Seminar Paper 2011
Sayumi Takano
First Created on February 3, 2012
Last revised on February 3, 2012
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Levinの多面性
Who on earth is Seymour Levin?
今まで送ってきた生活と訣別するためにまた新たな生活を求めてオレゴン州はCascadiaへとやってきたSeymour Levin。その地における生活の中においての彼の多種多様な性格及びその独自性を持つ思想が読み取れる。手始めにそんなLevinの性格を少しばかり周囲の人間のそれと比較してみたい。
まず彼を大学の講師として招いた張本人であり誰とでも親しくなれる、どちらかと言えば積極的で明るい方でもあるGilleyとは正反対の性格(内面の持ち主)だと思われる。一方ではかつてこの大学にて教鞭をとっていたが深い事情により解雇という形でそこを追われたDuffyとは人付き合いが上手ではないことや新しい物を取り入れようとする考えという点でLevinはDuffyと似た性格の持ち主と言える。そこで本編を読んだことやその中で出て来る事例を踏まえて私は彼の内面性について以下のようにまとめてみた。Levinは基本的に人付き合いの下手という意味において不器用で周囲の輪の中へ積極的に入ってゆけないが故に孤独感を強く感じてしまいがちではあるだけでなくどこか臆病な所がある他一大学講師としてLevinが大学に赴任される前からGilleyを中心に
行ってきた各自の就職先に合わせた教育方針に反してでもliberal artsを進めていこうとしている革新派の一面も持ち合わせている人物であり、またそれにプラスして恋愛面に際しては少々女性に対して気障で(?)甘い言葉を発するロマンチストであり時として生真面目に接するということでもある人物とも言える。それからこれらの性格の他にも頻繁に何かしらのトラブルに巻き込まれやすい所謂「ついていない」という要素も忘れてはいけない。上記のことを踏まえ、この長編小説の題名ともなっている”A New Life” のテーマについても考えてみたい。私個人的にはこの題名にはLevinはそのような自身の性格を持ち合わせるにも関わらず自身の人生に悩んでいて今後どのようにしてゆけばよいかと考えるために様々な生活を送ろうとしているという意味合いが含まれていると推測した。つまりこの作品のテーマは曖昧になっている自分自身の模索という仮説を私は打ち出した。
続いて冒頭で挙げた物にプラスして主題に照らし合わせながらLevinが持つ性格を本文に書かれている内容に即して解釈してみたい。まずLevinは他者と上手に関係を築くことが出来ないためにどちらかと言うと孤立している立場に置かれていると思われると冒頭で述べたがそういうのは“He was disappointed at how lonely he still after almost three
months in Eastchester.” (p. 125) “Levin wanted friendship and got friendliness; he wanted steak and they offered spam.” (p. 125)という箇所からも読み取れ、また“I am
my only hostage, Levin sighed.” (p. 310) とあるようにLevinが孤独であるのを自覚している節も見られる。更に“Levin’s isolation deepened. He was weary of making enemies,
sick to death of fighting alone, living alone, of his lonely mind.”(p. 319)ではこの場面の前で新しく使用する教科書の確認をするために入ったBullock の研究室で偶然とは言え発見した、学生に対してあまり熱心ではない教授(講師)の名前が連ねてあった表を見てしまった
Levinはそれを周囲に見せたことで言い争いに巻き込まれそのことで彼はますます孤立してしまう様子が描かれていて、ここでは孤立の増加だけでなくLevinの不器用な一面を垣間見ることが出来る。この要素は”Levin blushed.” “No pictures, no sweetheart.” (p. 5)という、財布の中に家族や恋人の写真を入れていないのかというPaulineの質問に対する上記の返事や態度からも伺える。
“Still, I have the strongest urge to say they must understand what humanism means or they won’t know when freedom no longer exists. And that they must either be the best- masters of ideas and of themselves ? or choose the best to lead them; in either case democracy wins.” (p. 115)及び”If you know anything about educational trends you’d know that pure liberal arts programs are dying out all over the country.” (p. 288) とあるようにLevinはアメリカの (大学において)民主主義や学生の人道主義の理解の必要性等を説きつつかつて教えられていたものの今となってはさっぱり大学で扱わなくなったliberal artsを広めていこうとする考えを持つと考えられる。こんな彼からは従来行われてきた物にこだわらない新しい方法をとるという、いわばその時(時代)に応じた教育を目指す1人の教育者としての一面が見られる。その気持ちが強くなったLevinは”Holy smoke, Levin thought, suppose I were head of the department?” (p. 275)とあるように次第にもし自分が学科長に就任したらと考え始め、そして彼もまた学科長選挙の立候補者の1人として自分の名前が載っていることを知るとその選挙に出ることを考え始める (尤も実際に選挙に出馬するも彼の孤立状態が災いして選挙はGilleyの圧勝でLevinは惨敗という結果に終わった)。また上記にも挙げた275ページの学科長云々考えている場面からはhumilityから大きく外れた傲慢な考えも読み取れる。
今度はLevinの恋愛面と臆病な性格について見ていきたいと思う。Levinはこの小説の中でGilleyの妻・Pauline他店員をやっているLaverne, 彼が受け持つ講義の受講生の1人であるNadalee, 同じ大学で働く講師をやっているAvisといった様々な女性と出会い
