Seminar Paper 2011
Kaori Yoshioka
First Created on February 3, 2012
Last revised on February 3, 2012
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Levinの多面性
〜まっすぐ生き抜いた男〜
私が、A new lifeについて考えた時、感じた事は、人は不完全であり、時にはどうしようもない過ちを犯すこともあるが、結局人は一人では生きていけず誰かと関わる事で、影響を与えたり与えられたりし、変化し成長していくものであるという事がこの367ページという文章に書き綴られていると思う。その不完全体の代表として、主人公であるLevinが描かれていると感じた。彼が様々な人や出来事に巻き込まれながらも成長していく過程が描かれ、作者もそれを狙って執筆したのではないかと思う。では、私がなぜそう考えるのか。Levinには一言では表せない多面的な性格を持っている。実は、人は皆彼のように矛盾をはらんだ性格をしているのだと思う。これからLevinの多面的な性格を用いながらこの作品のテーマを論証していきたいと思う。 Levinはこの小説で多様な性格がえがかれている。まず、第一のLevinの特徴のとして、間が悪くドジな事である事が挙げられる。Levinはアメリカの東部から過去に決別し、新たな生活(new life)を求めてカスカディア大学に新米講師としてやってきた。そこで、失態をおかす。授業初日に、急いで学校に向かったところ、ズボンのチャックを開けたまま生徒の前で話をしてしまい、生徒から笑われてしまう。また、彼の上司であるGilleyとその妻Paulineと出会った初日に彼らの家に招かれた際、Paulineに食べ物をズボンにこぼされたり、彼らの子供Erikにおしっこをされたりと何度もズボンに関する災難が描かれている。この喜劇のような悲劇を読んでいるうちにLevinの事をドジではあるが、「わかる!こういう事あるよね!」とつい同情してしまうような人間味のある印象を私に持たせた。 また、そんな優しい性格だがドジな性格であるが故にLevinは女性との関わりで上手に立ち回る事が出来ず、トラブルを招いてしまう。例えば、生徒の一人Nadaleeとは生徒と教師という禁断の恋をしたり、同僚のAvisとも関係を結びそうになってしまったり、挙句の果てには、Gilleyの妻Paulineとの不倫関係という禁断の恋に足を踏み入れてしまったのである。このようにLevinは相手の強い誘惑や自分の欲望にまけてしまうようなややだらしない部分も見せている。ただ、この女性達との関係を通して、Levinの成長に繋がっているとも言える。NadaleeとAvisとの関係は、その時の単なる欲望や要求での事であったと思う。例えば、Nadaleeの場合、彼女の事は好きだったが生徒と付き合う事で自分の教師という立場が危ぶまれる事を恐怖に思い、彼女から離れた。 “if news of their affair leaked out, it would end his career at Cascadia with a backbreaking thump. Levin worried she might give them away by a changed attitude, or, sign, however unconscious or unwilling, that the teacher-student relationship had shifted to something more personal. (p. 155) このように、Levinは愛よりも自分の立場を優先させたのである。また、Paulineとの会話で、”Tell me what you want from life? ” “Order, value, accomplishment, love” (p. 189) と言っている。つまり、彼は本当の恋をした事がなかったのである。いつも、愛は最後だったのだ。だがしかし、彼の人生の優先順位がPaulineとの出会いによって変わるのだ。彼は上司の妻という禁断の恋に手を出した上に、自分の職が失われ、さらに養子の子供と一緒に暮らすという辛い状況にも関わらずPaulineとの生活を選んだのだ。LevinはPaulineに本当の愛を見つけたのと同時に彼自身、逃げずに誠実に愛に向き合おうという決心がついたのだろう。Levinは成長したのだと感じた。彼の人生における物事の順番が入れ替わったのだ。 二つ目に挙げるLevinの性格としては、彼は非常に教育に対する熱意が強く理想主義者でもあるという点である。彼の新しい赴任地カスカディア大学は単科大学であるが、英語学科がない事に落胆する。そこで、Levinは英語教育の発展に積極的に取り組むべきと考え行動をおこす。彼は、このように主張している。 “We ought to introduce some literature into the course so the students know that good writing means something more than good report writing. … Just enough lit for inspiration, to liven it up, to ease the heart. " (p. 287) “If know anything about educational trends you’d know that pure liberal arts programs are dying out all over the country. ” ”In that case we may die with them. ” (p. 288) さらには、英語学科の発展に対して保守派意見を持つGilleyに新米教師ながらも対抗し、学科長選挙に立候補したり、Great books programを推奨し、学部長に積極的に働きかけたりしている。このことからも、彼の熱い熱意が伝わってくる。彼が赴任してから、今までの変わらない英語教育の発展に対しての熱意が周りに影響を与えた部分がある。最後の描写でLevinがカスカディア大学を去ると決めた時、彼が推進していたGreat books programの計画を進め実行するような描写がある。また、Fabricantは赤い髭を生やし始め、Levinを真似ての思想を受け継ぐ事を連想させるような描写がある。