氏名 黒木 亮
職名 准教授
専門分野 経済学史
学位 博士
所属学会 経済学史学会
E-mail kurogi-703アットdokkyo.ac.jp
(迷惑メール対策のため「@」を「アット」と表記しています)

研究紹介

現代の資本主義経済や自由・民主主義に影響を及ぼしている過去の経済学や経済思想に着目し、その今日的な意義と限界を探るべく、市場主義の一角とされるシカゴ学派の祖フランク・ナイト(1885-1972)の理論や方法論、新旧制度学派などに関連する研究を行っています。

テーマ1:フランク・ナイトに関する研究

ナイトの思索の特徴やその今日的含意などを明らかにすべく、代表作の『競争の倫理』や講義録『フランク・ナイト社会哲学を語る』の訳出(ただし『競争の倫理』は高哲男九州大学名誉教授との共訳)や、主著『リスク・不確実性および利潤』の翻訳に取り組み、その成果を「ナイトのリスク・不確実性およびインフォデミックな不確定性――「第三の不確実性」抽出試論――」(『獨協経済』第110号)といった論文の形で発表したりしています。

キーワード:不完全競争、不確実性、企業家、競争の倫理

テーマ2

重農学派のフランソワ・ケネー(1694-1774)や新制度学派のロナルド・コース(1910-2013)など、経済学の黎明期から経済社会に重要な影響を及ぼしてきた思想家の思索の糸をたどりつつ、今日の社会問題を解決するためのヒントを探り、「経済問題を解く鍵は競争にあり!?」(『獨協大学 学報』No.35)といったエッセイの形で発表したりしています。

キーワード:古典派、新古典派、制度学派、ケインジアン、経済学批判

担当授業科目名

経済学史,経済学(ミクロ・マクロ)、マクロ経済学、クラスセミナー

ゼミ紹介

演習題目:「経済学の古典を読む」あるいは「ビジネスや経済学の歴史を英語で学ぶ」

ゼミ概要

基本的に隔年で英文のテキストと古典の訳書や解説書を輪読しています。直近ではMansel BlackfordのTbe Rise of Modern Businessやアダム・スミスの『国富論』をテキストとし、過去にはMilton & Rose FriedmanのFree to Chooseやトマ・ピケティの『21世紀の資本』などを輪読しました。

ゼミの進め方

英文テキストは1文ずつ全員で翻訳をしていく形で、訳書や解説書の輪読の場合は1章ずつ報告担当者を決めて、内容の整理・確認や疑問点についての議論を行っていきます(したがって高校での英語の授業や国語の時間を想起してもらい、それよりも少人数でレベル・アップした内容のものをイメージしてもらえれば、「当たらずしも遠からず」ではないかと思います)。

なお卒業研究については、各自が自由に設定したテーマについて、それぞれの進捗状況に合わせて個別に添削指導を行い、論文の書き方の基本を身に付けてもらいます。したがってゼミでは、4年次の最初の研究計画の発表と秋の中間報告、最終報告会以外は、基本的に上述の通りの輪読を進めていきます。

卒業論文テーマの例

2021年度

  • 「高度成長地域の戦略的創出を目的とした広域新都心開発戦略」
  • 「現代におけるヴェブレン思想の意義~環境問題とヴェブレン思想~」

2020年度

  • 「ストリートファッションのカルチャーがもたらす経済効果:スケートボードから派生したsupremeが与えた影響」
  • 「韓国コスメの台頭理由と今後の動向:日本の最大手ブランド資生堂と比較して」

2019年度

  • 「ビデオゲームの普及と市場の拡大」
  • 「東京オリンピックは日本経済にどのような波及効果をもたらすか」

2018年度

  • 「米国の歴史から考える持続可能な社会に必要なもの」
  • 「『道徳感情論』に学ぶ無職者をさいなむ精神的苦痛への眼差し:処方箋としてのBI[ベーシックインカム]や居場所づくりの可能性」

2017年度

  • 「戦国大名と共に勃興した城の持つ意味」
  • 「人が人らしくいきるためには~J.Sミルの思想から学ぶ~」

2016年度

  • 「カジノ解禁法案を通して見た日本版カジノの可能性と課題」
  • 「格差の肯定――『21世紀の資本』への批判」

授業紹介

授業名:経済学史

授業概要

この講義では、経済学の形成過程を追体験し、経済理論への理解を斜めから深めてもらうべく、過去の“経済学者”――といっても前半は哲学者や宮廷医、牧師や証券ブローカー、在野の法律家や革命家などなど――が実際に取り組んだ論題や社会的背景、時代的文脈について解説していきます。
「豊かな歴史観や自然観、および、倫理観を中核とする教養に基礎付けられた経済学の専門知識を習得した、国際的視野を有する優れた社会人の育成を目的とする」カリキュラムの一環として、春季の「経済学史a」では「近代自由主義社会の確立を基礎づけた17世紀のジョン・ロックによる労働所有権論から19世紀末のマルクス経済学まで」を通覧していきます。そのうえで秋季の「経済学史b」では、「19世紀末のドイツ歴史学派の社会政策思想から現代の社会やその将来を基礎づけている新旧ケインジアンの思考法まで」を紹介し、今日の経済学やわれわれの経済思想の成り立ちに歴史的にアプローチしていくための契機や視座を提供します。

授業の進め方

基本的には板書を用い、毎回授業時に配布予定のプリントや教科書の内容に沿って、1回につき1人の思想や時代背景を解説する形で講義を進めていきます。ただしシラバスでも示す通り、アダム・スミスやマーシャル、ヴェブレンやケインズなど、重要な人物や十分な補足を必要とする思索については、2回にわたって紹介します。

推薦教科書,図書

高哲男 編著『自由と秩序の経済思想史』名古屋大学出版会
根井雅弘『経済学の歴史』講談社
大田一廣・鈴木信雄・高哲男・八木紀一郎 編著『新版 経済思想史』名古屋大学出版会
根井雅弘『ものがたりで学ぶ経済学入門』中央経済社

関連科目

経済学、ミクロ経済学、マクロ経済学、経済史