その内のPaulineと深い関係になったLevinは恋愛に関しては大学講師としての顔とは
異なる面を見せる。例えば”You breasts”, he murmured, “smell like hey.” (p. 81)のように
Laverneといい雰囲気になったLevinは納屋で行為に及ぼうとした際の上記の発言からは
Levinのロマンチストな面だけでなくこのようなことをしようと考えた大胆な部分が伺える。そうかと思えば”He tried various means of self-control: exhortation, rationalization, censorship, obfuscation.” (p. 138)或いは”Though they talked longer, she seemed, when
she left, to have grown cool to him. He observed this with regret. He was treating her
badly.” (p. 156)といった箇所とか後者の直前の2人のやり取りとかから講師が学生と深い関係になってはいけないという規則を抜きにしても女性に言い寄られてもあれこれ考えて境界線を越えないように努力する、本当の愛情がなければ愛することはないという生真面目な部分も垣間見られる。しかしこの性格は初期の段階から好意を彼に抱いていたと思われるPaulineと一線を越えたことで影が薄くなってしまったと私は推測した。
この段落でLevinと様々な女性との出会いで露わになった彼の恋愛面を述べてきたがその内の1人、Laverneとのやり取りの中でよく言えば臆病、悪く言えば女々しいとか男らしくないという部分とフェミニストな部分という相反したLevinの内面も読み取れる。その様子は82-84ページでいざLaverneと行為に及ぼうとした所シリアから着た男子留学生、Sadekと思しき人物に2人の衣服の大半を持っていかれてしまった際Levinは自分がその時身に着けていたパンツをLaverneに差し出したりしまいに泣き出した彼女を何とか宥めたり、ゴムのタイヤに躓いて肘に擦り傷を負った彼女にハンカチで応急手当を施したりと
女性に優しい面が多く見られる一方同じく84ページでLaverneが自分達に近づいてくる犬に折り曲げた棒を投げて追い払ったりトラックに自分達を乗せてくれるよう頼んだりと積極的に行動を起こしている反面Levinは木に登ったりその陰に隠れたりという様子が描かれている。この場面では「とにかく何かしなくては」という気持ちから行動を起こしたLaverneと突然の出来事に動けずにいたLevinの内面が対照的な描写となっている。このことを違う言葉に置き換えるとLaverneの豪傑さが表れている様子があるためLevinのどこか頼りなさそうな感じが強調されているという解釈が出来るのではないかと私は考えた。更に “No, you bastard, don’t ever let me see you again in your whole goddam life. Don’t think those whiskeys on your face hide that you ain’t a man.”(p. 85)とあるように LevinはLaverneから「あなたは男らしくない。」と面と向かって言われてしまう。このことからもこの段落の冒頭で述べた彼の性格を読み取ることが出来る。それと同時に女性に優しく接しても報われないという一種の皮肉もここで読み取れる私は推測した。
3番目に述べてゆく事柄として「ついていない男、Levin」を取り上げたい。この小説を通してとにかくLevinは様々な困ったことに巻き込まれることがとても多い。そのことについてだと10ページでGilleyの自宅に来たついでに食事をごちそうになることにしたLevinはそこでPaulineが運んできた料理を落とされたことでやむなくGilleyのパンツとズボンを穿かなくてはならなくなったり、13ページでErikにおもらしされたためもう一度新しいズボンを身に着けなくてはならなかったり上記でも挙げたが83-85ページでLevinとLaverneの衣服が盗まれたり147ページで車のタイヤが溝に嵌る、驢馬が道を塞ぐ、ロシアのスパイと間違われる、剰え道に迷うという一度に様々な災難に遭遇したりといった物がその例に該当する。私はそれらが物語を繋いでゆくいわばジグゾーパズルのような物だと解釈した。後はその他Levinの性格として考えられる内面の特徴を見てゆきたい。
まず最初に349-60ページでPaulineからGilleyを説得して2人の子供達の親権を彼女に譲ってもらうことを頼まれたLevinが彼の元へ行きそこで2人が色々話す場面でGilleyにPaulineとの生活は楽しいかもしれないが一般的に甘楽ではないと言われたことや婉曲的な脅しに対するLevinの返事が挙げられる。彼がそんな発言をしたGilleyに “I have never slept on flowers.”(p. 355) とかとかのように返した所からはLevinがJewish humorを持っていることを思わせており、特に前者はその典型的な物であると考えられる。次に320ページでLevinが隙を見て他人の研究室に無許可で忍び込んでPauline宛の手紙、彼女とDuffyについて書かれたメモ、Levinの研究室を訪れた女子学生に関して克明に記されたノートを持ち出した場面からは彼の倫理観の欠如が読み取れる。このようにLevinという1人の人物に多くの側面が存在していることがわ分かる。 最後に今までLevinの様々な性格を見てきたがそれでも彼は自分が一体何者なのか、自分の人生とは何なのか、これからどう進んでゆけばよいか分からないでいるが故に路頭に迷っていて、その蟠りを解消すべくそして自分らしい生活、真の自分自身を探し求めるために様々な土地に移住しているのではないかと解釈した。Levinが自身のことで悩んでいる様子は 及び”Levin looked at himself in the mirror and looked away.”(p. 330)といった2つの箇所からも読み取ることが出来る。例えば前者はLevinの前に現れたいきいきしている少女と比較して改めて今の自分自身や将来的な不安を感じていてまたそういったことを分からずに生きてきたことを認識しており後者では自分は何者なのかだけでなく今後どうすればいいのかという意味合いを汲み取れる。 したがってLevinが持つ様々な内面と自分自身が何者なのかという疑問の二項対立が彼の分析を通して分かったので以上の事柄からこの作品の主題には多種多様な内面を持つものの自身のことが分からないが故どこへも進めずにただその場に佇んでいるLevinの自分探しということが示されている、つまり私は冒頭で打ち出した仮説が妥当ではないかと結論付けた。 |
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