up; giving every spare minute to the hunt, and some not so spare, devouring volumes of up to fifteen years ago. He read with murderous intent, to ensnare and expunge Albert O.Birdless. Levin saw himself as a man-eating shark(中略)”(p. 174)この性格について関係するもう一つの彼の行動を見てみよう。“When Levin arrived home、he snipped off his beard with scissors and shaved the rest.”(p. 246)あんなに剃る ことを拒んでいた髭をあっさり剃ってしまうのだ。この行動の原因となるのはここでも又 自分の担当していた生徒の会話なのである。そして、結局この行動の両者とも後悔して終 わる。ここからはキーワード@のドジにも少なからず関連してはいないだろうか。 キーワードCは悪である。Levinには泥棒だった父親を受け継いでしまった部分がある。 そのことは“Total disgrace as a thief, his father’s fate, not unexpected.”(p. 300)“Levin was often reminded he was a chip off his father’s block.”(p,307)から読み取れる。次に実際にLevinがやってしまったことを挙げる。 “Levin entered, plucked the picture out of the window, folded it once, and slipped into his pocket.”(p.236)しかし、一つ目の例としてあげたも のは好きな女性の写真を思わず盗んでしまったというもので憎めない行動ではないだろう か。二つ目は結局目当てのものは無かったというおちでここでも又ドジというか、ついて いないLevinが描かれている気がする。三つ目の行動は確かにいけないことであるが、も し自分のことが悪く書かれている書類を見つけてしまったら証拠だといって盗んでしまい たくなる気持ちだって分からなくもないことではないだろうか。 続いてのキーワードDはロマンチストである。この物語にはたくさんの自然の描写が出てくる。例えばニューヨークを離れて西部に来てすぐに、 “My God, the West, Levin thought. He imagined the pioneers in covered wagons entering this valley for the first time, and found it a moving thought. Although he had lived little in nature Levin had always loved it, and the sense of having done the right thing in leaving New York was renewd in him He shuddered at his good fortune.” (pp. 4-5)と感じている。 “Levin got up and dressed. He pulled on rubbers but omitted the umbrella. Going out the back way, he walked along wet streets, sunlight glistening on the branches of black-trunked trees, to where the houses ended and he could see the sunset over the fields. The sun had sunk behind the mountains but the sky flamed rose. Clouds in surprising shapes and colors floated over his head.One looked like a fat red salmon. Another was a purple flower.One was a golden-breasted torso out of Rubens. His thirst was gone; everything was wet, trees, puddle roads, the grassy Evening earth. His misery had exhaled itself. He was once more the improved Levin. ”(p. 165)後者は昔と同じ悲しみと風邪とに苦しむLevinが自然に触れることで気持ちを新たにするという場面である。自然に触れることで気分を変えることの出来るLevinはロマンチストでイカシた奴ではないだろうか。 続いてのキーワードEとなるのは弱さである。Levinはちょっと臆病な部分を持っているようだ。その弱さが表れている部分は、 “I’ll die, he muttered after twenty minutes of struggling to free the wheel. Not one car had come by. He pictured himself frozen to death in the Hudson during the night. In the morning they would haul off a stiff corpse; he had read of these things in the paper.”(p. 147)たった二十分間溝から抜け出そうと頑張って駄目だっただけで「死のう」とまで思ってしまうとは少し弱すぎはしないだろうか。少しついてない彼の性格が表れている気がしないでもないが・・・。もう一箇所は、 “The ideal got no farther than inside of his head. Although thoughts of “making things better“ continued to arrive by inspiration, at Cascadia College he restrained them....And if not abysmally timid, not terribly courageous. Too often in the midest of discussions with those who found his liberalism distasteful, Levin ? as though his nervous system voted conservative ? broke into hot sweat and his knees softened; lockjaw set in.“(p. 229)言いたいことはたくさんあるのにいざとなると言えないというこの場面にLevinの弱さが表れているいると思う。他人の反応を慎重になっているとも言えなくはないが。 他にも寂しがりな部分、調子に乗りやすい部分、可哀想に思えてしまう部分などあるが私が思う主たるLevinの性格は上記のものである。授業中にやったゼミ内科長選挙からは彼の人気は低いように思われた。しかし、こう見てみると私にはLevinはごく普通の性格に思える。夢があってちょっとエッチな部分もあり、時に落ち込み又時にはやる気を起こす、そして少し悪の部分も持ち合わせてはいるが。こんなLevinであるが結局は幾多の試練を乗り越え幸せを掴むのだ。しかしその幸せは不倫を超えて掴んだものであり、この結末に疑問を感じる人もいるだろが周りを見ても分かるように全てが全てうまくいっている人など少ないのではないだろうか。Levinにとっての幸せは不倫から得たものであり、私たち他人から見たら認められないかもしれないこれが彼の幸せの形なのである。人それぞれ幸せになるための過程や最終的に得られる幸せの形は全く違うものである。その形が他人の目に映ると多少崩れている場合もあるかもしれない。しかし、形はどうであれその人本人が幸せだといえることが大切でありそれこそが本当の幸せなのである。そのことをMalamudは読者に伝えたかったのではないかと私は思った。 |
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