Seminar Paper 2011
Satomi Aihara
First Created on February 3, 2012
Last revised on February 3, 2012
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Levinの多面性
本当の自分
09129016 3年 飯島未理 「A NEW LIFE の女性たち?多面性に欠ける女性たち?」 私は、A NEW LIFEに登場する女性たちは皆が皆似通っているように思える。個人的な意見になってしまうかも分からないが、日本の小説は、昔の小説も現代の小説も、女性たちは可憐でか弱く、はかない存在として描かれてることが多く見受けられる。「どこかか弱くて、脆さ、清純さを感じさせる乙女像」というのはどんな日本の小説において必ずと言っても過言でない程に登場している。現代作家で言えば、森見登美彦の作品には可憐な女性像が頻繁に登場している。「ふはふはしていて、繊細微妙で夢のような、美しいものだけで頭がいっぱいな黒髪の乙女」(森見登美彦『四畳半神話大系』(角川書店、2005)、p216)、「髪は丁寧に手入れされ、整えられた衣服には乱れが無い。まるで高貴な生まれの女性のようである。」(同氏『夜は短し歩けよ乙女』(角川書店、2006)、p121)といったように、繊細さを全面に押し出した、守ってあげたくなる様な女性が小説内では少なくとも一人か二人は登場するのが定番化しているように感じる。だがMalamudが描く女性たちは一様にしたたかで、計算高く、積極的な「強い女」というイメージが浮かぶ。問題提起された、Malamudの女性描写が下手、という意見については反対も賛成もしかねるが、女性の捉え方に偏りがあると仮定したい。以下、A NEW LIFEの主な女性について一人ずつ論じていく。 まずはLevernについてである。彼女は上記の通り積極的で、今で言うところの肉食系女子といったイメージの女性だ。バーでSadeckに口説かれ、その後“the girl looked int the far distance but her eyes were tender.”(p.76)、”As her affection for Sadeck visibly bloomed,”(p.76)とあるように、すぐにその気満々になっている様子が窺える。私の頭が堅いのかもしれないが、口説かれてホイホイと赤の他人に色目を使うのだろうか…と疑問(驚きといってもいいかもしれない。)を感じた。その後Levinと抜け駆けをするわけであるが、そこでもかなり積極的である。 “We were going to my brother-in-law’s barn, three miles out on Route 5 by the ruver.”(p.79)私はこの一文にど肝を抜かれた。物置小屋、しかも身内である義理の兄弟の所有物の場所で情事にふけろうと考えるであろうか。しかも““Your breasts, ”he murmured, “smell like hay.”(p.81)より、干し草が敷かれたムードのかけらもない場所だ。いくら近場とは言え、もう少し場所の選択肢があっただろうに、それ程早く性交に至りたかったのか?と感じる。更に“You better be getting your pants off.”(p.81)、“Why don’t you take your pants off?”(p.81)では、Levinが早くパンツを脱ぐように促しており男女間の行為に対しがっつく性質が見てとれる。また、豪傑な一面も描かれている。 A dog appeared from off the side of the road and began to follow them. Levin considered tossing a rock at it nut didn’t want to antagonize the animal. The dog came closer, its eyes glowing in the dark. Levin was thinking of shinnying up the next tree but what would Laverne do? She bent for a stick and flung it at the dog. (p.84) この一文や、他にもヒッチハイクを試みたりと、男勝りな一面を覗かせている。上記よりLaverneは断裁に対し積極的であるだけでなく、度胸のある「強い女」であることが分かる。 次にNadaleeである。彼女は何とも大胆な誘惑をする女性であることが分かる。“She had come in to ask about her grades?Nadalee, imperceptibly leaning forward, nuzzled her hard little breast against Levin’s lonely elbow.” (p.136) 授業に関する真面目な話をしているにも関わらず、教師に対しあからさま過ぎる性的アピールをしている。好意を抱く相手とは言え、思い切ったアプローチである。そして“Two minutes later she thanked him for his criticism and left with a happy smile, not the vaguest sign of a blush on her, although Levin glowed as with high fever.” (p.136) と、自分の積極的な誘惑によってLevinが動揺しているのが分かり、ご満悦である。