また、30年間も続いた「文法の原理」を廃止することに成功した。些細な事ではあるが、Levinがいた事により少なからず、周りに影響を与えたのだ。そして、今までLevinの敵とみなされていたGilleyの最後の一文の”Got your picture! ” (p. 367)が二人の新しい門出を送り出しているように感じた。あれほど対極していた二人だったが、Gilleyにも影響を与え、変えたのだ。LevinだけのNew Lifeではなく、他の登場人物にとってもNew lifeになったのだ。今まで、Levinの苦悩が延々と書かれていたので最後の最後で報われたのだなとLevinに少し光がさしたような気がした。 3つめの特徴として、忘れてはならないのが、Levinは非常に真面目で誰に対しても平等あるということが言える。彼の生徒の一人であるアルバートという生徒が文章を盗作したという疑いがかかった際に、他の先生達が絶対に盗作だから評価を下げろと発言しているのに対して、Levinは絶対盗作だとわかったのだが証拠が見つからなかったので評価をAのままにしたのだ。私がもし教師だったならば、評価を下げていたかもしれないが、このエピソードからはLevinがどれだけ平等主義者で、真面目であるかという事がわかるだろう。”I said to myself a good teacher is a liberator.” (p. 177) “I said to myself, you can’t indict without evidence, and you can’t indict in perpetuity. “(p. 177) また、Levinと深い関係を持った女子生徒のNadaleeとある出来事が起こった。彼女曰く、通知表の成績が本当は一段階上のはずだ、そうでないと親に怒られるという要求を受けたのだ。その時、Levinは彼女と付き合っているからといって評価をあげるような事はせず、しっかり調べ上げた上で、実際にミスがあり評価を一つあげた。この2つのエピソードを読み、私はLevinに好感を持った。例え自分の立場が危ぶまれようと嘘をつかずに真面目に公平に評価をするLevinは周りと同調しないという点では不器用ではあるが、しっかり自分の意思と正義感を持っていると思った。しかしまた、その真面目であるがゆえの欠点としてたくさんの問題に巻き込まれてしまう事も言える。Paulineとの恋愛では、真面目に向き合おうとして最終的にPaulineだけではなく、子供たちも引き取ることになり、そのために選挙でも敗北してしまい、教師という職も失ってしまう事になるのだ。しかし、Levinは逃げ出さなかった。それが読み始めた時のLevinと違った点である。自分を捨ててまでも曲げない決心をつけたのだ。彼は強くなったのだ。 今までは、Levinの内面的な部分に触れてきたが、次に外見に触れていきたい。Levinの特徴として真っ先に挙げられるのが髭である。これはLevinとDuffyを結び付ける特徴であり、LevinとPaulineを結び付ける特徴でもある。彼が、髭を生やしている事で、カスカディア大学の地に踏み入れることができたのだ。Paulineが山ほどある履歴書の中(不採用側)からその容姿に惹かれて引っ張り出したのだ。誇張して言えば、運命を左右したのが髭だとも言えるだろう。そして、髭=Levinとも言える。というのも、心情と髭が密接に結びついていると考えたからである。Levinは犯罪者で盗み癖のある父親とそれに耐えられず自殺した母親を持つという暗い過去があり、過去を隠し新しい人生新たな土地で始めるために髭を生やすのだが、新しい土地でも昔と変わらずあまりぱっとしない日々を送る。そして、ある時突然、そり落とすのだ。髭を生やしていた頃のLevinは、気が弱く大学内でもなるべく波風立たせない事を心がけていた。生徒の父親に小説の題材について相応しくないと苦情を受けた時には、Levinは口論したがやや弱めな主張で、結局Gilleyに言いくるめられてしまうのだ。“What would you have done if you were in my shoes ? ” Gilley asked. Levin limp, said he wasn’t sure. (p. 277)また、Paulineとの関係を隠し、罪悪感にさいなまれていた。 だが、髭をそった後のLevinについて言えば、まず今まで学科長選挙に推薦していたFabricant教授のサポートをするのをやめ、自らが立候補する事を決めた。彼の唯一の理解者であったバケットの死が彼を大きく動かし、Levinに強さを与えたのだと思う。そして、本格的にGilleyとの正面対決を行い始めるのである。後半のLevinは口調も強くなりどんどん主張している。ここでもLevinの信念の強さを感じる。髭を剃った事で、過去を隠さず過去を引き連れた上で新たな道へと進んでいくNew Levinになったのだと思う。 今までLevinの性格や特徴について述べてきたが、彼には一言で表せない性格や特徴があるのだが、Levinという一人の人間を通して、私達は共感したりもどかしく思ったりする。だが、これは、他人事ではなく自分達にも当てはめられると思う。これから、おそらく多くの壁や荒波にもまれると思うが、生きていく事は簡単な事ではない。様々な人に出会い、様々な経験をすることによって、ひとは成長するのだと思う。そして、一見無能だと思っていても、他人に影響を与えたり与えられたりする。マラマッドは、読者にLevinの誠実さやまっすぐに生きる事の難しさと同時にその大切さを伝えたかったのではないかと思う。最終的にLevinとPaulineは子供達と新たな命を連れて新たな旅へ出発する所で終わっている。Levinは他の選択肢も出来たと思う。Paulineと別れ、大学で英語を教え続けること。だが、彼はPaulineとの道を選んだ。おそらく覚悟を決めたのだと思う。どんな苦労がこの先待ちうけようとも、過去を引き連れ、生きていこうという強さが伝わってきた。Levinは自分とPaulineとの子供を授かり、2人の養子の父親にもなり、新たなスタートをきる事になる。辛い過去を持ち、上手くいかない事ばかりでも、子供を授かるという事はこの上ない喜びであろう。出会うべきして出会った二人の先に希望の光が少し見えた気がした。 |
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