言語文化概論
(4)世界の言語
言語の種類
言語(体系):音韻体系 (・文字体系 )・語彙体系・文法体系から
なる
言語の区別:音韻・文字・ 語彙・文法の違いによ る
  4000(高崎通浩『改訂版
   世界の民族地図』作品社97年)
  6000(コムリー他編『世界言語
   文化図鑑』東洋書林99年)
言語と方言
  世界に言語がいくつあるかは、言語と方言の区別をどこで
するかによってかわってくる。たとえば、中国語を一つの言
語とする見方もあれば、たがいに通じない方言もあることか
ら、北京語と広東語などといくつかの言語に区別する立場も
ある。

言語変種
ある言語を話す人々のうち、特定の一部の集団によって使われ
ている変種のこと。
言語学では伝統的には、方言という用語を地理的な言語変種を
さすのに用いてきたが、現在では、社会的に区分される集団
に特徴的な言語変種についても用いられる。
2つの言語変種が、ある言語の方言なのか、それとも別々の言
語といえるほどに違っているのかを決定するのは、むずかし
い場合が多い。
異なる言語か方言か?
  言語学者は、異なった言語かそれとも方言なのかの決定を
する主要な基準として、相互に理解可能かどうかということ
をあげる。もし2つの言語変種がたがいに通じないならば、
それらは2つの言語であり、たがいに通じて、相違点に規則
性があるならば、同じ言語の方言だと見なされる。
  しかし、このような定義には問題がある。なぜなら、どの
程度まで相互の理解が可能ならば2つの言語変種を方言と見
なしてよいかをきめる基準をもうけるのは、実際にはむずか
しいからである。
相互理解
  相互理解には心理的な要因が大きく関係してくる。もしあ
る言語変種の話し手が、別の言語変種の話し手の言うことを
理解したいと思っているならば、理解したくないと思ってい
る場合にくらべて理解の程度はあがるだろう。また、地理的
に近い関係にある言語変種はたがいに理解できるが、離れれ
ば離れるほど理解がむずかしくなるという事実もある。

