言語文化概論
(6)民族の形成
人種と民族
人種は、皮膚色とか毛髪型、鼻の形など共通の遺伝的な身体の形質にもとづき、ヒトの集団を分類したものである。人種は、いわば、ヒトの集団の生物学的区分を示す概念である。
一方、民族は、文化(言語、風俗、宗教など)による区分であり、人種と民族は、そもそもカテゴリーの異なる概念である。
人種混淆(こんこう)
古くは、民族が同じであれば、人種も同じであり、人種が違えば、当然民族も異なると考えられてきたが、現代世界の多くの地域では、特にラテン・アメリカやオセアニアなどにおいては、人種の枠をも越えた住民の混血化が進行し、標本のような純粋種的形質を備えた人々をさがすのは難しい。ラテン・アメリカ世界では、スペイン語やポルトガル語を話し、ラテン・アメリカ的生活様式を送る一方で、人種は肌が黄色いモンゴロイド(たとえば、日系ブラジル移民の二、三、四世)というべき人々が数多くいる。
民族と語族
従来は、言語の分布と民族の分布は重なり、基本的に言語と民族は一致すると考えられてきた。ソシュール言語論も「ある程度の民族的一体性を成り立たせるものは言語の共通性である」と述べている。それゆえ、民族名がそのまま言語名として便用されるケースが圧倒的に多かったわけであるが、現代世界においては、事情は必ずしもそうではない。
人種・文化・言語
どんな人々にも、人種・文化・言語という三つの要素はついて回るが、ある民族集団に属する人々のすべてが、つねにこれらの三つの要素をセットで備えているとは限らない。現代世界では、これら三つの要素の組み合わせは多様であり、「民族」という概念は、身体形質にもとづくグルーピングである「人種」とも、言語によるグルーピングである「語族」とも異なる概念であるということが確認できるのみである。
民族と国家
民族:言語・文化を共有する集団
国家:政治的単位
エスニシティ(民族集団)
エスニック集団
「民族国家」内での紛争の顕在化
民族の客観的条件:
文化・言語・人種・祖先などの同一性
民族の主観的条件:
客観的条件のいくつかの共有のほかに
「われわれ」意識
言語と宗教
人間集団にあって、言語を同じくすることから生まれるきずなには根強いものがある。逆に、言語の違いから生じる他者意識は強烈であり、その点においても民族を識別するうえでの最大の指標はやはり言語であると言える。
同様に、宗教の歴史を見ると、宗教の違いから生じる、異教徒への他者意識の強烈さに気づく。宗教もまた人間集団を民族識別する指標として大きな位置を占めている。
民族と宗教
中国:55の少数民族
回族は宗教の違い
旧ユーゴ:ムスリム人も同様
アイルランド:ケルト語を話す人は少数
インドとパキスタンも宗教の違い
民族大移動
ゲルマン民族の移動
<−フン族の西方進出
−>古代ローマ帝国の滅亡
ケルト民族
アイルランド人の場合、ゲール語=ケルト語はほとんど消滅させられてはいるが、ケルト文化を保持し、彼ら自身が民族的アイデンティティを主張している以上、ケルト民族とされる。
ユダヤ人
ユダヤ教により結ばれた同胞集団
カナンの地からの追放
世界各地に拡散
迫害
第二次大戦後イスラエル建国
−>パレスチナ紛争
クルド人
トルコ・イラン・イラクほかにまたがる地域に住む
独自の国家をめざす
ロム
古くはジプシーと呼ばれた。(蔑称)
14世紀ごろヨーロッパにあらわれ、特有の文化、生活様式、言語、身体的特徴を共有してきた人々。閉鎖的で結束力の強い小規模の共同体単位で移動生活をおくる。現在では東アジア、東南アジア、アフリカの南半分をのぞく、ほぼ全世界に分布すると考えられている。
ボスニア紛争
1991年に旧ユーゴスラビアではじまった民族紛争。旧ユーゴスラビアからクロアチア共和国とボスニア・ヘルツェゴビナ共和国が独立すると、所属する3つの民族グループ(セルビア人、クロアチア人、ボスニアのムスリム人)が、たがいに領土を主張してゆずらず激しい戦闘をくりかえした。
コソボ紛争
1998年2月末、コソボの独立をめざすアルバニア人武装組織のコソボ解放軍(KLA)に対して、セルビア警察部隊が大規模な掃討作戦を開始した。3月、アルバニア系住民は、ルゴバを大統領とする「コソボ共和国」の独立を宣言した。
他民族支配
歴史上、政治的な支配・被支配の構造が成立すると、被支配民族の言語が抹殺され、支配民族の言語に統合されていくことが起こった(戦前の日本の朝鮮人に対する日本語強制=皇民化政策、イングランドのスコットランドやアイルランドに対する支配の中でのゲール語の抹消政策、今日のアイルランド共和国ではゲール語を日常的に話す住民の数は、人口比2%弱というありさま)。
ある民族が支配・被支配の関係のなかで、別の言語を受け入れ、統合されていった場合、民族が消滅したといい得るのか?
アフリカの民族抗争
アフリカ大陸においては、同じ言語、同じ文化をもった集団が、植民地支配の過程で、複数の異なる民族(政治的単位)に分断され、独立もそのような人工的政治単位ごとになされ、今日に至っているケースが数多くみられる(それが今日のアフリカの民族抗争の最大の因子となっている)。
ルワンダ
アフリカ大陸中東部にある共和国。正式国名はルワンダ共和国。ウガンダ、タンザニア、ブルンジ、コンゴ民主共和国(旧ザイール)にかこまれる。1994年4月にツチ族とフツ族の民族対立などを要因とする内戦(コンゴ紛争)がはじまり、200万人にもおよぶ難民がコンゴ民主共和国やブルンジに避難した。PKO(国連平和維持活動)もおこなわれたが、96年4月に活動を終了した。
スリランカ
南アジア南部、インド半島南東沖の共和国。正式国名はスリランカ民主社会主義共和国で、イギリス連邦に加盟する。旧称セイロン。
タミール人とシンハラ人の対立・紛争
バスク
バスクとして独自に統一されたことは過去に一度もなく、したがってバスク地方とは、バスク語を話すバスク人のすむ地域をいう。しかし、今日この地域でバスク語を話す人口は、スペイン側では約25%、フランス側では約10%である。
おわり
学んだことをレポートに!また来週!