東日本大震災から1カ月、被災地域の今
2011年4月14日から17日の日程で、犬井正教授と環境共生研究所の大竹伸郎特任助手が被災地域の現地調査をおこなった。震災から約1カ月、被害をうけた首都圏では、日常の生活を取り戻し、マスコミの関心も原発の安全性や都市域住民への放射線被害の有無が中心となりつつある。被災地域の多くでは瓦礫の撤去作業が開始されているが、福島第一原発の20km圏内の避難対象地域では、復旧作業も全く進んでいない。
福島第一・第二原子力発電所を運営している東京電力で作られる電力は、福島県内には供給されておらず、全て関東・山梨・静岡の首都圏で利用されている。報道によれば首都圏に暮らす人々の中には、福島県からの避難者に対し根拠のない誹謗中傷を浴びせる者が出現しているようだが、自分たちの生活を支えて来た地域の人々に対し、その言動は自ら恥じるべきものであろう。
いつでも欲しいものが手に入り、暑さも寒さも空調で解決してしまう都市部の快適な生活が地方に暮らす多くの人々との繋がりによって支えられていることを我々はもう一度再認識する必要があるのではないだろうか。痛みや困難を共有してこそ、喜びや快適な生活を再び取り戻すことができるのではないだろうか。 電力供給だけではなく、農畜産物、水産資源、工業製品、観光資源等の生産と消費の関係を理解することが、持続可能な社会を実現するための第一歩なのではないだろうか。今回の報告により、被災地域の現状が少しでも多くの方々に理解され、被災地域の一日も早い復興が実現することを切に祈る。
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4月15日 午前8:40 福島県(広野町〜相馬市 国道6号線)
20km圏内の検問所(広野町) ガイガーカウンター 0.44μSv/h
福島第二原子力発電所(富岡町・双葉町) 退避地域圏内のコンビニ
富岡町仏浜 退避地域のため、瓦礫の撤去も遺体捜索も行われていない。
取り残された犬、水をあげることしかできなかった 第一原子力発電所から約1km 42.88μSv/h
地割れで動けなくなった車 今や虚しい原子力運送の看板
地割れする道路 脱輪し乗り捨てられた車両
防御服を着て放射線量を測定する職員 第一原発付近の水田@
第一原発付近の水田A 折れ曲がるガードレール
海面から15mほどの高さにある家にも被害が 崩れ落ちた常磐線の高架線路
土砂に埋まる水田(南相馬市小高区) 付近の豚舎から逃げ出した豚の群れ
水田にたまった漂流物 水没する水田
道路も冠水、未だ水が引かない 原発関連会社で働く、地元の方
津波にのまれた町並み 14日から開始された遺体捜索の車列
右の写真から約4km北のコンビニ洪水の被害はなかった 小高区の給油所跡
水田に座礁した船(左右とも南相馬市鹿島区)
海岸線から4kmほど内陸の水田も洪水にのまれた(相馬市松川浦付近)
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4月15日 午後4:15 宮城県(名取市 仙台東部有料自動車道路名取インターチェンジ付近)
道路際に打ち捨てられた漁船 散在する瓦礫
美しき日本の歌 「道」
取り置かれた思い出の写真
復興活動に従事する自衛隊の車両
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4月16日午後1:00 岩手県(宮古市,田老町)
堤防の内側まで流された漁船 被災した宮古市
浄土ヶ浜にも多くの遺体が流れ着いた 内陸部まで押し上げられた大型漁船
壁面には撤去してくださいの文字が 倒壊した漁業施設
取り置かれた記念のメダル
万里の長城と言われた防潮堤、自然の威力を思い知らされる(宮古市田老町)
堆積した瓦礫の量の多さに、大型重機もかすむ
津波で下れた堤防、津波の威力を思い知らされる
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4月16日午後3:53 岩手県(釜石市市街地)
釜石市第三庁舎
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4月16日5:30 岩手県(陸前高田町)
押し流された高架道路
自動車の墓場
五階建てアパートの4階まで達した津波 水没した野球場
折れ曲がる鋼鉄製の欄干 全壊した陸前高田の町
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4月17日午前10:10 宮城県(女川町)
遺体が見つかった場所
遺体捜索を行なう自衛隊員
女川町の漁業施設
ビルの3階の屋上に乗り上げた車 校舎の屋根に乗り上げた家屋
東北電力女川町の原子力発電所こちらは安全に停止している
3泊4日という短い期間で全ての被災地域を見ることはできなかったが、その惨状や匂いは、離れた都会でみるテレビの映像からは伝わらないものだと強く感じた。また、その一方で福島県から岩手県の被災地域には、それぞれの地域の自然地形によって、受けている被害が一様ではないことが明らかとなった。
こうしている今も被災地では、自衛隊や警察官、消防士などの公務員や電力会社関係の人々が汗を流し、そのかたわらで歯を食い縛り、必死に復興へ向けて立ち上がろうとしている地域の人々がいる。下らない政権闘争に終始する前に全ての国会議員が個別に全ての被災地に赴き、それぞれの地域の被災状況を分析し、地域に対しどのような復興支援が必要なのか行動し、考えるべきなのではないだろうか。財源がないのなら、公務員給与を削ってでも、被災地の復興にあてるという断固たる決意と覚悟が今求められている。 |