Seminar Paper 2007
Asami Wada
First Created on January 29, 2008
Last revised on February 2, 2008
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The Color Purple におけるジェンダー問題
All womens not alike
The Color Purple という作品の中でジェンダー問題はとても強いメッセージを提示されている。それぞれの登場人物の持ったジェンダー観が様々に影響しあい、変化していっている。特に主人公のセリーのジェンダー観は大きく変化していったと言える。今回はセリーのジェンダー観の変化がどのような影響によってもたらされたのかを考えていきたい。 まず、初めにセリーが元々持っていたジェンダー観について考えていきたい。彼女は自身が女性であることをどのように受け止め、どうあるべきだと考えていたのであろうか。それが分かるのはセリーとセリーの父親、Mr.___との関係からである。セリーがMr.___のところに嫁ぐまで、彼女に最も強い影響を与えたのは父親であろう。彼は出産直後の弱った妻にセックスを迫り、妻がさせないことが分かると娘であるセリーを犯すという男だ。女性を尊重するなんて考えは毛頭ない。セリーは彼の実の娘ではない。血の繋がりのないセリーに彼が愛情をそそぐことはなかった。妻の死後、彼が結婚したのはセリーと同じぐらいの年の女の子だ。彼はその女の子と一日中セックスをしていた。しかしそれも新しい妻を愛していたからではない。“I got a fresh one in there myself and she sick all the time. He spit, over the railing. The children git on her nerve, she not much of a cook. And she big already. ”(p. 8)とあるように、妊娠した女はもう用はないと言わんばかりである。彼にとって女はセックスのために必要な対象であり、それが一番重要なことだと考えていることが分かる。また彼は新しい妻以外にも女をつくった。“but he got so many of us. All needing somethin.”(p. 4)とあるように彼の女になったのはみんな一人では生きていけない女達であった。このようなことからの影響を受け、セリーは男が身勝手に生きること、女が生きていくには男の身勝手に耐えて男と一緒にいるしかないのだと考えるようになった。またセリーはMr.___のところに嫁いでからもその考えを持っている。Mr.___に叩かれても何も感じないと思うようにして、日々の生活を続けるために様々な苦しみを耐え続ける。 Don’t let them run over you, Nettie say.You got to let them know who got the upper hand.ここではMr.___の子供たちにこき使われているセリーに妹のネッティーが戦わなくてはだめだと忠告している。しかしセリーは戦い方を知らず、知っているのは日々を生き抜いていく方法だけだと言っている。この段階でセリーは男に立ち向かうということができなかったのである。また生きていくためには苦痛に耐えることが一番だと考えていた。 Women work, he say.これはMr.___の息子のハーポが言う台詞である。Mr.___やセリーの父親と同じような考えを持っていることが分かる。 You got to fight them, Celie, she say. I can’t do it for you. You got to fight them for yourself.ここでセリーはMr.___の妹のケイトから以前にネッティーに言われたのと同じようなことを言われている。しかし彼女の反応は以前と少し変わっている。ネッティーがMr.___のもとから逃げた結果、ネッティーは死んでしまったのだとセリーは思っていたからである。そのことにより、とにかく生きるためには戦うのではなくただこの現状を続けるのが一番だと確信したのだ。 しかしセリーに変化が訪れる。ソフィアとの出会いである。ソフィアはハーポの妻となった女で、たくましく男にも歯向かえる強さを持った女性であった。 I like Sofia, but she don’t act like me at all. If she talking when Harpo and Mr.____ come in the room, she keep right on. If they ast her where something at, she say she don’t know. Keep talking.(pp. 35-36)とあるようにソフィアはセリーとは全く違うタイプの女性だった。ソフィアの態度はハーポもMr.___も気に入らなかった。そしてどうすればセリーのように夫の言うことを聞くようになるのかハーポに尋ねられ、セリーはソフィアを叩くように言った。そのことに対してセリーは後に I say it cause I’m a fool, I say. I say it cause I’m jealous of you. I say it cause you do what I can’t.