Seminar Paper 2011
Kanako Takemura
First Created on February 3, 2012
Last revised on February 3, 2012
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Levinの多面性
Levinの魅力はどこにあるのか
1,序論 自分はどんな人間かと聞かれたとき、私はこういう人間ですと一言で答えられるだろうか。例えば私は明るい人間ですと答えた人がいたとしても、その一言でその人のすべてを表しているとは言えない。明るい人といっても悩むこともあるだろうし、何か悲しいことや辛いことがあったらふさぎこむこともあるだろう。個人差はあるかもしれないが人は誰しも多面的であると私は感じる A New Lifeの主人公であるLevinもまた、多面的な人間である。大胆だったり臆病だったり、多少誇張されてはいるが私たち人間をうまく反映させている。小説を読んでいるとLevinは自分が向きあっている物事の種類によって違う人格を見せているように感じられる。しかしそこが彼の最大の魅力であるようにも感じる。 この論文では人間としてのLevin、教師としてのLevin、男性としてのLevinにそれぞれ焦点をあて、彼の考え方や行動を分析し、彼が置かれている状況によってどのような性格といえるのか考えていき、彼の魅力について考える。 2、人間としてのLevin 1人の人間として、Levinはどんな人間であるのだろうか。教師としての立場でもなく、恋愛関係においてでもない彼はどんな性格をしているのか、彼の言動や生い立ちをもとに考えていく。 Levinは少し人見知りだが、冗談を言ったりする明るい面もある。これはPaulineが”Have you any pictures of your family in your wallet? Or perhaps a sweetheart? (p25)「お財布のなかに家族の写真はないの?あるいは恋人は?」と聞いたときに、”No picture, no sweetheart.” “No wallet.”(p25)「写真はないし、恋人もいない。」「お財布もない」と答えているところに表れている。このようなジョークを言って場の雰囲気を和ませるといった気の使える面もある。 そしてLevinは気にしやすい性格でもある。気にしやすいと同時にネガティブな面もあるようだ。Gilleyが自分を雇ったのが自分への票集めのためなのではないかと思って落ち込んだり、そうではないことを願って確かめるようなことをしているところからそう解釈できる。雨の中を歩いたて孤独を感じたりするのも彼のナイーブな一面を表している。 またLevinは暗い過去を持っている。彼の過去はPaulineに自分の生い立ちを話すときに明らかになる。彼の家は貧しく、父親は泥棒であった。父親は牢屋で命を落とし、母親は自殺をした。Levinはアルコールに依存し、堕落して自己嫌悪に陥っていた。しかしあるとき自由の源は人の心だと気がつき、自分がかつて持っていたものを取り戻そうと思った。そして落ちぶれていた自分を脱しようと決意をした。 このことからは、辛い境遇だったとはいえ、アルコールに依存して落ちぶれてしまうしまうLevinの精神的に弱い部分が伺える。Levinが積極的に人付き合いをしなかったり、自虐的であったり、ナイーブであるというのは彼の過去が関係していると考えられる。 しかし、このままではだめだと考え立ち直ることを決意していることから、彼は自分自身と向き合うことができる人間なのだと考えられる。新しい土地にやってきたり、Paulineに自分の過去を打ち明けたことから自分の過去に区切りをつけようとしているように感じる。 Levinの人間としての一面をまとめると、人間としての彼の性格には彼の過去が関係しているように感じられる。自分の辛い生い立ちからアルコールに依存した彼は、そんな自分に嫌気がさし、過去の自分と決別し、立ち直るために新しい土地にやってきた。自分の過去に対するコンプレックスから、物事をネガティブに考えてしまうことがあったり、ナイーブになってしまうことがあるのだろう。ジョークを言ったりすることから、彼本来の性格としては意外にも明るく、ユーモアがあるようだ。 3、教師としてのLevin 教師としてのLevinはどういった人物であるのだろうか。Levinの教育に関する考え方は小説の中でよく語られている。彼が教育について話をするときはhumanismやfreedomという言葉がよく使用される。 “I’m sometimes feel I’m engaged in a great irrelevancy, teaching people how to write who don’t know what to write. I can give them subjects but not subject matter. I worry I’m not teaching how to keep civilization from destroying itself.” (p113) 「ときどきとても無意味なものに従事している気がするんだ。なんのために書いているかわからない人々に書き方を教えている。私は彼らに主題をあたえることはできるけどそれは主題のもつ意味ではない。どうしたら文明化の崩壊を防げるのかを教えていないのではないかと心配している。」 また、“I have the strongest urge to say they must understand what humanism means or they won’t know when freedom no longer exsists.”(p113)「彼らはヒューマニズムが何を意味するか理解しなければならない。さもなければ、彼らはいつ自由が存在なくなってしまうかをしることができない。」と述べていて、Levinはただなんとなく学生たちに教えているのではなくて、意味のあることを教えなければならないということを自覚していることがわかる。 彼はGreat Book Programというものも考案している。Great Book Programとは学生だけでなく町の人も参加でき、古典文学だけでなく、科学や社会科学についての本も取り扱い、最終的にはhumanitiesとは何かについて理解を深めるというものである。 このようなプログラムを提案していることから、Levinは教育については具体的なプランを持っていること、一貫してhumanismについて考えていくというLiberal artsを重視した教育概念を持っている。