社会的・政治的な要因
  さらに、方言と言語を区別するときには、社会的・政治的
な要因が必ずかかわってくる。たとえば、中国にはたがいに
通じない言語変種がたくさんあるにもかかわらず、それらは
中国語という一つの言語の方言だとされるのが普通である。
  方言が生じるのは、ある共通の言語を話している複数の集
団の間の交流が、たとえば国境などで制限された場合である。
そのような状況では、ある集団の中で起こった変化は、ほか
の集団へは広がっていかない。
方言から異なった諸言語へ
  それぞれの集団の言語がしだいに違ったものになってい
き、交流が制限される期間が長く続くと、集団と集団の間で
の言語理解ができなくなる。特に、ある言語集団が社会的に
も政治的にもほかの集団から孤立するような場合、異なった
諸言語が生じる。
  たとえば、ローマ帝国の各地で口語のラテン語に異なった
変化がおこり、その結果、現在のようなロマンス諸語が生ま
れた。ロマンス諸語とは、フランス語、スペイン語、ポルト
ガル語、イタリア語、ルーマニア語などの諸言語のことをい
う。
標準語
  日常的には、方言という用語は、ある言語の標準語とは異
なった言語変種のことを指すことがある。しかし、言語学で
は、標準語はある言語の一つの方言にすぎないと見なされる。
  たとえば、パリで話されているフランス語の方言は、フラ
ンスの標準語になっているが、それはその方言自体に何か特
別の特徴があったからではなく、パリがフランスの政治や文
化の中心だったからにすぎない。
言語の社会的変異
社会的な要因によって生じた方言を社会方言といい、階層や宗
教のような社会内部での区分が原因で生まれることが多い。
たとえばニューヨークでは、音節の最後のrの音を発音するか
どうかは階層によって差があり、上の階層ほどrの音を発音
する傾向にある。同じようにイギリスでも、ある社会的集団
では、ほかの集団と自分たちを区別するために、hの音を独
特な方法で発音することがおこなわれている。
俗語と隠語
  特殊な語彙(ごい)を用いる社会的な言語変種
として、俗語(スラング)、隠語(ジャーゴン)など
がある。「俗語」は、ある言語の標準的な語彙
には属さない、くだけた語彙のことをさす。「隠
語」は、法律家など特別の職業の人々が用いる
専門的な用語や、犯罪組織など秘密の集団によ
ってもちいられる言葉で、部外者にはわからな
い語彙のことである。
俗語
 「新宿」が「じゅく」となるように省略されたり、「VIP」(very
important person「非常に重要な人物」の頭文字から)のように頭
字語がつかわれることもある。「オトメチック」の「チック」のように
外国語の接辞が付加されることもあれば、外国語がとりいれら
れたり、「ダブる」「スタンバッている」のように日本語の動詞の活
用をするようになることもある。
隠語
 「ほし」(犯人)、「ほとけ」(死亡した人間)などの警察関係の用語、
「うっちゃる」「軍配をあげる」「番付」「金星」などの相撲用語など
があげられる。「ばらす」(殺す)、「はめる」(計略にかける)、「さ
つ」(警察)などのように、特殊な集団でしかもちいられない隠語
の中にも、俗語としてよくつかわれるようになったものがある 。
「使用域」(ふさわしいコトバづかい)
  言語の社会的な変種にくわえて、社会的な状
況によって左右される変種のことを「使用域」
という。あらたまった場面では「私は山田と申
します」というのに対し、くだけた場面では「お
れは山田だ」というような違いが、使用域によ
る違いである。
世界の諸言語
  たがいに通じるかどうかを基本的な基準とするな
らば、現在世界では約6000の言語が話されていること
になる。しかし、話し手の数の少ない数多くの言語が、
今では話し手の数の多い言語によってとってかわら
れる危険にさらされている。
  学者の中には、1990年代に話されている言語の9割
が、21世紀の終わりには消滅しているか消滅しかかっ
ているだろうと考えている者もいる。
言語の分類・類型による分類
  言語学では、言語の分類は類型と系統という2つの
基準で行われる。
  類型的な分類とは、言語をある特徴ごとの類似点と
相違点にしたがって類別するもので、同じ特徴をもつ
言語は、その特徴については同じ類型に属することに
なる。
  たとえば、英語と中国語は異なっている点も多いが、
語順については、主語−動詞−目的語という同じ語順
の類型に属している。
系統による分類
  系統的な分類とは、言語を、その歴史的な発達を基準とし
て語族に分類するものである。語族とは、共通の祖先に由来
する諸言語のことをいう。
  たとえば、英語やドイツ語、フランス語などの言語は、す
べてインド・ヨーロッパ語族とよばれる語族に属しており、
これらの諸言語の祖先はインド・ヨーロッパ祖語といわれる。
  語族は、さらにいくつかの諸言語に下位区分される。語族
の下位区分を語派とよぶ。


インド・ヨーロッパ語族
  ヨーロッパから西および南アジアの地域にかけてひろく
話されている諸言語。
  東方系:インド語派・イラン語派
  西方系:ギリシャ語派・イタリック語派・
   ケルト語派・ゲルマン語派・
   スラブ語派・バルト語派
ウラル語族
  ヨーロッパで話されているもうひとつの主要語族として、
ウラル語族がある。この語族は、ヨーロッパ北東部からアジ
ア北西部にかけての地域で話されているが、ハンガリー語だ
けはヨーロッパの中央部で話されている。
  ウラル語族の諸言語の大部分は、フィン・ウゴル語派に属
している。この語派の言語としては、ハンガリー語、フィン
ランド語、エストニア語、サーミ語(→ サーミ)などがある。
ドラビダ語族と
アウストロアジア語族
  南アジアには、インド・ヨーロッパ語族に属するインド語
派の諸言語以外に、2つの主要語族がある。ドラビダ語族は
南インドの主要言語で、タミル語やテルグ語がふくまれる。
アウストロアジア語族は、南インドおよび東南アジアのひろ
い地域で話されており、ムンダ諸語、クメール語(カンボジ
ア語)、ベトナム語などがふくまれる。
アルタイ語族
  アジア中央部、北部、東部の多くの言語は、という一つの語族に属
すると考える言語学者が多いが、チュルク諸語、ツングース諸語、モ
ンゴル諸語はこれとは別の独立した語族だと考える学者もいる。はこ
れとは別の独立した語族だと考える学者もいる。
  南アジアには、ほかにブルシャスキー語という孤立言語があり、パ
キスタン北部の辺境で話されている。
  アジア北部には、チュクチ・カムチャツカ諸語をはじめとする話し
手の数の少ない諸言語があり、旧シベリア諸語とよばれるが、この名
称は地理的なもので、系統的なものではない。