と言っている。ソフィアによって男性に歯向かう女性がいることを知り、それをうらやましいと思うようになったのである。これはセリーにとって大きな変化だ。彼女はそれまで生きていくためには歯向かわず耐えるのが一番いいと考えていた。しかしソフィアがハーポを殴り返したことはセリーの中の考えを変えるほどの威力を持ったものだったのだ。ソフィアのことを“Some women can’t be beat, I say. Sofia one of them.”(p. 63) と言うなど、女性の中には自分とは違う女性がいるし、男性よりも強い女性がいることを理解しだしたのだ。しかしハーポとソフィアの関係はソフィアがたくましい女性であるということだけが原因で出来上がっているという訳でもないようだ。 He seem so much to love it. To tell the truth, he love that part of housekeeping a heap more ‘en me. I rather be out in the fields or fooling with the animals. Even chopping wood. But he love cooking and cleaning and doing little thing round the house. (p. 59)ここではソフィアがハーポのことを自分よりも家事をするのが好きなのだと言っている。一方、自分のことは畑で働くのや動物と遊ぶのが好きだと言っている。ソフィアはこれまでの言動からも分かるようにたくましく、一般的に男性の役割である外の仕事や力仕事をするのが好きだと言っている。そしてハーポはこれまでソフィアに夫である自分の言うことの聞く妻になってもらいたいと考え、Mr.____と同じように女は黙って言うことを聞いていればいいという考えの男性だと思われていた。しかし実際は家事をするのが好きで家の中の細かい仕事が好きだと言うのだ。つまりハーポには女性的な部分があるということになる。しかし今までなぜそれが表に出てこなかったのだろうか。ソフィアはこう言っている。“I bet he wanted to, she said. It seem so natural to him. But Mr.______ . You kow how he is. ”(p. 60) つまりハーポこれまでも家事などをしたかったのだろうがMr.____がそうさせなかったのだろうと言うのだ。ハーポはMr.____の思う男性像から抜け出すことができなかったのである。そのためにソフィアを叩き、Mr.____とセリーのようにならなくてはと考えたのである。このことを知り、セリーは男性の中にも女性的な部分を持った男性がいるのだということを知った。そして一般的に考えられる男性とのギャップを無理に埋めようとすることが無意味なことであると考え出すのである。つまり個人の性質をひとつのジェンダーに押しはめることの無意味さを知ったのだ。 またセリーに大きな影響を与えた者としてシャグ・アヴェリがあげられる。シャグはMr.___の恋人だ。セックスをこよなく愛し、人々にふしだらな女と言われている。しかし自分の好きなことをするという信念を貫き、強く自由に生きる女性だ。Mr.___は彼女の前で本来の自分を出すことができるようだ。彼女は女性にはそれぞれの個性があるということを知っている。“All womens not alike, Tobias, she say.”(p. 57) これはMr.___の兄のトビアスに向かって言った言葉だ。この言葉からシャグが女性に対しての多様性を理解していることが分かる。またシャグもソフィアと同様に男性の言うことを黙って聞いているような女性ではない。そのことをセリーもわかっている。 Do Shug Avery mind Mr.______? I ast. She the woman he wanted to marry. She call him Albert, tell him his drawers stink in a minute. Little as he is, when she git her weight back she can sit on him if he try to bother her. (p. 63)と言っているようにセリーはMr.___が結婚したかったシャグはMr.___のことを尻にひくような女性だと分かっているのだ。 またシャグはセリーが自分の足で立つことができるように多くの手助けをする。そのひとつがセリーにズボン作りのきっかけを与えたことだ。シャグはセリーがMr.____のことを殺したいと考えている時に気を紛らわすためにズボン作りを提案した。ここで考えるべきなのはなぜズボンなのかということだ。セリーは “What I need pants for? I say. I ain’t no man.”(p. 146) と言っている。ズボンは男性がはくものだとセリーは考えているのだ。