言語文化概論
(11)ウソとコトバの魔術 生きたコトバづかい
伝え合い
・人間同士が出合ったら、伝え合いをしないわけにはいかない
!
・伝え合わなきゃ、わかり合えない!
・人間はウソをつくことのできる動物である!
コトバ使いのキマリ
文法規則は守らなければいけない
コトバづかいのキマリは脈絡によって選ぶ
下川浩『現代日本語構文法 大久保文法の継承と発展』(三省堂 ・絶版)
下川浩『生きたコトバづかい』(国際語学社)
下川浩『どうしてそんなにダマされる?』(国際語学社)
『大久保忠利著作選集』全六巻(三省堂)
日本コトバの会編『コトバ学習事典』(一光社)
生きたコトバづかい
正しく:本当のことを
わかりやすく
切れ味よく:本質をズバリと表現する、ピッタリの語句を選び、シッカリした組み立ての文、スッキリした組み立ての文章に
ふさわしく:相手との関係・場面に応じ
人間はウソをつくことのできる
動物である!
ウソの根拠
・カワリ(
シルシ・象徴・記号・言語)はホンモノ (実物)ではない
・カワリの二面性
ホンモノを表すがホンモノにはなれない
表すものは指定されているが、融通がきく
意味とは?
語の意味:語が表すもの
語音≡意味
語彙単位≡意味表示
意味を表すために使われる記号の、規則にしたがった組合せ:自然言語の辞書では、語が一方では音を、他方では意味を表す
意味の三角形
オグデン/リチャーズ『意味の意味』
語音と意味と対象の関係
Ch・モリスの記号論
統語論:記号と記号の関係
意味論:記号と意味の関係
語用論:記号と人間の関係
G・クラウスの記号論モデル
表示論(記号と対象の関係を扱う)を加える
文の意味
文のクミタテのキマリにしたがって組み合わせた、一つながりの語の意味を、キマリにしたがって解釈したもの
意味とハタラキ
・同じ文が脈絡によって異なるハタラキをする
・いろいろの文が脈絡によって同じハタラキをする
⇒文の意味とコトバのハタラキは違う
ホノメカシ
あるコトバで、脈絡から推論される、別のこと(デキゴト・考え・思い)を表すこと
「響子さんの作ったみそ汁が飲みたい」
−「ちょうど惣一郎のために残しておいたものがあるわ」(『めぞん一刻』)
含み
語句の表すものによってよびおこされる情緒的反応
差別:人種、民族、国籍、性、宗教、年齢、思想信条、身分、職業、学歴、心身障害、居住地などの特徴をコトバに含ませて、そういう特徴をもった人(たち)を有利または不利(たいていは不利)にあつかったり、あつかわせたりすること
差別表現:コトバそのものより、含みをもたせる意識が問題
タトエ(比喩)
似たところを利用して、あるコトバを別のものを表すものとして使う−創造的
抽象的なものが具体的なイメージでとらえられる⇒コトバの切れ味
慣用句:比喩が何度も使われれば、創造性を失う
意味の変化
意味の拡大
語句の表すものは指定されているが、融通がきく
意味の変化
表すものが拡大すれば、意味が変化する
あいまいさ:一つの語句が何通りかに解釈される
コトバのハタラキ
言行為:発語行為・表意行為・媒介行為
J.L.オースチン『言語と行為』(大修館)
遂行表現:どのような表意行為を行っているかを示す表現(約束・質問・命名・通知など)
「間接的言行為」:「ほかの言行為のハタラキをする言行為」(J.R.サール『言語行為』)←アヤマリ
一つの言行為には、一つの表意行為が対応する
「媒介行為」概念は不要−コトバのハタラキ
ウソ とは?
事実(知っていること)または本心(思っていること)と異なることを言うこと
⇒知っていることを知らないと言ったり、思っていることを思っていないと言ったりするのもウソ
=言わないウソ
コトバの魔術:ウソをごまかすコトバの工夫
約束は守るもの
コトバの魔術
ウッカリ魔術:自分で気づかずに言う
−>マチガイ
チャッカリ魔術:相手に気づかれないように言う
−>真の「コトバの魔術」
(大久保忠利『コトバの魔術と切れ味』一光社)
感化的魔術と論理的魔術
感化的魔術:語句の含みを利用する
美しい/恐ろしいコトバ、あるいはもっともらしことわざを使う
論理的魔術:論理的に誤ったこと、関係のないことを、気づかないように言う
範囲の拡大、次元ズラシ、アイマイなコトバ
スカートのすそ (タトエの例)
夕食会 (ウソの例)
安倍首相の歴史認識
言わないウソもウソのうち
安倍晋三首相の言わないウソ
(1)自民党総裁選以前は、首相は靖国神社公式参拝をするべきだと言っておきながら、総裁選直前から、それについては「言えない」と回答。
(2)以前は「自虐史観」と言って、侵略戦争と「慰安婦問題」についての「村山談話」と「河野談話」を批判していたが、政府としてはこれらの談話の精神を継承すると答弁。
下川浩『どうしてそんなにダマされる?』(国際語学社)
安倍首相の美しいコトバの魔術
改定教育基本法と『美しい国へ』(文春新書)
「国」というコトバのアイマイさを利用
(教育の目標)
第2条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。(中略)
D 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
(教育行政)
第16条 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
おわり
学んだことをレポートに!また来週!