シナ・チベット語族
  中国からヒマラヤ山脈、東南アジアの一部にかけてのひろ
い地域で話されている、この語族の主要言語は、中国語、チ
ベット語、ビルマ語である。
タイ語族
  東南アジアには、タイ語族という重要な語族がある。この
語族はタイ、ラオスおよび中国で話されており、タイ語がこ
こに属する。ミャオ・ヤオ諸語は、中国南部および東南アジ
ア北部の孤立した地域で話されている。
アウストロネシア語族
  アウストロネシア語族の諸言語は、マレー半島および西はマダガス
カルから東はイースター島にまでまたがるインド洋・太平洋の大部分
の島々で話されている。
  オセアニア語派:ポリネシア諸語・ミクロネシア諸語
  インドネシア語派:マレー(インドネシア)語・フィリピン諸語、
ジャワ語、ハワイ語、マオリ語など
  高山諸語(台湾先住民「高砂族」

アフロ・アジア語族
  セム語族:アラビア語、ヘブライ語、アムハラ語をはじめ
とるすエチオピアやエリトリアの諸言語である。
  チャド諸語:主としてナイジェリア北部とその周辺で話さ
れており、ハウサ語がふくまれる。ハウサ語は、スワヒリ語
とならんで、サハラ以南のアフリカでもっともひろく使用さ
れている言語である。
  アフロ・アジア語族には、このほか、ベルベル諸語、クシ
諸語、エジプト語などがふくまれる。
アメリカ大陸の諸言語
  エスキモー・アレウト語族は、シベリア東端からアリューシャン列
島、アラスカ州、カナダ北部をへてグリーンランドにわたる地域で話
されている。
  ナ・デネ語族は、北アメリカ大陸北西部のひろい地域で話されてお
り、その主要語派はアサバスカ諸語である。
  アサバスカ諸語は、アメリカ合衆国の南西部でも話されており、ナ
バホ語がふくまれる。
  アルゴンキン語族とイロコイ語族は北アメリカ北東部の主要な現
地語であり、スー語族は北アメリカ中央部の主要語族である。
アメリカ先住民の言語
  ユト・アステカ語族の諸言語は、アメリカ合衆国の南西部から中央
アメリカにかけての地域で話されており、アステカ文明の人々および
その子孫の言語であるナワトル語がある。
  マヤ諸語は、主としてメキシコ南部とグアテマラで話されている。
南アメリカ大陸の主要語族は、北部ではカリブ語族、アラワク語族、
東部ではマクロジェー語族、トゥピ語族である。パラグアイの国語で
あるグアラニー語は、トゥピ語族の主要言語である。
  アンデス山脈の地域の主要言語はケチュア語族とアイマラ語族で
あるが、これらの言語の系統はよくわかっていない。
ピジンとクレオール
  ピジンとは、別の言語を話す人々が、たがいに意思を伝達
するための手段をつくりだす必要がでてきたとき、相手の言
語をきちんと学ぶ時間がじゅうぶんにないような場合に発
達する補助的な言語のことをいう。母語として話す人はいな
い。      いっぽう、クレオールは、ピジンがある集
団の母語にまで発展したものである。したがってピジンと同
じように、クレオールは、ある一つの言語から大部分の語彙
をかりているし、文法は、その地域でもともと話されていた
言語の文法をもとにしている場合が多い。
主要12言語とその話し手の数
 (1)中国語、8億3600万人。
 (2)ヒンディー語(→ インドの言語)、3億3300万人。
 (3)スペイン語、3億3200万人。
 (4)英語、3億2200万人。
 (5)ベンガル語(→ インドの言語)、1億8900万人。
 (6)アラビア語、1億8600万人。
 (7)ロシア語、1億7000万人。
 (8)ポルトガル語、1億7000万人。
 (9)日本語、1億2500万人。
(10)ドイツ語、9800万人。
(11)フランス語、7200万人。
(12)マレー語(→ オーストロネシア語族)、5000万人。
第2言語として話している人の数もふくめるならば、英語の話し手は4億1800万人で、第2
位となる。
日本の方言
 方言による「ももたろう」
おわり
学んだことをレポートに!また来週!!!