岡部ゼミ
<2011年、三井物産プレゼン>

去年のソニーに続き今年は、岡部ゼミ3年生19名が大手町の三井物産本社で、同社の幹部社員3名(鉄鋼製品業務部から2名、経営企画部から1名)を前に「ユニークで新しいビジネスの提案」というテーマで12月22日にプレゼンを行った。大手商社は収益の多くの部分を資源ビジネスに依存している。収益源の多様化になるような新しい非資源ビジネスを学生の視点から何か提案できないかと考えたのが出発点である。以下は、それぞれのグループの発表内容とそれに対する三井物産の方からのコメントである。

私たちは就職活動を行っていて、“合同説明会で人が多すぎてきちんと話が聞けない”、“説明会に行きたくてもすぐに満席になる”などといった不満の声が多いことに気づいた。このことに鑑みて、『少人数制』『中小企業』『業界別』に着目し、『中小企業向け少人数制合同面談会』というビジネスを提案した。目標は中小企業の求人倍率を1.00倍にして、中小企業と就活生のミスマッチの解消である。逆指名という方式をとり、企業が学生を指名するのである。これは学生が事前に自己PRを三井物産に向けて送り、それを三井物産が参加する企業側に流すというものである。

この提案に関し三井物産の方からは、「これを三井物産がやる意味は何か。」「これで中小企業と就活生のミスマッチは本当に解消できるのか。」「中小企業はもっとたくさんの学生に話を聞いてもらえる説明会に参加するのではないか。」「競合他社との差別化をもっと明確にする必要ある。」「中小企業の選定基準は何か。」などの質問や指摘を頂いた。(文責:青木杏里)

私達が三井物産に新しいビジネスとして提案したのは農機具の輸出である。人口増加、今後の発展性、日本と同様に米が主食、日本の農機具メーカーの進出がまだあまり進んでいない等を考慮してインドを進出地に選んだ。

進出するメーカーは業界第3位の老舗イセキを選んだ。イセキは上位2社のクボタ、ヤンマーとは異なり海外売り上げが2割と進出が遅れている。後追いのイセキが現地企業やインドを虎視眈々と狙う海外勢と渡り合うにはどうすればよいのか。見えてきたのは農機業界特有の問題である。車検などがなく中古の市場が発展しておらず中古市場での相場もないのでリースやレンタルも盛んではない。建設機器業界ではコマツが中古やリースに力を入れリースから中古、中古から新品という良い流れを作りだしていることが分かり、これこそがイセキのインドでの活路だと考えた。

これに対して三井物産の方から、「インドでの拠点と考えているオリッサ州は、現地有力メーカーのタタの本拠地がすぐ近にあり日本企業は厳しい競争を強いられる。」「現地の農業はまだ機械化以前の手作業段階にあり、コスト回収の時間が掛かりすぎる。」とのコメントを頂いた。(文責:原佑)

私たちは「絆」という言葉に焦点を当てた。3月11日の東日本大震災で、人との絆について多く考えさせられた。また、今年の漢字として「絆」が選ばれたように世間でも多くの人が互いの絆を深めていこうと感じている。その中で特に家族の絆というものは、普段一番密に接している故にその大切さを意識することが難しいのではないだろうか。常日頃から少しでも家族の絆を確認し、感謝することができる機会を提供することはできないかと考えた。

私たちは絆を深める新たな役割を持つタイムカプセル事業を提案した。絆を大切にする、ということをブームで終わらせず、父の日や母の日などと同じように日常的なイベントにすることが目標である。

三井物産の方から課題として指摘されたのは、「結局はただのブームなのでだんだんと大衆の意識は薄くなっていくため、ブームで終わらせないためには起爆剤となるようなイベントか何かを行うべきだ。」「日本の現状として孤独死が多くなっている中、何年も前に預けられた荷物を確実にお返しすることができるのか。」という点である。(文責:川野絵美子)

以上から分かるように三井物産のコメンティターの方々は、学生だからということは全く考慮せず、社内プロジェクトと同じ目線で講評して頂いた。このことにはとても感謝している。プレゼンには慣れているゼミ生が厳しい質問に緊張で手が小刻みに震えていたことが分った。現実のビジネスの厳しさを感じることができたいい機会だと思う。また、プレゼン後、ゲストルームで懇親会を開いて頂いた。実務の第一線で活躍するビジネパーソンと本音でお話しする機会を設けて頂いた。ゼミ生達は何か人生での示唆を得たものと思う。

最後に、多忙にもかかわらず学生達の拙いプレゼンのために時間を割いてご協力いただいた三井物産の新徳さん 加地さん、山中さんに謝意を表したい。特に仲介の労を取っていただいた山中さんの好意には厚くお礼を申し上げる。

次へ