Seminar Paper 2009
Yuki Watanabe
First Created on January 29, 2010
Last revised on January 29, 2010
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The Great Gatsby とMoney
Gatsbyが追い求めたもの
Gatsbyにとってお金とはどういうものだったのだろうか。お金を手にすることが彼の夢でもあり、夢を実現するための道具がお金であった。彼は少年時代から大いなる夢を描き、そのための努力をした。陸軍中尉のとき、彼はDaisy と出会い、Daisyを手に入れることが、彼のさらなる夢となった。その後酒の密輸により巨万の富を得、豪華な暮らしを可能にした。その富と豪華な暮らしこそ、Daisyを手に入れる最も重要な要素であった。しかしこのように、夢の実現のためにお金を重視しすぎたことが、彼の悲劇の原因だった、と私は考える。 まずは彼がお金により手にしたもの、そして手にできなかったものを見ていきたい。彼は中西部の貧しい家庭に生まれた。子どもの頃から、彼の夢を見出す才能、そしてそれを実現させる能力は卓越していたようだ。 Rise from bed ………………………………………6.00 A.M. この時間割りや誓いから、彼がどんなにか着実に夢の実現に向かっていたかが窺える。その努力はTomやDaisyなど、生まれたときから富裕な人々からは想像もつかないものだったであろう。そしてそれこそが、Nickに ‘You are worth the whole dawn bunch put together.’ (p.160) と言わしめた所以だろう。彼の父親であるMr.Gatzが言うとおり、彼は出世するようにできていたというのもうなずける。その後、陸軍将校、Wolfshiemとの出会いなどを経て、酒の密輸で巨万の富を得た彼は、豪壮な大邸宅、何枚もの綺麗なワイシャツ、毎夜にわたる盛大なパーティーなど、金持ちの象徴といえるものをほとんど全て手にした。それでは彼は、DaisyやTomといった生来金持ちだった者と同じ種類の人間になれただろうか。確かに、外面的には彼は金持ちといえる全てを持っていたように見える。しかし、内面的には彼は生来金持ちの者とは明らかに違ったのではないだろうか。Buchanan邸での食事の際のDaisyとMiss bakerの会話について、Nickのこんな描写がある。 Sometimes she and Miss Baker talked at once, unobtrusively and with a bantering inconsequence that was never quite chatter, that was as cool as their white dresses and their impersonal eyes in the absence of all desire. There were here, and they accepted Tom and me, making only a polite pleasant effort to entertain or to be entertained. They knew that presently dinner would be over and a little later the evening too would be over and casually put away. (p. 18-19) この文章には何か、生来の金持ちの性質が、都会性という特徴としてうまく書き出されていると思う。Nickはまた、この性質は西部とは著しく違う、と言っている。西部では、夕方の時間は絶えず期待を裏切られたり、そうでなければ、その時そのときを恐れる不安の念に駆られながら、次から次へと慌しく過ぎていく、と言っている。つまりNickは、DaisyやMiss Bakerに、日々の安定した絶え間なく続く出来事のゆるぎなさ、それに伴う日常の出来事への無感動さを感じ取ったのではないだろうか。それに対しNick自身、`You make me feel uncivilized,’ と言っているとおり、Daisyらに比べるとNickは田舎者の部類に入るだろう。そしてNickが初めてGatsbyと会ったとき彼のことを’rough-neck’ と言っているように、Gatsbyも田舎者の方に属していたのではないだろうか。この両者の違いは、小説の最後までずっと感じ取ることができる。Gatsbyの死後、Nickは一人事後収集に奔走する。 I wanted to get somebody for him. I wanted to go into the room where he lay and reassure him: ‘I’ll get somebody for you, Gatsby. Don’t worry. Just trust me and I’ll get somebody for you-’ (p. 171) NickがGatsbyに仲間意識や責任感を感じているのに対し、他の人は姿をくらましたり、理由を付けてGatsbyとのかかわりを拒絶しようとする。一時は愛し合ったDaisyでさえも、旅行に逃げ、彼女のGatsbyに対する感情を窺うことはできない。このように、自分のゆるぎない生活を必死に守ろうとする姿勢は、感情とは切り離されていて、彼らの都会的性質を最もよく表している。 さて、ここまでGatsbyがお金により手にしたもの、手にできなかったものを見てきた。彼は外面的にはほとんどのものを手にし、Daisyと同レベルにまで達することができた。しかし彼の内面は結局Daisy の住む世界の人々とは全く別物だった。 次に、Gatsbyのお金に対する思い違いが生んだ問題について触れていきたい。彼は子どものときから、偉大な夢を描き、その夢にはお金が深く関わっていた。夢を実現したいと強く思うあまり、彼はお金の力を過信してしまったようだ。まず一つ目の問題は、彼が時間よりもお金に価値を置いていた点だ。 ‘Can’t repeat the past ?’ he cried incredulously. ’Why of course you can!’ 彼はDaisyと、5年前と全く同じように愛し合えると思っていた。今まで自分が成し得たことのように、お金をかけたり努力をすれば、過去さえ取り戻せると信じていたのだ。しかし思い通りにはならなかった。機会が過ぎてしまったのだ。4年間の経験が積み重なり、過去は過去になってしまった。それに気付かなかったのが、Gatsbyの問題である。 二つ目は、彼がお金自体に価値があると思っていた点だ。彼はお金により、豪華な品物や暮らしを得た。さらに彼は、お金の力で昔の恋人を取り戻そうとした。しかしようやく富を手に入れても、Daisy は戻らなかった。死後、彼には一体何が残っただろうか。それは葬式の場面で象徴されていると思う。盛大なパーティーに集まった大勢の人は消え、NickとMr.Gatz、そしてもう一人のなぞの男だけが葬式に出た。たった一代で巨万の富を得たGatsbyだったが、結局最後にはお金は彼にとってあまり価値のないものだったかもしれない。 |
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