Seminar Paper 2011
Sanae Saito
First Created on February 3, 2012
Last revised on February 3, 2012
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Levinの多面性
〜さらなるA New Lifeへ〜
A New Lifeの中で主人公レビンは様々な取捨選択をしなくてはならない場面と向き合う。新しい生活(A New Life)を始め、自らが選んだ道の中で仕事、恋愛の面で模索している。例えば女生徒のナダレー、と肉体関係を持ち、また世話になったギリーの妻とも関係を持つ。こういった女性に対してはだらしない面を持つ一方で、教育に対しては信念や理想を持ち、考えを曲げない性格を持つ。レビンは理想主義、ロマンチスト、大胆、慎重、無謀、臆病、ドジ、といった、相反すらする面をいくつも持っていると言える。この物語の中で彼の性格を一言でいうことは非常に難しいことであるが、ここでは、様々な面からレビンの多面的な性格を分析しながら、考察していく。 1.レビンの過去 まず、レビンは自身の過去につい以下のように言っている。 “The emotion of my youth was humiliation. That wasn’t only because we are poor. My father was continuously a thief. Always thieving, always caught, he finally died in prison. My mother went crazy and killed herself. One night I came home and found her sitting on the kitchen floor looking at a bloody bread knife. ” (p. 200)レビンの父親は盗み癖があり、長期に渡って盗みを繰り返し、最終的には監獄で一生を終えることになる。一方レビンの母親はこの父親が原因で気が狂ってしまい、自ら命を絶ってしまう。この二人の影響もあって、レビン自身も飲んだくれの生活へとなり、毎日孤独に何もせずに過ごすといった悲惨な生活を送っていた。しかし、レビンは地下の一室で椅子の上にある汚れた自分の靴に日が差し込み、照らし出されるのを見て、無性に心を打たれる。生きることは神聖なものだと信じるようになり、当時の恋人とも縁を切ることになる。 そして、文学によって、読書によって変わり始める。この物語の中で、レビンの髭は非常に重要な意味を持っていると言える。レビンは過去の自分を隠すように髭を生やす。この一連の流れから見て、レビンは新しい生活を始めるにあたって、過去を克服したというよりかはむしろ、隠すことによって、本当の自分を隠しているのだろう。また、家庭の暖かさや、母親からの愛情を知らないレビンは本当の愛を知らないと言える。 2. レビンの性格 また、レビンはキャスカディア大学に赴任したが、文科系の単科大学だと思っていたら、理工系の大学であったという、なんとも弁解のしようがないミスをしてしまう。しかしながらレビンはこの状況をあまり重く捉えていない。 “Levin sat long in his chair, tormenting himself for being the man he was. Why am I always committing myself before I know what it’s all about? What’s my fantastic big hurry? “Anyway,” he muttered as he began to unpack his bags, “It’s a start.””(p. 30)と自分の過失を自責しながらも、これからだ、とすぐに開き直る。 そして、初めての授業に気合十分で臨んだときの失敗がある。 レビンはズボンのチャックを全開にし、教壇に立ってしまうというドジで間抜けな一面がうかがえる。 “The bell rang and the class moved noisily into the hall, some nearly convulsed. As if inspired, Levin glanced down at his fly and it was, as it must be, all the way open.” (p. 90) そして、レビンはあるとき、ギリーのオフィスに侵入し、ダフィとポーリンの関係を知りたいが為に犯罪的な行為をする。そしてそれを自分の中で正当化してしまうのである。この行為はレビンのモラルに欠ける常識を知らない行動である。これは彼の父の盗み癖が影響しているのだと私は考える。また、教師であるにもかかわらず、このような行為をしてしまうということは常軌を逸した姿である。 “He decided to go home and be done with temptation, but once in the hall he walked the wrong way. For safety’s sake he knocked first, softly, and listened to utter silence throughout the building. Levin’s legs were so wobbly he had to trek back to his office. He rested his head on his arms on the desk. Go home,he warned himselif. In the distance a church bell thinly tolled midnight. What’s the sin, he asked, in knowing the truth? Is it ever wrong to know? He rose from his seat at the thought and hastened down the hall, non-stop into Gilley’s office, leaving the door partly open in case he had to make a quick exit. I’m always breaking into something of his, he thought, someday he will justifiably shoot me.” (p.299) 3.