「大胆」と述べたが、Levinにアプローチを仕掛けるようになってからよりセクシーな服を来てみたり、自ら自分の誕生日をわざわざ主張してみたり、何だかあまりにもストレートである。極めつけの一文が““I was once engaged to be married.”” (p.141)である。「気を引きたい」「女として見られたい」と言わんばかりであり、大胆なだけではなく自身の好意を、カモフラージュしようとしたり、臆すことなく、あらゆる手段で全面に押し出す図太さも持ち合わせている。Levernとはまた違うものの、彼女も積極的で強さを感じさせる女性として表現されている。 次にAvisについて考察していきたい。Avisは少しではあるもののLevinと関係を持ちかけた危ういシーンがある。“Her eyelids throbbed. “shall we ?go on?”” (p.133) より、率先してセクシャルアピールをしている。そしてAvisの胸が傷を負っていて押されると痛い、と言ったがためにLevin.が行為を中止してしまう。““Aren’t you?aren’t we going on?”” (p.134) ここより強く引き止めようとする様子が分かる。また、AvisはPaulineとDuffyの写真、そして其処から分かる二人の関係をLevinに伝えている。この時AvisはPaulineとLevinの不倫関係に感づいてか、写真を引き合いに出して「あなたとPaulineもゆくゆくはこんな目に遭うかもしれないよ?」という遠回しな警告をしていると考えられる。AvisとLevinが一瞬肉体関係を持ちそうになったのを不傷っていて、Paulineの浮気現場を見せつけることで自分に気を向けようとしている。そして一通り話し終えた上で、「Paulineの株を下げる様な事はしたくなかったんだけど。」と、後付けしており、形だけPaulineの事を気遣っている。本心では全くそんな事は思っていないであろうが、Levinの好感度を上げるために言ったセリフだと考えられる。““l honestly did not wish to impugn Pauline’s reputation,” Avis went on.”(p.264) Avisも肉体関係を持つ事に対しては積極的であり、かつ浮気写真をめぐるやりとりより、したたかさを兼ね備えた「強い女」である。 最後にPaulineについて考えていきたい。 Paulineも異性に対し積極的である。 ““Stay with me and hold my hand.” Her dress had risen above her knees. The legs were exciting though the long black shoes were like stiff herrings aimed skyward.”(pp.192?193 ) 夫がある身、そして子供が二階に居るにも関わらず、挑発的な格好をしながら「私の傍に居て、そして手を握っていて。」なんてよくもいけしゃあしゃあと言えたものである。その後Levinが居る森にまでわざわざやって来て、肉体関係に及んでしまう。そこでも、いきなりLevinも事を““My darling.””(p.198) と呼んでいたり、行為の最中に自分が人妻である事を自らジョークのように話しているシーンすらある。 ““You respect me?” “Of course.” “Mrs. Gilley, mother of two?””(p.200) 人妻である事実に蓋をして、一人の女としての積極さをここでは見せているように思える。夫や子供に対して本当に罪悪感を持っているのであれば、たとえ自虐的な冗談だとしても言わないのが普通の感覚なのではないだろうか。罪悪感を感じて体調を崩している様子も描写されてはいたが、Levinに好意を抱く様になったそもそものきっかけがヒゲを生やした姿が気に入ったから、というあまりにも単純で、ふわふわと浮ついた理由である事、そしてLevinが初めての浮気相手では無い事より、とんだあばずれ者である印象がどうしても強い。更にLevinの気を惹くために、Gilleyにベタベタするという、夫を利用した荒技まで披露しており、計算高くしたたかな女性である事も間違いは無さそうである。最後にLevinと駆け落ちするシーンでは、ErikがGilleyが居ない事を嘆いている様子が描かれている。““I want my real daddy.””(p.365) にも関わらず、その直後に““Trust me darling. I’ll make you a good wife.””(p.366)と述べている。家族に対し、後ろめたい気持ちは感じているものの、気持ちの切り替えが早いと言えばいいのか、図太い女性として、打たれ「強い女」として描かれている。 Levern、Nadalee 、Avis、 Pauline、四人の女性の上記の性格を根拠として、冒頭に述べた通り、皆が皆積極的で、どこかしたたかで、パワフルさを兼ね備えた強い女性としてMalamudに捉えられている。これが「本当の女性を表現していない」という批判し直結まではしないにせよ、多面的には描いていない事は確かだと感じる。もっと女性の脆い部分や控えめな部分、異性に対する恥じらいや奥ゆかしさ等、繊細な一面も表現するべきではないだろうか。Malamudは強くて積極的な女性にしか会った事がないのか?と読んでいて強く感じた。私が一番強く主張したいのはこの点である。強さと弱さ、積極性と消極性、相反する性質を女性の中に見出して表現してほしい。 |
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