4、男性としてのLevin 男性としてLevinをみてみると、彼は非常に女性関係がだらしないことがわかる。これはPauline やLavern、Nadaleeとの関係をみてわかることである。Levinは見た目はひげが生えていたりして、こぎれいでもないが女性に好かれるようである。 そしてLevinは恋愛に関してはロマンチストである。これはNadaleeとで牛小屋で関係を持とうとしていたところに表されている。ここでLevinはLavernに”your breasts smell like hay”(p81)「君の胸は干草のにおいがする」と言っている。それに対し彼女は“I always wash well”(p81)「いつもちゃんと洗っているわ」と答えている。Levinは“I mean it a compliment”(p81)「褒めているんだよ」と言っていて、Levinが牛小屋でそういった行為をすることに少なからずロマンチックさを感じていると解釈できる。 そしてどうやら世間的にあまりよいとされていない関係に走る傾向がある。Paulineには夫も子供もいていわゆる不倫関係になり、Nadaleeとは教師と生徒という関係にも関わらず関係を持った。 しかし、Levinが追いかけているという印象はあまり受けない。積極的にLevinから誘うというよりは、どちらかというと相手から持ちかけられてそういった流れになると彼自身も大胆になるようだ。複数の女性との関係をみていると、Levinはその女性自身に恋をしている、愛情を抱いているという印象はうけない。なんとなく雰囲気やその場の流れにながされているように見えてしまう。真面目に恋愛をするというタイプではなく、とりあえず関係を持ってみるタイプのようだ。 そんなLevinだがPaulineに対する気持ちは違うように感じられる。これまで彼は愛とはなにか、などについて深く考えてはいないようだったし、女性関係については愛情よりも肉体関係というイメージのほうが強かった。しかしPaulineと関係を続けていくうちに彼が会愛について考えはじめる。これは彼女との関係で不安にさいなまれることに疲れ、彼女との間に愛はあるのかと疑問に思ったことが原因である。 またLevinはPaulineにひきずられているという印象をうける。彼女との関係をGilleyに打ち明けるときもLevinはもう少し先延ばしにしたかったのに結局Paulineに押されて話すことになってしまっている。最終的にPaulineと一緒になり、大学を去るあたりも彼女に引っ張られているような気もする。 男性としてのLevinの性格をまとめると、彼は女性関係にだらしがないようだ。そしてロマンチストである。そのせいか雰囲気にのまれやすく、世間的によくない関係であっても関係を持ってしまう。自分から積極的に行動するというよりは振り回されるタイプで、それほど愛情がなくても関係をもってしまう。しかしPaulineのことは愛しているのではないかと私には感じられる。Gilleyも言うようにPaulineは面倒な女性であるし、この小説全体を通してもLevinは彼女に振り回されている。にも関わらず一緒になったことからLevinは彼女を愛していると考えられる。 5、結論 ここまで人間としてのLevin,、教師としてのLevin、男性としてのLevinを見てきたが、彼はそれぞれ自分がいる状態によって異なった性格を持っているようだ。 人間としてのLevinは暗い過去を持ち、その影響からか少しネガティブでナイーブである。教師としての彼は真面目で考えも明確である。男性としての彼は女性関係にだらしなく世間的によくない関係にも走るし、それほど愛情がなくても関係を持てる。私はとくに教師としてのLevinと男性としてのLevinはなかなかかけ離れているように思った。真面目に自分の教えている学問について考えていて、自分の意見も持っているのに恋愛に関してはどこかご都合主義というか流されるし、振り回される。人間としては気にしやすくナイーブであるのに恋愛においては人妻や生徒と関係を持つという思い切った行動にでる。 このように彼は「真面目な人」とも、「気にしやすい人」ともひとことに言えない。その時の自分によって様々な面を見せる。わかりやすいようでわかりにくい人間なのだと感じた。もはや多重人格ではないかとさえ思ってしまうほどに。この小説を読んでいると私はLevinの女性関係のだらしなさに若干あきれてしまうこともあった。(おそらくそう思う女性は多いだろう)しかしなぜかこの主人公を嫌いになれない。それはきっと彼がそれだけの人間ではないからである。繊細な部分も真面目な部分も、暗い部分も明るい部分もすべてひっくるめてLevinという一人の人間なのだ。 このLevinというキャラクターはすごくリアルだと思う。序論でも述べたように人間はみな多面的である。「この人のこういう所はちょっと嫌だけど、こうゆう所はすごく好きだから嫌いになれない」と感じた経験のある人は多いと思う。それがまさにLevinの魅力なのではないかと私は感じた。 |
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