レビンの恋愛観と教育へのこだわり また、レビンの女性関係は非常にだらしないものがある。酒場で出会ったラバーンに始まり、英語教師のエイヴィス、ナダレー、そしてギリーの妻であるポーリンである。レビンは非常に理性を保つことができない、また意思が弱く女性に関しては非常に流されやすい性格である。また、女性と関係を持つ度に痛い目に合うが懲りずにまた同じことを繰り返す。 例えば酒場で出会ったラバーンとは納屋で関係を持とうとするもシリア人の男に衣類を盗まれ、レビンはこの後のことを思い早くその場所を離れるべきであると主張するも、ラバーンと意見が食い違い喧嘩をしながら家につくのである。そしてズボンを脱ぐ彼女を見てまたも欲情にかきたてられ、しかしラバーンからは酷い言葉が返ってくるという、なんとも情けない姿である。 また、“Levin seriously considered giving up the car and going back to walking. He was at best a bus and subway man. As for loneliness, better than a car was a girl ; he would look actively now.”(p 135)と。孤独を紛らわすために女性との関係を持つことがわかる。 レビンが自動車免許を取得し、ナダリーのもとへと車を走らせているときは、様々な災難が降りかかる。ラジエーターから煙が出たり、車の右後輪が溝に入ってしまったりする。このときには“I’ll die. He muttered after twenty minutes of struggling to free the wheel.”(p. 147)からわかるように、なんとも気弱な発言をする。霧によって先が見えなくなってしまう。そして、霧によって前方が見えないことが、彼自身の心境にも影響している。これによって非常に気が弱く、慎重になってしまい、男性としてはあまり頼りにならない一面がある。 一方で、ナダレ―の成績をCの評価をつけ、それに対してナダレ―が抗議しにレビンのところへやってきたときには、彼女の泣きながらの説得にも関わらず、嘘をつくことはできないと却下するのである。結局は採点ミスであることが判明するが、レビンは教育に関してはまっすぐな姿勢がある。また、採点の変更届に関して、ギリーは評価を下げる変更に関しては見逃して、評価を上げるものだけ記録係に提出するように指示する。しかしレビンは間違いは間違いなのだからと反論する。結局レビンはナダレーから突き放されてしまう。 この一連の中で、レビンはナダレーの評価に関して、彼女がレビンを道連れにして大学を辞めるかもしれない、とまずは自分の身を守ろうとしているのである。生徒との関係を持っておきながら、非常に教師としていかがなものかと考えさせられる。 そして、ナダリーと会うことが無理になってしまったレビンはなんとまたラバーンのいた酒場へ行くのである。レビンは自分の性欲を発散させたいだけなのではないか。とも考えさせられた。 そして、おとなしく仕事をこなしていたが、次第に教育方針や文法の原理に疑問を持ち始め、この状況に変革を起こしたいと思うようになる。しかし、学科長を目指すギリーはレビンと反対の現実主義者であり、レビンの考えと対立することになる。 またレビンが受け持っていた生徒のアルバートが不正行為を行った疑いのあったときには、証拠が見つからず、Aの評価を与えた。そしてギリーから反感を買い、ギリーはアルバートをレビンのクラスから外し、エイヴィスが受け持つことになる。ここでレビンは自分の権威を無視されたと感じ、ギリーは自分の敵であると考えるようになる。レビンは非常に自分の考えを正当化し、自身が正しいと思ったことは他人になんと言われても曲げない頑固な一面がある。 そして、レビンは最終的にポーリンとの関係をもつことになるが、写真屋で偶然見つけたポーリンの写真盗んできてしまう。 バロックが運動選手に非協力的な教師のリストを書いたものをオフィスに忍び込みコピーしてしまうことや、ギリーのオフィスにではダフィに関する書類を探すためにあさり、エイヴィスのオフィスにも侵入する。学科の変革を起こすべく模索しているにも関わらずこれらのあるまじき行為をしてしまう。やはりここでもレビンの父親の影響があるだろう。 教育の現場に立つものがこのような行為をしていることは非常にモラルが欠けているもので、レビンは理想を追い求めすぎな一面がこのような悪いことをするようにしているのではないか。 このようにレビンは驚くべき行動を多々とるが、なんといっても一番衝撃を受けたものはエリックとメアリをポーリンのためにも引き取るべく、教師という仕事を捨てることである。 レビンは当初は愛していなかったポーリンと関係を持ち、次第に本当に彼女を愛してしまう。 そして、レビンはポーリンとの関係を忘れるために、仕事に没頭し、論文を書くのである。 ファブリカントとバケットに論文についての意見を求めるが、バケットからはなにも返答が来ず、そのことに対して怒りを覚えるのである。ここからレビンは子供っぽさや、短気な性格がでている。しかしながら、後になって自分でも読むと、文章が非常につまらないものであることがわかり、自分に嫌気がさすのである。レビンはプライドが高いが一方で自身に嫌気がさしたりと、喜怒哀楽の差が激しい人物に思える。 4. 最後に レビンの立場を考えず、果敢に学科長選挙に立候補し、学部に変革を起こしたいという挑戦は失敗に終わり、最終的にはレビンは大学を辞めることになる。しかし、レビンはポーリンとエリック、メアリ、そしてポーリンが授かった子供とともにまた新しい生活を始めることになる。このときからレビンは自分が幼い頃にしることのなかった家族の愛を作り上げていく。 現実的に考えてみれば、病気がちな2人の子供、そしてポーリンのお腹にいる子供、そしてポーリンを養わなくてはならないし、また一から仕事を始めなくてはならないという点から、非常に問題が山積みである。 しかし、このレビンという人物がキャスカディアにおいて影響を与えたことは確かである。 ファブリカントが髭を生やし始めたことや、レビンが提案した読書会の計画も実行されることになった。 レビンが来たことによってギリーも何かしら考えさせられたに違いない。 レビンが得た新しい家族、生命とともに新しい生活をどのように構築していくのか。彼の両親とは同じ道をたどらないことを切に願う。 |
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