しかしそれに対してシャグは “You do all the work around here. It’s a scandless, the way you look out there plowing in a dress. How you keep from falling over it or getting the plow caught in it is beyond me.”(pp. 146-147) と言っている。仕事は全部セリーがしているのだからセリーがパンツをはいてもいいじゃないかと言っている。ズボンは男性用の洋服と考えるのが当たり前だった時代にもかかわらずシャグは男性ではないからといって女性がズボンをはけないという考えを全く持っていないのである。男性だから、女性だからではなく、仕事をする人が仕事をしやすい格好をすればいいという考えなのである。つまりジェンダーにこだわることなく個人の好きなように生きればいいという考えなのだ。またこの場面ではMr.____がシャグのドレスを着たことがあったことや、彼はシャグがズボンをはくのが好きだったという事実がわかる。ここからMr.____はシャグと愛し合っていたころは男っぽいシャグのことが好きだったということが分かる。Mr.____ はハーポと同様に彼自身のなかに女性的な部分を持った男性なのかもしれないと推測することができる。 またシャグはセリーの神に対する考えも変えることとなる。“The God I been praying and writing to is a man. And act just like all the other mens I know. Trifling, forgitful and lowdown.”(p. 192) とあるようにセリーは神は男だと考えるようになっていた。しかしシャグは“Got ain’t a he or she, but a It.”(p. 195) と神に性別がないと言っている。またシャグはこうも言っている。 Man corrupt everything, say Shug. He on your box of grits, in your head, and all over the radio. He try to make you think he everywhere. Soon as you think he everywhere, you think he God. But he ain't. (p. 197)これはセリーが神を男だと考えるようになった訳をシャグが言っている。そして神は男ではないと分からせている。このことでセリーは神に対するジェンダー観を変えることとなった。神が人間のような姿をしているわけでなく、すべての物に神を感じるというシャグの考えを受け入れたのである。そしてこれがセリーのジェンダー観を変える大きな要因のひとつとなったと言える。つまり神が男でないなら、様々な物が自分の力となってくれるのだと気づき、女性である自分も強く生きることができるのだと考えるようになったのだ。 そしてセリーはシャグの手助けもあり、Mr.____から離れ、自立することとなる。 彼女はMr.____の元を離れる。それをMr.____に告げる時、セリーはとうとうMr.____に反発し、今までの不満などをぶちまける。Mr.____ とハーポのことを女性陣が攻め立てるのだ。そこでセリーはMr.____にこういう。“Every lick you hit me you will suffer twice, I say.”(p. 206)最初のセリーからは考えられない台詞だ。まるでソフィアが言っているような言葉だ。これこそが変化したセリーなのだ。セリーは男に歯向かうことのできる女性に変わったのだ。さらに、ソフィアとシャグの生き方を男の生き方だというMr.____に対して Mr._______ think all this is stuff men do. But Harpo not like this, I tell him. You not like this. What Shug got is womanly it seem like to me. Specially since she and Sofia the ones got it.と言っているように、彼女たちの生き方は彼女たちらしい生き方であり、男っぽいとか女っぽいなどで分別するものではないのだということをセリーが理解していることがわかる。 また、Mr.とハーポについても彼らは男らしい男性ではないことを理解している。セリーはそれぞれの人間をジェンダーの押しはめて女性的、男性的、としてとらえる必要がないのだということを理解したのである。 今まで取り上げてきたことからも分かるようにセリーは周りの人間から多くの影響を受けて変わっていったと言う事ができる。それは彼女の成長であるともいえるだろう。人は環境によって大きな影響を受けるが、自身の考え方が変わることでその環境に対するとらえ方も変わり、受ける影響も変わってくるということがあるのだろう。セリーは自分自身のとらえ方や周りの人間、彼女を取り巻く全てのものに対するとらえ方を変えることができた。彼女の成長する過程を読みながら、私も同じように何かが変化しているのだろうと思う。また、これからの私の人生でジェンダー観を変えるような事があったらきっとこの作品を思い出すだろうなと思った。 |
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